基礎知識編 ゴアテックスについて

関連ページ:防水透湿性素材の透湿性能比較実験

 

 防水透湿性素材のパイオニアにして代表格。
 ゴアテックスの登場以前は登山用のレインウエアはまともなものが存在せず、ゴム引きの雨合羽やハイパロン(モンベル)などの完全防水だが透湿性はゼロという素材のレインウエアを使うか、ポンチョなどの通気性を確保した形態のものを組み合わせて使っていた。
 完全防水&透湿性ゼロのウエアは当然、激しく蒸れる。その蒸れ方は半端ではなく、そのカッパを着て30分もすると、じっとしていても内側がべったり濡れた。つまり雨で濡れなくても自らの水蒸気で濡れたわけである。雨の程度によっては着ない方がよっぽどましだった。

 なのでゴアテックスの登場以前は、真夏の日中であっても森林限界を超えた稜線で風雨の中を行動することは非常に危険だった。そういう状況で身体を濡れから守る方法がなかったのである。また当時は濡れても身体を冷えから守る化学繊維のアンダーウエアがなく、夏山のアンダーは綿が主流だったこともあって(網シャツなんてあったよなぁ)、夏山でも吹きっ晒しの稜線で雨が降ってくる、ということは極めて危険な状況に陥ったことを意味した。
 現に、現在では雨の中を1日行動したくらいで死ぬような人はほとんどいないが、昭和30年代には鷲羽岳(黒部源流地域の山で、三俣蓮華岳との鞍部に三俣山荘がある)の稜線だけで10人以上死んでいるのである。

 また冬山ではゴアテックスの登場以前は綿やナイロンのダブルヤッケが主流だった。これらは当然防水性を持たない。
 当然標高の低い山では雨が降ることもあるのでカッパも持っていくのであるが、北アに行くのに普通カッパは持たない。でも、ごくまれに北アの稜線でも冬に雨が降ることもあって、そういう状況に遭遇することは、それだけでほとんど遭難したも同然ということを意味した。

 私も高校時代は綿シャツにハイパロンの雨具、大学時代も前半はその組み合わせで山に登っていた。
 もちろんゴアテックスはもう登場していたのだが、高くてなかなか買えなかったのである。冬山はさすがにウールのアンダーを着ていたが、昔のウールはチクチクするので好きではなかった。大学に入った頃にダクロンが出て、やはりちょっと高いので1枚だけ買ったのをず〜っと着ていた。
 なので綿のシャツとハイパロンの組み合わせで雨の中を行動することがどんなに危険か、身をもって知っている。実際にかなり危ない場面もけっこうあったし。
 ゴアテックスのウエアを初めて着たのは冬山用のアウターだったが、ほんとうに感動した。冗談や言葉の綾ではなく、世界が一変した気がした。
 でも、夏山用のレインウエアは、大学時代は岩や沢をやるので使い方が荒く、耐用年数がほとんど1年しか保たなかったため、ゴアのレインウエアはやはり高くて買えなかった。ゴアのレインウエアを私が買ったのは、なんのことはないたった2年前である。

 まあそんなわけで登山用具関連では、ゴアテックスは間違いなく最も多くの人の命を救った発明だろう。
 現在は昭和30年代の登山者より基礎体力的に劣る中高年登山者が主体なので、ゴアテックスがこの世になかったら毎年100人単位で死人が出ているかもしれない。(その前に登山ブームなんてあっという間に去っているだろうが)

 

 防水透湿性という言葉について、誤解している人が多いので説明しておく。
 水は通さないが水蒸気は通す、というのが正解で、よく誤解されて言われる「雨は通さないが汗は通す」とか「水は通さないが空気は通す」は間違いである。
 汗は液体、つまり水なので当然通さない。
 また「空気を通す」というのは、それが「通気性」という意味なら間違いである。初期のゴアテックスは通気性を持っていたのだが、現在のゴアテックスは持たない。

