2005年冬パタゴニアの傾向と対策
日本ではとにかくパタゴニアは「高い」というイメージが定着している。
まあ確かに決して安くはないのだけど、高いだけではない独特のムードを持ったメーカーである。素材の多くを自社開発しているのが大きいのだろう。
いろいろ調べていて面白いことに気づいたのだが、パタゴニアは本国アメリカでは決して「バカ高い」というほど高くはないのである。
日本では\65,100円という法外な値段で得られているシュート・トゥ・スリル・ジャケットはアメリカでは399ドル、同じく日本で\36,750円のディメンション・ジャケットはアメリカでは260ドルである。確かに高いが法外というほどではない。これより高い値付けのメーカー、ブランドはいくらでもある。案外リーズナブルなんである。
話が横道に逸れるが、面白いのはモンベルである。日本ではとってもリーズナブルな貧乏人や学生の味方であるモンベルであるが、アメリカでは意外に値付けが高い。
例えば、日本で\16,800円のストームクルーザージャケットは、アメリカではなんと269ドル、現在のレートだと実に31,000円を超える。ほとんど倍である。
他にも例えばピークシェル(\17,800)が198ドルというのはまだ内外格差が小さい方で、日本で\19,110円のトレントフライヤーは、アメリカではなんと289ドルである。
冬用アウターは、ダイナアクション、ドロワット、フレネイといったモデルが359ドル、日本円にするとだいたい4万円ちょいといったあたりに統一されている。またソフトシェルではマウンテントレーナー(\14,000円)は190ドルである。
ウエア以外だと、ダウンのシュラフは日本で\23,800円のULスーパーストレッチダウンがアメリカでは245ドル。
まあ要するに、アメリカでのモンベルはパタゴニアやノース、アークテリクスといったメーカーと正面からぶつかる価格帯で勝負しているのである。まあモノは十分対抗できる品質はあると思うのだが、果たして勝負できているのだろうか?ちなみにアークテリクスのシータARジャケットは、日本だと7万円もするがアメリカでは450ドル、約52,000円ほどである。それでも法外に高いと思うが、アメリカモンベルのディナリジャケットは399ドルなんである。良い勝負だぞ、値段は。
まあこの際アークはどうでもいいのだが、おそらく日本でのパタゴニアとアメリカでのパタゴニアは、少しイメージが違うような気がする。
ちなみにノースも日本では妙に高いというイメージだが、アメリカ本国ではそれほどでもない。日本じゃ6万円もするAMA
ダブラム・ストレッチ・インフュージョン・ジャケットも、アメリカじゃたったの379ドルである。まあ要するにこの日本の価格設定はハッタリということなのだろう。
アークは少し高いが、後はノースもパタゴニアもマウンテンハードウエアも、だいたい価格帯は同じである。ついでにアメリカモンベルもこの同じ価格帯で勝負しているように見える。
さて、そうやって徐々に金銭感覚がずれてきた目で見ると、パタゴニアの値段もリーズナブルに見えてきてしまうから困ってしまう。
パタゴニアは多くの素材を自社開発しているメーカーで、その素材感が独特の製品が多い。フリースはポーラテックを使ったモデルも多く出しているが、シンチラのフリースもたくさん製品化していて、それも1万円台半ばという「高けぇ〜」と思いながらも買えない額ではないという絶妙な価格設定をしていたりする。
また、ハードシェルでもゴアテックスはほとんどお付き合い程度に1モデルしかラインアップせず、主力製品は全て自社開発のH2NOバリアーなる素材を使っている。それがどういう代物なのか、技術的なことはカタログにもwebにも書かれていないのでよく判らないのだが。
技術的な情報がまるでないかといえばそうでもなく、「内側に3Dポリエステル・ニットを貼り合わせた、ドビー織りの7.8オンス・175x150デニール・ストレッチ織りポリエステル」なんて具合に使用素材等の情報は詳細な方である。
ま、「Apex Universal Fablic」なんて訳のわからない表記で煙に巻こうとするどこぞのメーカーとははっきり違う。
でも、モンベルのカタログのように細かいところまで分析の対象にできるほどではないんだな。
かといってノースのようにツッコミの対象かというとそれも違う。
