2006年春〜夏 THE NORTH FACE

 ザ・ノースフェイスについては分析ではなくツッコミになってしまうので、もう書くのはやめようと思っていたのだが、読んでいて気になるところが出てきたのでやっぱりツッコミばかりになってしまうが書くことにした。

 まず「アウターウエア」のカテゴリーなのだが、ハードシェルとソフトシェルが混在して掲載されている。
 それも順になっているのならまだしも、ハードシェルの次にソフトシェルが掲載され、またソフトシェルという具合に、本当に混在しているので判りにくいことおびただしい。
 特にノースフェイスは「防水性」という言葉を耐水性とごっちゃにして使っているので、説明文を読んでも「これはハードシェルかソフトシェルか」判別ができないモデルも存在したりする。少なくとも初心者には判別不可能だろう。
 個々の商品についてはともかく、この構成ではこれから始めようとする初心者にとって「どのウエアを揃えていこうか」という参考にはまったくなるまい。

 そのあたりはモンベルはさすがである。レイヤリングの例を示しているし、素材の説明も丁寧なので初心者でも熟読すればだいたい間違いがない選び方ができるようになっている。

 レイヤリングの例といえば、ノースフェイスのカタログも「コーディネート」という形でアクティビティ別の推奨商品の一覧が掲載されている。
 でもテントや靴、ザックまでリストアップされているので「レイヤリング」という意味の推奨一覧ではない。というかそもそもベースレイヤー(アンダーウエア)の項目がないのである。
 「組み合わせることで機能の相乗効果を発揮する」と書かれているが、この組み合わせに綿のTシャツをアンダーに着たら全てがぶち壊しなんだが・・・
 まあそもそもソフトシェルを各アクティビティで2項目もリストアップしているので、実際の装備選択の参考になるような代物ではない。各アクティビティ別に推奨したい商品をただ単に羅列しただけという印象である。それならいかにも「こういう組み合わせを推奨します」みたいな書き方にしなきゃ良いのに・・・
 テクニカルマウンテニアリングのリストでは、ソフトシェルはV3ジャケットとスワロウテイルの2着をどう組み合わせると機能の相乗効果が得られるのか、かなりである。またそんなムダなウエアを装備に加え、さらにタドポール23コンバーチブルという、決して軽くもコンパクトでもないテントを(それでもフライトシリーズなのだが・・・)を持って行って、それが推奨する40Lのザックに入るのか?
 ま、スポーツトレッキングでは僅か23Lのデイパックでテント装備を持って行くことになっているので、それよりゃマシであるが。
 このページの冒頭に「組み合わせ」なんて書くなよ、という感じである。マジに受け取る人がいたらどうするんだ。

 それとレインウエアのカテゴリーでおかしなことを言いだした。
 「06春夏シーズン、ザ・ノース・フェイスが新しく提案するのが、最新の高峰登山用アウターウエアをレインウエアとして携帯するというもの」ということなんだそうだが、それで具体的にリストアップしているのが600gもするオールマウンテンジャケットなのである。もう少し軽いのがあるだろうに・・・
 その数ページ前の「アウターウエア」でリストアップされているファイアーフライジャケットなんかが360gと軽くていいんじゃないでしょうか?バカ高いけど、それでもオールマウンテンジャケットよりは安い。

 それだけならまだしもさらなる問題は、ノースフェイスの提案を真に受けてレインウエアとしてオールマウンテンジャケットを買ったとする。
 すると組み合わせるレインパンツがないのである。こんな高額商品を買ったらそれだけで予算を使い切るだろうから、雨の中ジャケットだけで歩けと言うのか?

 実際はレインテックスのパンツは単体売りしている。むろんオールマウンテンジャケットと対を為すオールマウンテンパンツというのもあるのだが、いくらなんでも夏山で冬のアウター上下を着て歩いている人を見かけたらアホかと思うぞ、きっと。
 ま、webには全商品が掲載されているのだが、少なくともカタログを見る限り、オールマウンテンジャケットをレインウエアとして購入した場合、どのパンツを組み合わせればよいのか、まったく判らないような仕組みになっている。
 アウターのところまで戻れば、ドットショットパンツというのがあり、素材にハイベントDを使用しているのでこれを組み合わせることは可能だ、ということは判るのだが、ま、不親切の極みな構成である。
 さらにこのドットショットパンツと組み合わせたときの上下の重量は、実に890gにもなってしまう。こんなのを本気で「提案」しているのか?
 「フライトシリーズ」にえらく力を入れて軽量化を推進しているようなポーズが台無しではないか。

