2006年モンベルの傾向と対策

 モンベルは毎年春にギアカタログと春夏ウエアカタログを出すのだが、今年はちょっと遅い。
 昨年は3/18付けでカタログ分析のページをアップしているのに、今年は3/16になってようやくwebの商品リストが更新された。カタログはまだ出ていない。4月初旬になるそうだ。
 というわけで、先日アップした予想と期待のページと併せてご覧いただければ幸いです。

 今年のニューモデルのうち、新しいマット(U.L.コンフォートシステムパッド)については予想と期待のページで詳しく書いたのでここでは触れない。これだけが先行してwebや山岳雑誌の広告に露出していた。でも在庫は少なく、本格入荷は4月になってからになりそうなのだが・・・

 マットと同じくらい力が入ったニューモデルはテントである。
 去年からことあるごとに「ブリーズドライテックをテントに使えないものか」とこのサイトで述べてきたが、ついにそれが出てきた。池上君、大当たりである。

 さて、その重量は1人用のマイティ・ドーム1で1.26kg、ペグ、張り綱、スタッフバック込みでも1.55kgと、まずまずこの手のテントとしてはトップクラスの軽さである。それでいてゴアテックスよりは確実に性能(対結露性)は良いだろうから、面白いモデルだと思う。
 値段もダブルウォールのステラリッジとそれほど変わらないので、ステラ2をヤフオクで売ってマイティ・ドーム1を買おうかと思ってしまう今日この頃である。

 このモデル、実はステラリッジシリーズと寸法がまったく同じなようである。なのでフライシートを共有できるような形でオプション販売されるようになった。またシングルウォールテントの定番であるハーフフライもちゃんとオプション設定されている。
 とはいうものの、「爪に灯をともすような軽量化」のためにシングルウォールテントを選ぶのならば、フライは使わずに不便を忍んで単体で使うのが男らしいとは思うが。

 シュラフカバーもブリーズドライテックを使った新しいモデルが出た。
 「ウォームアップスリーピングバッグカバー」である。裏面起毛地で490g。ん〜、私が欲しいのとは違う。3レイヤー1枚地で300gを切るモデルが欲しいぞ。

 シューズでは、メドーウォーカーのゴアテックスじゃないバージョン的なモデルだったトレールウォーカーが廃番になってしまったが、その代わり同じようなウォーキングシューズが2モデル、新しく出てきた。
 「ラップランドストライダー」「パームランドジョガー」がそれである。同じようなデザインで前者がゴアテックスを使っている。
 ちょっとデザインがあか抜けしてきたなぁ、と思う。
 それと「ツオロミーブーツ・ソフト」なるモデルが出てきた。これはまだwebにも写真が出てきていないのでよく判らない。

 

 ザックもいくつか新しいモデルが出てきた。

 「バーサライトパック」というのが出た。いわゆる「超軽量ザック」である。
 なんせメイン部分には30デニール、補強部分でさえ210デニールという、レインウエアより薄いザックである。
 それだけの極薄生地を使っただけあり、50Lモデルで重量が1.125kgである。これはいかなる基準をもってしても軽い。
 このモデルは他に20Lと35Lがあるのだが、重量は20Lで僅か315g、35Lでも920gとモンベルの面目躍如といった軽さである。
 ちなみに20Lはフレームレスモデルなので、くしゃくしゃと丸めてザックに入れておけばサブザックとして使える。そういう用途には今までU.L.バランスライトというモデルがあったのだが、これと入れ替わりに廃番になってしまった。

 もうひとつ、「マチカチパック」というのが出た。ネーミングの意味が判ら〜んと思っていたら、マチカチとはアイヌ語で「女の子」を意味する言葉なんだそうである。つまり、「女性用ザック」である。40Lと30Lがある。

 実はwebに商品がアップロードされる前から、ザックは既に流通していた。
 なのでこの2モデルについては、好日に入荷したので見ている。といってもバーサライトパックの軽さに気を取られていてマチカチの方はあまりよく覚えていないのだが・・・

 

 ウエアでは、予想と期待のページ「モデルチェンジか?」と書いたライトシェルレインフィールダーは単なるカラーチェンジだった。それでも品番が変わってしまうのであるが。
 ただ、レインフィールダーのパンツは、去年のモデルはサイドにジッパーの付いていないシンプルなものだったが、今回裾にジッパーが付いた。というか付いているのが当たり前なので、逆に付いていない旧モデルはそれなりに異彩を放っていたのだが、これで普通のレインパンツになってしまった。同じようなモデルばかりこんなにたくさんあっても仕方がないと思うのだが?
 ・・・とはいうものの、ゴアテックスのズボンで8,000円という値段には恐れ入るが。安すぎである。

