2005年秋〜冬モンベルの傾向と対策

 モンベルの秋冬ものは、商品構成として大きく変わった点が2つある。

 まず1つめ。
 アウターの構成でオーバーズボンが統合された。
 去年までは例えばドロワットパーカとドロワットパンツ、という具合にそれぞれのモデルごとにジャケットとオーバーズボンがラインアップされていたのだが、今秋からジャケットとパンツは完全に別扱いになった。
 そしてオーバーズボンは、ダイナアクションパンツ等の旧モデルの継続も一部残るものの、基本的に5モデル構成というすっきりしたものになっている。
 その構成もシンプルで、
1.シンプルなゴアテックス3レイヤー1枚地のパンツ(アルパインパンツ)
2.裏地が付いたゴアテックス2レイヤーのパンツ(ライニングアルパインパンツ)
3.中綿(シンサレート)が入った保温性重視のパンツ(インシュレーテッドアルパインパンツ)
4.中綿が入ったビブ(インシュレーテッドアルパインビブ)
5.ゴアテックスではなくブリーズドライテックを使用したパンツ(ブリーズドライテック・ライニングアルパインパンツ)
 という、ネーミングまでシンプルな構成になった。

 まあ確かに合理的である。似たようなモデルが多数並んでいた従来のラインアップをかなり整理してすっきりさせた感じである。
 特筆すべきは、これらのモデルが全て伸縮性を持っていることである。
 昨年にモデルチェンジされたジャケット類の大部分が肩や肘などに伸縮性を持たせられたので、これでモンベルのアウターラインアップは、ほぼどれを選んでも伸縮性を持つことになった。
 ジャケットはともかく、パンツの伸縮性はかなりありがたい気がする。

 ところで「伸びるアウター」って、ほんの数年前に初めて登場したはずなのだが、その時はモンベルに限らずどこのメーカーのモデルも「ストレッチャブルゴアテックス」という素材を使っていたという記憶がある。ということは、当時のスタンダードなゴアテックスは伸縮性を持たなかった、ということなのだろう。
 が、今の伸びるアウターは、モンベルに限らずどのメーカーも普通の「Gore-Tex XCR」という表記しかしていない。XCRは現在のゴアテックスの標準素材で、レインウエアなどにも普通に使われているものなのだが、このXCRは伸縮性も持っているのだろうか?
 なお、一般的にはナイロン生地の伸縮性はポリウレタンを混紡することによって得ているそうなのだが、モンベルの場合は大部分が糸そのものに加工を施して伸縮性を持たせるメカニカルストレッチを採用している。特にアウターは全てメカニカルストレッチである。

 ポリウレタン混紡と比べてメカニカルストレッチが優れている点は「へたりにくい」ということらしい。
 なお、「メカニカルストレッチ」はモンベルの登録商標である。

 ともあれ、このオーバーズボンのラインアップ整理は歓迎である。コストダウンにもなるだろうから。
 次はレインウエアもパンツを整理統合すれば、もう少し安くなるかな?と期待。せっかく上下別売になったんだから。

 アウタージャケットの方は今季はネージュクルーザー1モデルだけがモデルチェンジした。
 このモデルは以前から軽さ命のモデルなのだが、今回さらに100g近く軽量化を果たした。なんと385gである。へたなレインウエアより軽い。これで肩や肘にはちゃんと補強も入っていてメカニカルストレッチも付与されている。
 今回防水透湿素材がブリーズドライテックに変更されているので、性格的には冬山用のアウターというよりはレインウエアに限りなく近いと思う。
 でもこのモデル、以前からそうなのだがとにかく軽さ命、なのでデザインがあまりにも素っ気ない。

 

 商品構成の変化、その2。

 ついにカタログに「ソフトシェル」という言葉を使った。
 以前からこれはソフトシェルそのものじゃないか、と指摘していたマウンテントレーナーロッシュジャケットアクションシェルジャケットの3モデルの他にライトシェルのシリーズがこのジャンルにカテゴライズされるようになった。
 それと同時にライトシェルシリーズはモデルチェンジされ、新たに伸縮性を付与されている。
 まあ、世の中的には「伸縮性を持つこと」というのがソフトシェルの必要条件のようなムードになっているので、これもある意味必然なのかもしれないが、ライトシェルのシリーズにはあまり必要なかったような気もするのだが。
 他にもストレッチウインドジャケットとか、伸縮性を持っているウインドブレーカーはラインアップしているのだが、それらはこちらのソフトシェルにはカテゴライズされていない。まあおいおい整理されていくだろうけど。

