2007年モンベルの傾向と対策
カタログの紙質が安っぽくなった。まあ別にどうでも良いことなのだが・・・
<アウター>
今季はアウターの多くがモデルチェンジした。特にジャケット・パーカは昨シーズンからの継続販売はアルパインサーマシェルジャケットとネージュクルーザー、ミディパーカのみで、あとは全てモデルチェンジまたは追加モデルである。
数が多くてたいへんなので、まずは一覧表を。
区分 |
モデル名 |
品番 |
素材構成 |
生地 |
伸縮性 |
その他構成 |
重量 |
価格 |
継続 |
アルパインサーマシェルジャケット |
#1102363 |
GTX 3L |
40D |
全面 |
裏起毛地 |
520g |
\35,000 |
MC |
フレネイパーカ |
M's #1102372 |
GTX 3L |
40D |
全面 |
裏起毛地 |
640g |
\37,800 |
MC |
ディナリジャケット |
#1102374 |
GTX 3L |
40D |
全面 |
裏起毛地 |
660g |
\37,800 |
継続 |
ネージュクルーザージャケット |
#1102347 |
BDT 3L |
12D |
肩部 |
− |
385g |
\21,800 |
MC |
ドリューパーカ |
M's #1102370 |
GTX 2L |
50D |
全面 |
裏地付 |
680g |
\34,200 |
MC |
ドロワットパーカ |
M's #1102367 |
GTX 2L |
50D |
全面 |
中綿入 |
800g |
\34,800 |
継続 |
ミディパーカ |
M's 1102339 |
GTX 2L |
75D |
− |
中綿入 |
775g |
\25,800 |
追加 |
シャルモパーカ |
M's 1102375 |
SHDBR 2L |
70D |
− |
中綿入 |
650g |
\18,800 |
継続 |
フィルストパーカ |
#1102361 |
BDT 3L |
70D |
全面 |
− |
800g |
\26,800 |
追加 |
ストームジャケット |
M's 1102377 |
SHDBR 2L |
40D |
全面 |
中綿入 |
530g |
\17,800 |
注) [素材構成]でGTXはゴアテックス、BDTはブリーズドライテック、SHDBRはスーパーハイドロブリーズを意味する |
ということになる。実はこのうち、フィルストパーカとストームジャケットはスキーやスノーボード用という位置づけのようなのだが、山岳用にも使えそうな仕様なので一覧には載せてみた。エクセロフトの中綿を使用した3モデルは省略している。
というわけで今季のモンベルのアウター、けっこう大きく変わっているのだが、特徴の1つめは大半のモデルが全面ストレッチャブルになったことである。それに伴い、表記も昔懐かしいストレッチャブルゴアテックスに変わっている。また、細かいことだがゴアテックスXCRの表記ではなくなっているしタグも変わっている。アウターだけかと思いきや、春夏からの継続で春夏カタログにはXCRのタグを付けていたレインウエアが、秋冬カタログではXCRではないゴアテックスタグになっているので、XCRの表記が外れたのはモンベル製品全般に及ぶらしい。
ジャパンゴアテックス社のサイトを見ると、ゴアテックス社もXCRの表記はこの秋から使っていないようである。
ま、メーカーの都合、というやつでモノは変わらないのでどうでもいい話なのだが。
さて、昨シーズンまでのモンベルは肩や肘といった部分にのみ伸縮性生地を使っていた(例外は初期型のダイナアクションパーカ)のだが、今季は全面的に伸縮性生地を使う方向になっている。これもそもそも7年前には「ストレッチャブルゴアテックス」という表記は使われており、伸びるゴアテックス生地は実用化されていたわけなのだが、その時は伸縮性生地を全面使用しておきながら(モンベルだけでなくノースフェイスなども同様のウエアを出していた)一度部分使用に"退歩"したように見え、また今頃になってまた全面使用に至ったのかは謎である。技術的には7-8年前には既に完成していたように思うのだが。
まあともあれ、部分使用より全面使用の方が複雑な立体裁断をしなくて済むので軽くなるし、特に腕周りがすっきりするので好ましいのだが。
2つ目の特徴は、裏地に起毛地を使用していることである。3レイヤーモデルはほぼ全モデルが起毛裏地を採用している。
この起毛裏地、最初は「ゴアテックス・ソフトシェル」などと一部で呼ばれているいかがわしいファブリックのことではないか?と疑ったのだが、実物を見ると起毛といっても言われなければすぐにそれとは気づかないほど細かい起毛である。これで保温性が若干向上するということなので冬用アウターとしてはこれで良いのかもしれないが、冬用アウターを夏のレインウエアに転用するといった邪道な使い方はしづらくなってしまった。とりあえず普通の3レイヤー地のモデルも残しておいて欲しかったのに・・・
3つ目。フードの調整方法が変わった。