 それとスーパーハイドロブリーズレインウエアがモデルチェンジした。いまやモンベル唯一の「上下セット販売」のレインウエアである。
 モンベルオリジナルの防水透湿性素材のスーパーハイドロブリーズを使ったウエアなのだが、去年まで2レイヤーだったのが今年、3レイヤーになった。それも去年より厚手の生地を使って。
 なので去年モデルが上下で480gという軽さだったのに対し、今年は605gと平凡な重量になってしまった。まあハードに着倒すにはこの方が良いとは思うが。値段も安いしまさに農作業向きでは。

 あと、アンダーの素材でウィックロン・ブリーズスパンという新素材が出てきている。非常に通気性が良い麻のような風合い、なんだそうだ。

 カタログが届けばもう少し詳しいことが判るかもしれないが、今のところはこんなところで。


(06.04.02 更新)

 先週末にやっと新しいモンベルのカタログが来た。情報量としてはwebよりそれほど変わるわけではないので新鮮味は薄いのだが、それでも素材や仕様についての情報は豊富なので分析のし甲斐があったりする。

 ちなみに今年の春夏の新製品は、ここにリストアップされている。いつリンク切れになるか判らないが・・・

テント

 テントでは、やはりマイティ・ドームは魅力的である。
 例えば1人用のマイティ・ドーム1だとその重量は1.26kgである。シェルターだとこれより軽い1人用のものはいくらでもあるが、一般的なドーム形状のテントでこの重量は軽い。これより軽いのはICI石井ゴアライトXの1型の1.18kgくらいしかないのでは。
 サイズ的にはマイティ・ドームゴアライトXの底面積は同じだが、高さはゴアライトXは8cmほど低い。耐風性のこともあるので高けりゃ良いってものではないが、居住性にとってはこの8cmの差はかなり大きいと思う。
 ちなみにモンベルのダブルウォールテントであるステラリッジシリーズと、このマイティ・ドームシリーズは、外寸はまったく同じである。なのでフライやスノーフライ(外張り)は共通オプションとなっている。
 その同寸法のステラリッジ1型の重量は1.65kgである。約300gの重量差であり、これはかなり大きい。同型のダブルウォールテントより300gも軽量なシングルウォールテントって、実は例がほとんどない。
 モンベルの廃番になったゴアテックステントであるアルパインドームは、同型のステラリッジとほぼ同じ重量だったし、RIPENエアライズ1型とゴアライズ1型では、逆にゴアライズの方が200gほどエアライズより重い。ダブルウォールより重いシングルウォールに、いったいどんな存在価値があるのだろうと悩んでしまうところである。

 ちなみにシングルウォールテントは、実は悪天候時はかなり使い辛い。フライシートがないため、出入り口を開けるとテント内まで雨晒しになってしまうからで、結局ゴアテックステントのユーザーはフライシートも追加購入する率が非常に高いのだそうだ。購入代金はともかく、ただでさえ同型シングルウォールテントとほとんど同じ重量だというのに、フライシートを持って行けば確実に重量は重くなる。
 例えば、ゴアライズ1のフライシートが390gである。足せば実にエアライズ1より600gも重くなる

 まあそんなわけで、シングルウォールテントってあまり「使えない」代物だという認識だったのだが、ゴアライトXやこのマイティ・ドームくらい軽ければ話はまた別である。数百グラム単位で軽量化ができれば、雨中の使いづらさは承知の上で選択する理由ができてくる。
 ちなみにこの超軽量級テントが2つともゴアテックスではないところが面白い。ゴアライトXは、その名前からゴアテックスだと思いこんでいたのだが、よく見てみるとゴアテックスの表記やタグはどこにもない。素材も「ピラミッド」と書かれているだけである。まあ商標などについてちゃんとした会社なら、商品名ももう少し考えると思うのだが・・・
 まあそれはともかく、ICIでもゴアテックスを使った従来のゴアライトは極めて平凡な重量だし、結局のところゴアテックスでは軽量テントは作れなかった、ということなのだろう。

マット

 U.L.コンフォートシステム・パッドはやはり魅力的である。
 重量的にサーマレストプロライト3を抜いて世界最軽量を達成したというのももちろんだが、それが丸めた本体や枕などを留めておけるストラップや連結のためのトグル等を装備した上で、というのが凄い。

 シュラフとは違ってマットは連結したい時も多々ある。特に私のように家族連れでテン泊していると、子供の寝相が悪いのでマットとマットの合間にほぼ間違いなく落ち込んでいく。これは横に2枚連結するだけで劇的に改善されるはず。
 その連結については、各社カプラーとかでいろいろ努力していたのだが、このトグルで連結するというのはあまりにもシンプルで、どうして今まで誰もこれに気づかなかったのか不思議ですらある。

 もうひとつはその構造で、このマットは端に接合部がないのである。袋状にしてしまって平面部で接合しているからなのだが、この手のマットの空気漏れトラブルは、明らかな破損を除いてはほとんどがこの接合部からだから、こういう具合に袋状にしてしまうだけで耐久性は、これまた劇的に向上するはずである。これもどうして今まで誰もこれに気づかなかったの?と思うようなシンプルなことなのだが。

 でも実は、一番気になっているのは、豊富なオプション展開の中のなのである。その名もU.L.コンフォートシステムピローである。
 写真を見る限り、ちゃんと中央部が凹んだ構造になっていて、さすが単機能だけあって枕として寝心地が非常に良さそうである。
 枕単機能、という点がどうしても後ろめたいところではあるが、この枕は欲しい。でも、これもやはりトグルで留める構造なので、マットも買わないとこの枕の真価は味わえないのだろう。とすればマットも買うしかないか・・・?