 ロッシュジャケットがモデルチェンジされている。
 一見、どこが変わったのか判らないほどデザイン的には変化がないのだが、袖口の仕様が変わっていて伸びるフリース地が使われている。また、その袖口に親指を通す穴が付いている。モンベルではサムホールと呼んでいる。ここに親指を通せば、重ね着したときの袖のまくり上がりを防止でき、また手の甲までフリース地で覆われるので暖かい、ということらしい。
 最近のモンベルはこの仕様をいくつかのモデルに投入し始めているが、私的にはこれはあまり好きではない。特にソフトとはいえシェルを名乗るウエアには採用して欲しくないのだが・・・
 というのは濡れたときに不快なのである。いくら繊維自体が保水しないとはいっても、フリース地なので生地はやっぱり保水して重く冷たくなってしまう。
 マウンテントレーナーにも今のモデルにはこのシステムが採用されているので、早くやめて欲しい
 この手のウエアは小雨とか濃霧、霧雨、早朝からのヤブこぎ(夜露でヤブはびっしょり)など、けっこう濡れる場面でもガシガシ着倒すものなので、多少濡れても着心地が悪くならず、乾きも早いものであって欲しい。

 マウンテントレーナーとロッシュジャケットのサムホール、やめてください>モンベル様

 他にはエクセロフトという化繊の中綿が入ったサーマラップジャケットのシリーズがモデルチェンジしている。
 コンシールジッパーを採用して防風性を高めたのが主な改良点であるようだ。

 相変わらずモンベルは軽量化には力を入れている。
 モンベルの軽さ命!というモデルにはウルトラライトの略であるU.L.がモデル名に付くのだが、従来はダウンインナージャケットやサーマラップジャケットにあったU.L.モデルが、今季はライトシェルシリーズにも設定され、サーマラップシリーズにもさらに1モデル追加された。
 で、これらの超軽量ウエアのほとんどが、他メーカーの同種モデルより軽い。
 ま、ダウンジャケットなどは中綿量(保温材の量)との兼ね合いがあるので、一概に軽ければ軽いほど良いとは言えないのだが、モンベルはこの分野には中綿量や材質(ダウンor化繊)にバリエーションを持たせ、実に4モデルも投入している。
 ノースフェイスやパタゴニアも数年前から展開していて、このところちょっと流行る気配を見せている超軽量のウインドブレーカーというジャンルも、モンベルのULウインドジャケットがダントツで軽いし、レインウエアに至ってはモンベルの独壇場の感すらある。
 今年、ノースフェイスが"フライト"というネーミングまで付けて出した軽量レインウエアも、その重量は上下で610gに過ぎず、モンベルのラインアップの中ではちょうど中間くらいなんである。
 もちろん耐久性や使用感などもあるので、軽ければ全てよしというものではないのだが、登山用具に関しては重量はかなり大きな性能のひとつであり、この分野ではモンベルは他メーカーをリードしている、と言えそうである。

 冬山様アウターの大部分のモデルをストレッチャブル化しているメーカーもあまりないし、今までモンベルは「無難な性能のモデルを無難な価格で提供する無難なメーカー」というイメージで見られがちだったのだが、この数年でかなり明快な特徴が出てきたように思える。

 

 今季はジオラインのアンダーウエアがほぼ全面的にモデルチェンジされている。
 パターンがかなり変わっている。また、編み方が一新されていて、特に中厚手や厚手のモデルが大幅に薄くなった。これで前モデルと同等の保温性が確保されているのだろう。
 それと縫い目がない「シームレス」というシリーズが新たに追加されている。これは女性用のアンダーウエアのみだが。

 好日山荘に回ってきたモンベルの営業の兄ちゃんは、このジオラインの厚手(エクスペディション)をほとんど普段着にしているそうな。
 ほんまかいな、そりゃいくらなんでも暑いのとちゃうか?とひとしきり笑わせてもらった。
 なんせモンベルカタログにはレイヤリングの例として、中厚手のアンダーにクリマプラス200のフリース、アウターにドロワットパーカの3枚で「積雪期のアルパインクライミング」に対応しているのである。まあ日本国内ならたいていの場所は中厚手で保温性が確保されるということなのだろう。
 厚手を下界で着るのは暑そうだが・・・
 でも面白いので話のネタに買ってみようかと思っている今日この頃。

 

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