「阪急電車」
「阪急電車」は有川浩の連作長編小説というか短編集である。
ほんとはこっちの小説が大好きなのだが、最近わざわざDVDを買って映画を観てしまったので、そちらの感想を主体に書いてみる。
映画も基本的には大好き、というか、ヘビーローテーションで何回見たか判らないくらいなのだが、多分これからひたすら不満点を書き綴ることになるかと。
不満点1.征志とユキが出ない
えーっ、この2人、好きだったのにー!
原作の登場人物は誰もみな好きなのだが、この話の中に出てくる3組のカップル、すなわち征志とユキ、圭一と美帆、えっちゃんとアホ彼氏の中では唯一の社会人カップルなのに。
このカップルの"初夜"の会話が好きなのに。(何かしてほしいなら隙作ってや、という一連のくだり)
最後の時江ばあちゃんのケンカを横からひっさらうユキのタンカが好きなのに。
いや、誰と言って外せるキャラがいるわけではないのだが、征志とユキは外しちゃあかんだろー。
不満点2.翔子編のキャスティング
まあ翔子の中谷美紀というのも微妙ではあるよ。原作では20代のはずなので、中谷美紀はちょっと歳が・・・という。
でも、中谷美紀はあの名ゼリフ、「あんた、結婚準備中に浮気した挙げ句、生でやったの?」があるからいいや。こういうセリフを中谷美紀が言うと、これはまたちょっとゾクゾクするほどの(以下自粛)
問題は寝取り女の方である。原作では寝取られ男の方も含め、名前は設定されていないのだが、映画では全員にご丁寧に氏名が設定されている。
なので寝取り女も小峰比奈子という名前があるらしいのだが、そんなのどうでもいい。
この寝取り女に安めぐみはどうしたってミスキャストだ。
この翔子が結婚式に呼ぶことを条件に寝取られ男と別れ、その結婚式に純白のドレスを着て「討ち入り」するのは、翔子が寝取り女より圧倒的に美人だから成立するのである。だからこれが「呪い」になるわけなのだ。安めぐみでは若くて綺麗すぎて、翔子の討ち入りがただのとち狂った嫌がらせにしか見えないではないか。
寝取られ女は蒼井優あたりにブサメイクをさせて(以下自粛)
時江との会話シーンもちょっと不満が。
最初に亜美に「お嫁さんだ」と言われて翔子が泣き出すシーンは良かったのだが、その後は翔子は泣いてはいけない。
時江との会話シーンで泣かせた方が判りやすい、と思ったのかもしれないが、中谷美紀のような達者な役者にやらせておきながら、わざわざ原作とは違う、そして原作の翔子のイメージをブレさせるような演出をしなくったって。
そもそも翔子が泣きじゃくっているのを映画ではミサとカツヤもすぐ近くで見ているわけなので、その後のミサの会話シーンに上手く繋がらない。
カツヤがDV男というだけでなく、と〜ってもアホな男に見える。誰がどう見たって「ワケアリ」に見えるじゃんよ、この翔子の様子では。
不満点3.ミサと康江編
ミサの戸田恵梨香というキャスティングは良い。少なくとも「信じられへん。おばさんってサイテー」のセリフは、そりゃもう戸田恵梨香がやれば、さぞブーたれた感じでええやろなぁ・・と思っていたとおり、良い仕事をしていた。
でも、康江との会話シーンはちょっとなぁ・・・
あのシーンは、ミサが不機嫌なままで一緒に駅を降り、介抱をして水も与え、康江が「本当はあのグループといるのは嫌だ」ということを言って初めて親しげな態度になるはずなのが、駅で降りてからいきなり親切になるんだもんな。
「それ、はよいいや」
「寝覚め悪いやんか」
これらのセリフを、ブーたれた戸田恵梨香のセリフで聞きたかった。
不満点4.えっちゃんとアホ彼氏
この作品の中で一番好きなのが彼らだからなぁ。ここの改変は許せないったら。
最初にミサがえっちゃんたちの会話を盗み聞くシーン。ここは端折られすぎだ。
この会話を聞いてミサが、「自分より良い恋してる」って思えるのか?観客に原作の会話を思い出して脳内補完しろと?
アホ彼氏のアホぶりが、「糸に月」でしか言及されていないし。そもそもナンパされたときの彼氏の「援交になってしまう?」発言とか、えっちゃんとまだ"してない"ことも、アホ彼氏が「援交になってしまう」と心配してるからだとか、もったいない。
「アホやから気づかへんねんなぁ、これが」
このセリフを有村架純の口から聞きたかった。
その後のラブホテル編は、あんな演出じゃ最悪だ。
アホ彼氏の見ザルのポーズ、「よし来い!」を見たかったのに。
不満点5.時江のケンカシーン
いや、ここはユキが出てこなかった、ということに尽きるんだけど。
監督もそれなら時江単独でスカッとするようなケンカを思いつくこともできなかったようで、遠景で誤魔化したり。
ここを上手くできないのなら、征志とユキを出しておけば良かったじゃないか。犬も使ってないし。
不満点6.その他諸々
要するにだ。康江とショウコちゃん(映画では翔子という字まで翔子と同じことが明かされるが、原作ではショウコという発音のみ)をメインキャラに据えたのが無理があったのではないか。
なのでこの原作では後半にちょっと出てくるだけの2人を前半から無意味に出さざるを得なくなり、そこに尺を取られた結果、征志とユキを削らざるを得なくなったわけで。少なくともそう見えてしまうな。
そういえばゴンちゃんが流ちょうな関西弁を話しているのはなぜだ。彼女は長崎出身のはずだ。
映画のゴンちゃんは地元の子なのか?とも思ったが、後半のワラビのシーンはあるし。
些細なことだけど、ちょっと混乱した。圭一とゴンちゃん偏は、一番安心して見ていられたけど。
キャストも、全員にご丁寧に役名を設定する必要があったのか?
エンドロールに、
寝取り女・・・・・・・・・・・・・・安めぐみ
寝取られ男・・・・・・・・・・・・鈴木亮平
えっちゃんのアホ彼氏・・・玉山鉄二
これで良いじゃんよ。