 枕って意外に苦労するモノである。
 たいていはスタッフバッグに衣類を詰めて枕にするのだが、これだと形は崩れがちだし、第一滑りやすいので寝ているうちに枕がどこかに行ってしまう。
 学生時代はよくロープを枕にしていたが、ゴツゴツして寝心地が良いとは言えなかった。ザックに何かを詰めて枕にする手もあるが、私はたいていザックは足元に敷き込んでいるのでその手もあまり使えない。
 そんなわけで枕は何かいい手はないかなぁといつも思っていたのだが、そこにこのピローはスマッシュヒットしてしまったわけである。

ブーツ

 ツオロミーブーツのソフトというのは、何がソフトなのか結局よく判らない。ソールはもちろん柔らかいのだろうが、それだけなのか他にも何かあるのか、実物を見てみないとなんとも言えない。

ザック

 マチカチパック「女の子用」なので残念ながらうちのカミさんに買ってやるわけにはいかないのだが、ウィッシュボーンパネルをわざわざ女性用に新設計していたりして、なかなか凝った造りのザックのようである。
 また、今となってはモンベルの本格的なトップローディング式のザックでは唯一の2気室構造だったり、ストックをサイドに収納したときの先端のカバーやザックカバーが装備されていたりと、この至れり尽くせり具合は、女の子と言うよりはどちらかというと「昔女の子だった人」をメインターゲットに開発されたザックなのだろう。
 多分売れるだろうし、私も他人には「これ、良いんじゃない?」とそれなりに積極的に勧めるモデルではあるのだが、自分では絶対に買わないタイプのモデルである。

 バーサライトパックはともかく20Lモデルが良い。この20Lだけがフレームレスで、しかもポケッタブルなのでサブザックにドンピシャリである。
 学生時代から真砂沢B.C.からの毎日の行動では20Lほどのサブザックで行っていた。それも赤のゼロポイントだった。それがU.L.バランスライトだった(もしくはその前モデル)のだが、その後継である。ちょっと高くなってしまったが・・・

レインウエア

 レインフィールダーは去年出たばかりのモデルなのだが、今年はカラーチェンジを受けた。それだけで品番が変わってしまうのだが。
 元々「少し安い代わりに少し重いモデル」という位置づけで、上下だと650gと、確かにモンベルのラインアップの中では重い部類に入る。ただ、他メーカーでは決して重いモデルと言うことにはならず、例えばノースフェイスのレインテックスは780gもするし、"フライト"なんて名前まで付けて気合い十分のレインテックス−フライトでも610gなのである。
 そう考えたらレインフィールダーの上下でも、なんら不具合はないだろう。何より安い。上下で買っても税込みで2万円を切るのである。ゴアテックスXCRのレインウエアで、上下で2万円を切るモデルは他にあり得ない安さである。

 とはいえ、ブリーズドライテックのレイントレッカーだと、まだもう少し安く買える。

 他に今年変わったモデルは、モンベルオリジナル素材を使用したスーパーハイドロブリーズレインウエアがある。今やモンベル唯一の上下セット販売モデルである。
 従来2レイヤー地だったのを3レイヤーにした。そのおかげで重量は480g→605gと大幅に増したが、使いやすくはなったと思う。値段も安いし、モンベルはレインフィールダーのところで「休日のガーデニング」「農作業」に最適なんて書いているが、ほんとはこっちの方が遙かに向いているのではないか?

その他

 Tシャツなどのアンダー用途向けの素材で、ウィックロン ブリーズスパンというのが新しく出てきた。実物を触ってみないと何とも言えないのだが、濡れた状態での通気性が高いのが特徴で、汗をかいてもべたつきが少ないという素材らしい。

 また目立たないのだが、クールグローブロングフィンガーレスグローブロングというのが出た。
 防寒用ではなく、日焼け対策用の手袋である。なのでロングといっても半端な長さではないTシャツを着ていても肌の露出がないというくらいのロングである。
 まあこれも「昔女の子だった」女性向けのアイテムなのかな・・・?

 これも目立たないので今になって気づいたのだが、ストック類が一気にモデルチェンジしている。
 私もストックももうボロボロなので、そろそろ買い換えなきゃと思っていたところだったのだが・・・ちょっと高くなったな。サイズ設定が増えたのは、やはり女性を意識してのことか。

 

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