モンベルのフードは顔周り、頭周囲、前後長の3つを調節できる、いわゆるトライアクスルフードが主体である。これはモンベルだけでなくパタゴニアもノースフェイスも、いわゆる「まともなフード」には装備されている。
で、従来はこの3つの調節ポイントをそれぞれ別のコードで行っていたわけだが、モンベルの新しいフードは1本のコードで顔周りと頭周囲の調節をしてしまおうというものである。その調節コードは後頭部の、従来の頭周囲を調節するコードと同じ位置になっている。このコードを引けば顔周囲の調節もできるんだそうだ。
その結果、操作性は向上するはずである。今まで別々に行っていた操作を1本化するのだから。
また、けっこう重要なことだが、顔の前にコードが露出しなくなった。
顔の前にコードが露出すると、風で煽られて顔を強打したりしてけっこう邪魔なのである。コードロックが凍結して面倒な思いをすることもあるし。
なので昔からここはいろいろ工夫して凝ったことをしていた。一時はコードをループ状にして終端がフリーにならないようにもしていた(私が持っている2001年型のダイナアクションパーカなどがそう)のだが、操作性はあまり良くなかったので廃れてしまったようである。ちなみにパタゴニアはコードをウエアの内側に出す仕様にしている。これはこれでコード終端がウエア外側にまったく出ないので、見た目もスマートだし風で暴れることもないし凍結対策も万全なのだが、その代償として操作性はかなり悪い。
結局、操作性を重視してか終端をブラブラと顔の前にぶら下げる、「いろいろ工夫した挙げ句に、"なんの工夫もしていないように見える"形」に落ち着いていたわけだが、やはり裏ではまだ諦めてなかったのであった。
このフードは、実は2年ほど前に現行のネージュクルーザージャケットが出た時に初めて採用されている。別に大々的にアピールするわけでもなく、アウターの中でもけっこうニッチなモデルでひっそりと新しいことを試している?とか思っていたら、今年の春にレインウエアに採用し、アウターにもほぼ全面採用されて次第である。
あとは「どの程度細やかな調節ができるのか」が問題なのだが、テスト期間も十分とっているし、モンベルとしては自信があるのだろう。
4つ目の特徴。
今季はまともな冬山用アウターとしては初めて、スーパーハイドロブリーズを採用したモデルを出してきた。スキー&スノーボード用のシェルでもストームジャケットとパウダーライトパーカの2モデルがスーパーハイドロブリーズ採用モデルでパウダーステップジャケットとフィルストパーカがブリーズドライテック、ゴアテックスはパウダーホップジャケットという数年間モデルチェンジされずに放置されているモデル1つになってしまっている。
そろそろ脱ゴアテックスを考え始めているのかな?という気がしないでもない。
山岳用アウターも、今まではネージュクルーザージャケットという軽量最優先のモデルしか非ゴアテックスモデルはなかったのだが、シャルモパーカがスーパーハイドロブリーズを採用して新しく出てきた。これ、今まで「入門用」という位置づけで販売されていたミディパーカより、素材の性能はともかく造りは本格的だったりする。なのでそれこそ厳冬期の高山帯とかひたすら深雪のラッセルが続くなどの用途でなければ、このシャルモパーカで十分用は足りるのでは、と思えてくる。透湿性能のテスト結果も悪くなかったし。
そろそろ本格的な冬用アウターにもブリーズドライテックあたりを使った製品を出してみて欲しい。
構成としては、全面的に伸縮生地を使って、フードはモンベル得意の「襟収納式」でない口元を十分覆える深さのもの。ピットジッパーは要らないからポ十分大きなポケットをメッシュ地にしてくれればベンチレーター代わりになるし。左右に1つずつと内ポケットもメッシュで良いから1つ。むろん、ファスナー類は全て止水ジッパーでフラップは省略。
まあ要するに基本的にはアルパインサーマシェルジャケットのブリーズドライテック版みたいな感じになるのだが(裏地は起毛させないで)、これでブブリーズドライテックだと、450gくらいにならないものだろうか。値段は25,000〜27,000くらいで。
出してくれたらとりあえず買います。これがある程度売れたら、ドロワットパーカくらいを残してあとは数年かけて全てブリーズドライテックに置き換えてしまう、という戦略は如何でしょう。
<中綿入りウエア>
ダウンジャケットは、アルチプラノが廃番になった代わりにパーマフロストダウンパーカというモデルが追加されている。
重量などのデータを見ると、おそらく保温性能としては従来のアルチプラノの替わりの位置付けと言って良いと思うのだが、ウインドストッパーが使われていたり最近流行の"シームレス"すなわち糸でなく溶着で生地を接合するという技術が使われていたりで、一応モンベルの最先端モデルということになるようだ。
このウインドストッパーであるが、従来ダウン製品に組み合わされるゴアテックス社の素材といえばゴアドライロフトだったはずである。ウインドストッパーはフリースやソフトシェル素材と組み合わされていたはずだ。