 なので、素肌の上に直接ゴアテックスウエアを着たりするのは効果が薄い。身体から自然に発散される水蒸気は放出してくれるが、汗は出してくれず、また汗でゴアテックスウエアがぴたっと肌に張り付いてしまったら、水の膜ができてしまうので当然透湿性も失われる。そうなると後は蒸れ放題である。
 また、綿のアンダーウエアの上にゴアテックスのウエアを着ても似たようなことが起こる。
 綿のウエアは保水するので汗を吸ってしまう。なので綿のウエアが濡れる。その濡れた生地が透湿性を阻害するのでやはり蒸れ放題になる。
 現在の登山用のアンダーウエアは、体表面の汗を吸い取って拡散し、ウエア表面に水蒸気の形で放出する機能を持っているので、ゴアテックスの機能を最大限に発揮できる。
 それでも激しい運動をすると、発汗量がアンダーウエアやゴアテックスが処理できる限界量を簡単に超えてしまうので、やっぱり蒸れてしまうのであるが。
 でもだからといって「ゴアテックスを着ても蒸れる」と文句を言うのは、ハイパロンの地獄を知らないからだ。雨の稜線を1日歩いても「やっぱり蒸れちゃう」と文句を言う程度で済むのだが、ハイパロンを着ていたら死んでいたかもしれないのだ。

 同じ意味でゴアテックスウエアの表地の撥水性は大切である。
 撥水性とは水を弾く性質で、水をかけると表面で水が小さな玉になり、ころころと転がるあれである。
 ゴアテックスウエアの表地にはたいてい強力な撥水加工が施されているが、使用と共に撥水性能は落ちていく。落ちると水を弾かずにウエア表面にべったりと水が着くようになる。そうなるとその水の膜が透湿性を阻害するので、いくらゴアのメンプレンが水蒸気を放出しようとしても表地でブロックされてしまう。あとは蒸れ放題である。
 また、ウエアの汚れは、これは表地に詰まっていると言うことなので当然透湿性を阻害する。蒸れ放題の素である。

 そういうわけで、きちんと洗濯(洗濯表示に従って)して撥水性を確保するメンテナンスや、アンダーに着るものをきちんと選択してこそのゴアテックスではあるわけである。
 ちなみに洗濯するときは洗剤が残ると著しく性能が低下するので、すすぎは念入りに行うとか、アイロンをかけると撥水性が復活するとか(かけ方も難しいが)、いろいろ奥が深い。

 

 ゴアテックスの正体は簡単に言うと「水分子より小さく水蒸気分子より大きな穴が無数に開いた膜」である。
 メンプレンだけだと当然あっという間にズタズタになってしまうので、ナイロンなどの生地にぴったりと接着させ(ラミネート)ている。表裏に生地をラミネートした3層構造を「3レイヤー」という。レインウエアなどで1枚地に見えるのはたいていこの3レイヤーである。
 表地だけナイロン生地を接着した2レイヤー地もあるが、その場合は裏がメンプレンむき出しになってしまうので、独立した裏地を付けるのが普通である。

 ちょっと概念が複雑なのだが、ゴアテックスの正体は1枚のメンプレンなのであるが、性能の評価などは3レイヤーや2レイヤーなどの製品と同じ状態で行っているようだ。よくカタログで見かけるゴアテックスの性能値である「耐水圧40,000mm以上、透湿性13,500g/m2/24h」の表記は3レイヤー地としてのものである。

 最新のゴアテックスはXCRということになっている。
 これについて、「ゴアテックスXCR」というメンプレンがあるものだと思っていたのだが、よく調べてみるとどうもそういうものではないらしい。

 まずモンベルはXCRの表記を使うかなり以前から「耐水圧40,000mm以上、透湿性13,500g/m2/24h」という、現在のXCRとなんら変わらない性能値のゴアテックスを使っている。またモンベルのカタログにXCRの表記が付き、製品にタグが付いたのは2004年からなのだが、その前後ででモデルチェンジされていない製品も同様にXCRタグが付くようになった。
 また、モンベルのカタログをよくよく見てみると、同じアルパイン用のアウターのカテゴリーでXCRタグが付いているモデルと付いていないモデルがある。ドロワットパーカとインシュレーテッドアルパインパンツとビブがXCRタグではない普通のゴアテックスタグになっている。
 また、ノースフェイスのカタログだと、デニムとゴアテックスを組み合わせたゴアテックス・デニムマウンテンジャケットや、プリマロフトの中綿が入ったゴアインサレーションジャケットが、XCRではないただのゴアテックスタグとなっている。