 そのフライトシリーズであるが、よく見ると500gのV3ジャケットのような製品までフライトシリーズに入っていたりして、なんでも名乗ればいいと言うモノではないだろう、と言いたくなる。
 また170gのTシャツなんて軽くも何ともないのだが、やはりフライトシリーズに入っている。というかそもそもベースレイヤーであるTシャツを「軽量化」する意味っていったいなんだ?常時着用しているウエアは、軽量化より優先すべきことがあるだろうと思うのだが。
 このようにカタログ前半はほとんどフライトシリーズ、みたいな構成にしておきながら、レインウエアでは重いアウターを「提案」するし、そもそもレインウエアのページ掲載されているウエアは全てフライトシリーズではない
 今回気づいたのだが、ネーミングに「フライト」となっているレインテックス−フライトは、フライトシリーズではないのである。紛らわしいぞ。
 ま、上下で610gという平凡な重量でフライトシリーズを名乗るわけにはいかなかったのだろうが・・・じゃ、前のとおりレインテックス2で良かったんぢゃ・・・

 

 そんなわけで、個々の商品の魅力云々以前に、カタログの構成にかなり問題があると感じた。少なくとも初心者が自分の装備を揃えていくのに参考にできる構成ではない。

 個々の商品では、秋冬カタログと違ってハッタリが効いた製品に乏しいのがちょっとツッコミどころが少なくて淋しい。
 ゴア・ウェイディング・ジャケットというフィッシング用の7万円近いジャケットが出ているくらいである。フィッシングロッドも出しているのは初めて知ったが、このジャンルにポッと出てきて売れるものなのだろうか?

 ソフトシェルでは、以前からV3ジャケットというものがあったのだが、昨冬にV3サーマルジャケットというのを出してきた。そして今度はV3ベントジャケットが登場した。つい「V3ライダーベルトはまだ出ないの?」というツッコミを入れてしまう。
 オリジナルV3ジャケットもモデルチェンジしている。あまり頻繁にいじっても良くなるとは限らないのだが・・・
 ベントジャケットの方は、蒸れ対策にウエアのあちこちにベンチレーションを造りました、というだけのウエアにしか見えず、あまり興味をそそられない。

 ハードシェルでファイアーフライジャケットという超軽量シェルが出た。360gとなかなか頑張っている。
 ま、肩にゴアテックス3レイヤー、身頃にパックライト(2.5レイヤー)という凝った構成ではあるが。3レイヤーでこの程度の重量の物なら他メーカーからも出ているのだけどね。

 超軽量といえば、僅か185gという重量のストラトス・ライトプルオーバーもある。
 ただこれは軽量設計のため、ファスナーすら存在しない。写真で見る限り、フードを使わないことすら不可能に見える。いくらなんでも、これは不便極まりないのでは。体温調節のためのベンチレーションなど一切不可能のようだし、そもそもヘルメットを被っていたら着脱そのものが不可能だと思うぞ。

 レインウエアはノースフェイスが「提案」した冬山用アウターを除けば、従来どおりレインテックス−フライトレインテックス、それにハイベントDを使用したレイン・ファンの3モデル構成である。
 レインテックスはオールシーズン用の耐久性に優れたモデル(ただし重い)、フライトは軽量な3シーズンモデルという設定である。
 ただしフライトが軽量といってもそれはあくまで「社内比」であり、モンベルのラインアップだとちょうど中間あたりの平凡な重量ということになってしまう。
 またレインテックスはオールシーズン用ということで、冬山用のアウター上下として使えそうな書き方をしているのだが、ごく普通のナイロンタフタ地でとても滑りが良いので、滑落するとヤバイ山に着て行くにはちょっと不安が残る。ちゃんとした冬山用アウターはスパンライク地などの「雪面で滑りにくい生地」を使っている。まあ軽い冬の低山ハイクくらいには十分アウターとして機能するだろうが、そういう用途だったら別にフライトでも不足はないだろう。
 もう1つ、フライトのポケットはフラップにベルクロが付けられていて「雨が入りにくい設計」ということなのだが、普通は、例えばモンベルのストームクルーザーもそうだしパタゴニアのジェットストリームジャケットなどもみなそうなのだが、ポケットにはベンチレーターとしての機能も持たせている。ポケット内がメッシュになっているのはそのためである。
 パタゴニアのジャケットなどは、その機能性をより生かすため、エラスティックテープで生地にテンションをかけておき、ポケットを開けたときにうまく「ガバッと開く」ようにすらなっている。
 フライトはそのあたりとは正反対の設計思想ということなのだろう。
 ま、どっちがどっちとは言えないが、ポケットを開けて湿気を抜くというのは実際にもよくやることで、私個人的にはフラップにベルクロが付いていたらうざいと思う。浸水防止はジッパーを閉めればいいだけのことではないか。

 

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