結局、ゴアテックス社の名称変更に伴って、素材名とモデル名を変更しているわけで、それによって従来のウインドストッパーとドライロフトが同じモノだった、ということが判明してしまったのである。ご苦労なことである。
ちなみにダウン製品ではULダウンインナーシリーズがけっこう大変なことになっている。
何が大変って、展開色がやたら増えたのである。そもそもモデルもジャケット、パーカ、ベスト、パンツがメンズとウィメンズ両方に用意され、さらにユニセックスモデルとしてハーフスリーブジャケット、スナップベスト、ニーロングパンツが用意される、つまり全部で11モデルもあるのだ。
この中で最も売れ筋なのはもちろんジャケットなのだが、これはメンズで10色、ウィメンズで8色展開となっている。
まあ確かにモンベルのダウンウエアの中では、このULインナージャケットが夏から冬まで山だけでなく街でも汎用的に着れるし(他の厚手のダウンは富山くんだりの冬では厚くて着れない・・・)、他メーカーとの比較では、この手のモノの中では最も安くて軽い。
本気で商売する気になった、ということなのでしょう。頑張ってください。
<ソフトシェル>
マウンテントレーナーがなくなってしまった。ショックである。良いウエアだったのに。
よく見てみると、ショーラー社の素材を使ったウエアが軒並みなくなっている。カテゴリー違いだがパンツもショーラーダイナミックを使ったモデルがいくつかあったのだが、全てモデルチェンジしてショーラーのロゴがなくなっている。
また、バイサーフェイスストレッチという素材があって、これはモンベルの商標なのだが、表地にショーラー社のドライスキンという素材を使っていると今年の春までは表記されていた。その表記もなくなっている。何かあった?
マウンテントレーナーがなくなったのも、その関連の話なのかな?
で、現在のモンベルのソフトシェルラインアップは、生地が薄く保温性が低い順から、ウルトラライトシェル、ライトシェル、クラッグジャケット、ロッシュジャケット、ノマドジャケット、ノマドパーカ、というラインアップになっている。
当面、「アウターとしての機能も備えた基本中間着用途のウエア」というモンベルのソフトシェルに対する定義付けは変わっていないようである。また、モンベル的にソフトシェルの定義として「ストレッチ性を備えること」というのも外せないようである。
ウルトラライトシェルだけはストレッチ性を持たないが、これはライトシェルの派生モデルなので「ソフトシェル」に分類しているらしい。
中間着としての機能を持たないULウインドジャケットやストレッチウインドジャケット、ウインドブラストシリーズやODパーカなどは、モンベルではソフトシェルに分類していない。別にこれ全部「ソフトシェルです」と言ってもらっても何も違和感はないのだが。
ただ、現在のモンベルのソフトシェルがモデル構成としてはシンプルで選択しやすいのは確かである。
基本的にどのモデルも「ナイロンの表地にフリース素材の裏地」という構成で、そのフリース素材がメッシュ(ライトシェル)、クリマプラス100(クラッグジャケット)、クリマブロック(ロッシュジャケット)、クリマプラス200(ノマド)というように保温性を変えているだけ、というモデル展開である。
この中で春に出たクラッグジャケットは昔のモデル名の復活になるのだが、よく見てみるとマウンテントレーナーにちょっと雰囲気が似ている。
さらに気づいたのだが、自転車用のウエアに以前から「サイクルトレーナー」というモデルがあったのだが、これはマウンテントレーナーと同素材を使って仕様を自転車用に変更したようなモデルだった。このサイクルトレーナーの今季モデルは、クラッグジャケットと同じクリマプラス100なのである。
ということは、クラッグジャケットはマウンテントレーナーの後継モデル、という位置付けなのだろうか。保温性はかなり低めの設定のようなので、確かにに使用状況はマウンテントレーナーと被りそうである。
それから基本的に「アウターの機能も持たせた中間着」がモンベルのソフトシェルの定義とはいえ、その中でかなりアウターに振った製品も出てきた。今季新しく出たノマドパーカ(M's #1106384 , W's
#1106385)がそうである。
フードが付いているという時点で「アウター寄り」なのであるが、そのフードと脇、裾といった部分がスーパーハイドロブリーズ生地で補強されている。パタゴニアのスキー用のソフトシェルがたいていこのようなハードシェルとのハイブリッド構造である。
ただ、ハイブリッドにするならザックの荷重がかかる肩は外しちゃダメだろ、とか脇は逆に透湿性の良いソフトシェル素材の方が良いのでは、とやや疑問を感じる点はいくつかある。でもちょっと面白そうである。
けっこう厚手の生地のようなので、アンダー次第ではかなり気温が低い状況まで、アンダーとこのウエアの2つだけで行けそうである。というより下手な状況だと暑いような気が・・・
どちらかといえばスキー用途っぽい造りなのだが(袖にポケットが付いていたり)、冬のハイキングなどにも面白そうなウエアである。
その他はパンツが大幅にモデルチェンジされたくらいで大きな変更はない様子。