 モデルによって性能が違うゴアテックスメンプレンを使用しているとは考えにくいので(そんなことをする理由がない)、これはつまり製品状態の生地で、一定の性能値を満たすものに「XCR」の表記をしている、というだけのことではないのか。
 モンベルとノースフェイスでXCRタグが付かないモデルに共通しているのは、「中綿入り」ということである。モンベルのモデルにはシンサレートが入っているし、ノースフェイスも同様にプリマロフトという中綿が入っている。防水性は変わらないだろうが、透湿性は中綿の抵抗があるので3レイヤーと同等というわけではないだろう。だからXCRタグが付かないのか。
 デニムの方はただの3レイヤーだが、デニム自体が吸湿するので明らかに透湿性はガタ落ちだろう。しょせんシャレのモデルだし。
 モンベルには他にエクセロフトという化繊の中綿やシンサレートとゴアテックスを組み合わせたモデルがいくつかあるが、やはり全て通常のゴアテックスタグである。

 そんなわけで、XCRとは生地全体で性能基準を満たしている場合に名乗ることを許される名称、ということが推察できる。
 また、性能値を満たしていてもそれとは別に「XCRを名乗ることができる契約」のようなものが存在するらしい。
 モンベルが同じモデルでありながら2004年までXCRを名乗らなかったことからの推測である。

 数年前にストレッチャブルゴアテックスというのがあった。
 2001年にモンベルからダイナアクションパーカとパンツが出たとき、また2002年のノースフェイスのウインターダンスジャケットなどが、このストレッチャブルゴアテックスという表記を使っていた。伸縮性を持ったゴアテックスウエアが出始めた頃である。
 当時は、そういう「ストレッチャブルな」ゴアテックスメンプレンがあって、それを使ったウエアがダイナアクションパーカやウインターダンスジャケットであると思っていたのだが・・・

 現在はストレッチ性を持ったゴアウエアはずいぶん多くなっている。モンベルなどはアウターのほとんどを伸縮性を持つものにモデルチェンジしてしまった。が、それらのモデルは「ストレッチャブルゴアテックス」という表記はなく、ただのゴアテックスXCRである。
 ダイナアクションパーカはもうモデルチェンジしてしまったのだが、パンツの方は現在でもモデルチェンジされずに販売されている。その表記は相変わらず「ストレッチャブルゴアテックス」なのだが、タグはXCRなんである。
 ということは、なんだ、ストレッチャブルゴアテックスなどというメンプレンは存在せず、同じものだったんだ。ラミネートする生地の素材や織り方でストレッチ性を持たせた場合、「ストレッチャブルゴアテックス」と表記しろ、という契約がメーカーとゴアテックス社の間で取り交わされていただけのようである。

 モノは同じなのに、XCRだのストレッチャブルだの、いろいろな名称を表記に用いるというのは、さも新しい素材が次々と出ているように見せるゴアテックス社の戦略、なのだろうな。

 メーカーの方も、例えばXCR表記を他メーカーに先駆けて付けるために、いくらかゴアテックス社に余計な金を払って、さも「我が社は最新素材を真っ先に使っています」と見せかけているだけなんだろう。まあその分は製品の値段に跳ね返っているので、ユーザーが払っているわけだが。実際は世界中の各メーカーがほぼ同時に使い始めているとしても。
 考えてみれば、ゴアテックス社にしてみれば最新素材が完成した場合、一部メーカーだけに独占使用させるメリットはあまりないように思える。数が売れないし、何よりウエアメーカーがそれぞれ防水透湿性素材を自社開発していて、それらの性能がゴアテックスを凌駕しようかというご時世である。
 現在のXCRに変わる以前のゴアテックスの性能は、透湿性で6,000g/m2/24hというプアなものだったし(モンベルの2000年のカタログより)、XCRが出たときのふれこみが「透湿性が25%アップした」というものだったから、10,000g/m2/24h程度のものもあったのかもしれないが、それにしてもその程度の素材なら掃いて捨てるほどある。というかほとんどのウエアメーカーが独自開発している防水透湿性素材がその程度の性能は達成している。
 そんなご時世に新型ゴアテックスを一部メーカーに独占使用させ、他メーカーには旧型ゴアテックスを使わせるなんてことをしたら、ヘタすれば「ゴアテックスは性能が低い」というレッテルをユーザーに貼られかねない。

 ま、そんなこんなでモノは同じで名前に金を付けることで利益を出していた、という戦略が見えてきてしまう。結局その金はユーザーが払っていたわけだが。

 

 というわけで、各ウエアメーカーが自社開発している防水透湿性素材の性能値を表にしてみた。
 ゴアテックス社が焦るのも無理はない。けっこうみんな頑張っているんである。

 

名  称

メーカー

形態

防水性(mm)

透湿性(g/m2/24h)

備  考

ゴアテックスXCR

ゴアテックス社

メンプレン

40,000

13,500

 

ドライテック

モンベル

メンプレン

25,000

10,000

 

ブリーズドライテック

25,000

15,000

 

スーパーハイドロブリーズ

コーティング

20,000

10,000

 

エントラントGU/XT

東レ

コーティング

8,000

10,000

 

ハイベント

ゴールドウイン(TNF)

 

HOバリアー

パタゴニア

 

ベルグテックEX

ミズノ

メンプレン

32,640

16,000

 

ウェザーテック

イスカ

メンプレン

15,000〜?

10,000〜?

 

オムニテック
デュオプライXDトレントXP

コロンビア

メンプレン

20,000

10,000

 

デュアプレックス

フェニックス

20,000〜

30,000

温度により可変

エアリファイン

キャラバン

コーティング

10,000

5,000

 

 ノースフェイスやパタゴニアはカタログやウェブサイトに技術的な解説が載っていないので性能値についても判らない。
 コロンビアのオムニテックは、張り合わせる生地や織り方によって全て表記が違い、オムニテックを使ったモデル数ほど種類がある。それらの中で最も性能的に優れているものを表に入れた。

 こうしてみると各メーカー、頑張っている。少なくとも数値的にはどうしてもゴアテックスでなければ、というものではもはやない。
 耐水圧については、エントラントでも普通にレインウエアとして使っていた経験からみても、おそらく10,000mm以上の数値であればレインウエアとしては十分実用になると思う。濡れた岩の上に座ったりという状況では、それなりの耐水圧がないと水が染みてしまうだろうが、少なくとも雨に打たれるだけであれば、10,000mmもあればお釣りが来るはずである。雨傘の耐水圧なんて2,000mmくらいしかないのだが、雨に打たれるだけで染みてくるようなモノはない。まあ、ウエアの場合、ザックのショルダーあたりなどはそれなりの圧がかかっているので、2,000mmくらいの耐水圧ではあっという間に浸水するだろうが・・・

 なのでレインウエアとしての性能は透湿性の方が重要だろう。これは現在のゴアテックスでも簡単に限界を超えることから、ゴアテックスで満足というものではない。
 そうしてみると、デュアプレックスの30,000というのは疑いたくなるほど図抜けているが、他にもベルグテックやブリーズドライテックなど、ゴアテックスを凌駕するものがちらほらある。
 むろん、ウエアとしてカタログ値どおりの性能を発揮するかどうかはまた別の話だし、使用するナイロン生地の種類やレイヤー生地としての作り方、またウエアの各部の仕様などが総合して「ウエアとしての性能」になるので、一概にデュアプレックスが良い、ベルグテックやブリーズドライテックが良い、とは言えないのだが、少なくともゴアテックスだけに注目していれば良い、というわけではどうもなさそうである。


 好き勝手なことをいろいろ書いていると、いろいろな人からメールをいただく。勘違いや間違いの指摘のメールをいただくこともしばしばである。ありがたく訂正や補足をさせていただいているのだが、自分では気になっているのだけど未だ誰からもツッコミをいただいていないことがある。

 それはゴアテックスなどの透湿性能を示す数値の規格についてである。

 透湿性能の数値単位は、上の表にも表記してあるとおりg/m2/24hである。これは平方メートルあたり24時間で何グラムの水蒸気がファブリックを通過するか、という数値なのだが、実はこの数値を出すための試験方法が何種類かあるのである。

 ちなみにゴアテックスの13,500g/m2/24hという数値は、JISL-1099B-2法によるものである。他のドライテックやベルグテックなどのほとんどの素材はL-1099B-1法による数値なのである。
 この2つの規格、どう異なっているのだろうか?
 規格が異なると言うことは、ゴアテックスとドライテックの透湿性能の数値を単純に比較するわけにはいかないのではないか?ということが気になっていたわけである。

 これらのことは、JIS検索のページから"L1099"と入力して検索すると規格書を読むことができる。
 なぜか著作権の関係とかで、規格書のPDFファイルを閲覧はできるが印刷も保存もできないようになっている。印刷したければ買え、ということらしい。工業製品の規格に関する詳細をユーザーが自由に見ることができないというのは疑問なのだが・・・
 まあともあれ、そういうことなのでここでもあまり詳しいことは書けないかもしれないので、概要を述べるに留めることにする。

 このL1099という規格は、「繊維製品の透湿度試験方法」のことで大きく分けてA法とB法の2種類あり、それざれがさらに1と2法に分かれている。つまり合計4種類の試験方法がある、ということだ。
 その中でゴアテックスなど登山ウエアの透湿性を示す数値に使われるのは、ほとんどがB法である。

 このB法は、「酢酸カリウム法」と呼ばれていて、酢酸カリウムを吸湿材として繊維を通過してきた水蒸気を吸わせ、試験前と試験後の重量差を出して透湿量を算出する、という方法である。

 具体的にどうするかというと、平たくいえばコップに被検繊維で蓋をして、それを逆さまにして水の中に浸ける。するとコップの中に水蒸気が通過してくるので、それをあらかじめ重量測定してコップの中に入れて置いた吸湿材に吸わせる、という方法である。原理はすこぶる簡単である。
 ま、規格試験なので水や空気の温度とか、コップの口の面積、試験時間などに厳密な規程があるものの、試験そのものは中学生の理科実験レベルである。データを出した後の計算式も小学生高学年レベルだし。

 さて、そこでB−1法とB−2法の違いなのだが、ここに登場するのが「透湿度測定用補助フィルム」という代物である。
 要するに被検繊維とこのフィルムを重ねてコップに張るわけであるが、B−1法はフィルムをコップの内側、つまり吸収剤側に1枚張る。そしてB−2法はフィルムを繊維の両側に張るのである。違いはそれだけである。

 ということはである。B−2法は補助フィルムを1枚多く張る分だけ抵抗が増すので数値は落ちる、ということが予想できる。どうりでモンベルのwebやカタログでは、ブリーズドライテックの方が数値自体は高いのに、チャートなどではゴアテックスより透湿性能が劣るように書かれていたわけだ。

 ちなみにこの補助フィルム、「空孔率80%、厚さ0.025mmのポリテトラフルオロエチレンのフィルム」とある。え?もしかしてゴアテックスメンプレンのことじゃないの?と思ったのだが、ゴアテックスにしては空孔率が高すぎるような。ゴアテックスの空孔率って計算してみると50%弱といったところだと思うので・・・(計算、合ってるかなぁ?)
 ま、ゴアテックスを補助フィルムにしてゴアテックスをテストするなんてことはしないよな、普通は。

 というわけでJIS L-1099B-2で試験した繊維の透湿性能値は、JIS L-1099B-1で試験したときより落ちる、ということが推察できるわけである。
 どのくらい落ちるのか?という点だが、ご丁寧に両方で試験したデータがいくつかネットに転がっていて、それを見る限りどうやら60%程度、というのが近い線のようである。
 つまりB-1法で15,000g/m2/24hの性能値であるブリーズドライテックをB-2法で試験すると、だいたい9,000g/m2/24hといったあたりの数値になることが予想できる、というわけである。

 でもそもそもなんで透湿性能を測定する方法が2種類、A法も含めると4種類もあるのか?という疑問があるのだが、もっとも適切な方法を選んで行うこと、としか書かれていない。
 B法については、試験時において水が浸透する資料には適用できない、とあり、そのような場合はB−2法を用いるように、という但し書きがある。つまりB法においてはB−1法がスタンダードであるような書き方で、ゴアテックス以外の大半の素材がB−1法で試験されていることと矛盾しないのだが、だとすると何故ゴアテックスだけB−2法で試験されているのだろうか?B−1法で試験した方が数値は高く出るので良いのじゃないか?

 ま、B-1とB-2の数値を6割で換算という推測はできるのだが、どんなファブリックでも一定の換算率というわけではもちろんあるまい。それぞれの試験方法でどういう数値が出るのかは、結局のところはやってみないと判らないのだから。
 このB法はファブリックの裏地を水の中に浸けるので、裏地付きの2レイヤー地とか裏地を起毛させたゴアテックス®ソフトシェルのような繊維はB-1法では試験できない。必然的にB-2法を使わざるを得ない。

 まあそんなこんなで、とりあえず透湿性能は、少なくとも数値の上ではゴアテックスがやはりまだ最も高いらしい、ということが判ったわけである。
 でもそうやって考えると、15デニールの3レイヤーと30デニールの3レイヤーでは、やはり15デニールの方が数値は良くなりそうである。また2.5レイヤーだともっと良くなるはずだよな。
 まあ規格の数値はしょせん目安か、というあたりに落ち着くのであった。

 でもちょっと自分で実験してみたい。

 (試験してみた)

 

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