ところどころ挿入される「読み物」がけっこう面白いのでそれを楽しむのもあるが、つまりはパタゴニアのカタログは、載っている高価なジャケットを「欲しいなぁ〜」
と指をくわえながら見るカタログである。
この2005年シーズンの冬、パタゴニアはかなり大がかりなモデルチェンジを実行している。
それはCSSという縫い目なしで生地を接合する技術を取り入れて、多くのモデルにそれを投入したからのようだ。縫い目をなくす、すなわち糸をなくすことによって耐摩耗性と耐水性が向上し、着心地がしなやかになって収納もコンパクトになるんだとか。
他のメーカーもカフやフラップを溶着して縫い目をなくすという技術にはトライしているが、それをウエア全体に適用したのはパタゴニアが初めてではないか。
ただパタゴニア側としては、このシステムによって機能だけでなくウエアの品質感が向上することに自信があるらしい。webサイトのズーム機能を使って見てくれ、みたいなことが書いてあるのだが、ズームしてもこれはよく判らない。実物を見なければ判らないようである。
確かにwebやカタログの写真では、パタゴニアのウエアが持っている独特の雰囲気はよく判らないのである。ショップで実物を手に取ると「グラッ」
とすることが多い。罪なメーカーである。
CSSシステムはハードシェル、ソフトシェルの両方で展開されている。いずれはシェルの全モデルに採用されるのだろう。
ちなみにパタゴニアのシェルは、大きくスキーやスノーボード用(エッジ)とアルパイン用に分類されている。
そしてそのそれぞれにハードシェルとソフトシェルがラインアップされるという構成になっている。
2005年冬のカタログだと、エッジはハード、ソフトそれぞれに4モデル、アルパインはそれぞれ7モデルずつの展開になっている。前述したようにゴアテックス採用モデルはエッジに1モデル設定されているだけで、他は全てパタゴニアオリジナル素材を使用している。
パタゴニアはハードシェルには「防水性ハードシェル」、ソフトシェルには「透湿性ソフトシェル」という枕詞を用いていて、つまりハードとソフトを「防水性と透湿性」でトレードオフさせている、ということを意味する。なのでゴアテックス®ソフトシェルなどというゲテもの は間違っても使うまい。
フリースでの新製品でグラニュラーというのがある。R1とR2に設定されているモデルなのだが、不思議なことに両方とも同じ値段である。
フリースの表面をハードコーティングしているらしいくらいのことしかカタログからは判らない。ポーラテックのパワーシールドのような感じなのだろうか?実物を見てみないと何とも言えない。
ちなみにパタゴニアのレギュレーターフリースの方は、薄手の順にR1〜R4までに分類されていて判りやすい。シェルと合わせて、アウトドア用途のウエアとして、非常に選びやすいモデル構成&カタログの構成になっている。カタログ後半のシンチラフリースやカシミアセーターあたりになってくると、まあアパレルのカタログなんてこんなもんだろうという感じになってくるのだが、このカタログ前半の機能性はさすがである。
ちなみに数年前、キムタクがテレビの番組で槍ヶ岳に登ったとき、パタゴニアのDASパーカを着ていたらしい。
そんなわけでこのDASパーカ、ヤフオクでむちゃくちゃな値段が付いていることが多い。定価は昔も今も4万円といったところなのだが、ヤフオクでは6万円超えることも。
なんにしても、夏の槍ヶ岳でDASパーカなんて、さぞ暑かっただろうと気の毒に思う。
1月に東京のさかいやスポーツでディメンションジャケットを購入した際、グラニュラージャケットの実物を見る機会があった。
なんというか不思議な素材感である。
フリースなのだが表面にハードコーティングが施されていて耐風性と耐水性、耐摩耗性を向上させている、ということである。なんだ、ソフトシェルじゃないかといえばそのとおりで、メーカーによってはこの手のウエアをソフトシェルと称している。
成り立ちやウエアとしての性質が一番近いのは、ポーラーテックのパワーシールドだと思う。そういやほんの2年ほど前まで、コアスキンジャケット
はパワーシールドを使っていたし、その時はパタゴニアもこれはソフトシェルだと言っていた。
しかし手に取ったときに感じる素材感はパワーシールドとはずいぶん違う。ちょっと他に例えようがない独特の素材感である。
確かに耐風性もありそうだし、R1などは薄手なので保温性も過剰でなく、夏山でも高山帯なら「山シャツ替わり」に使えるソフトシェルとして活躍しそうである。
でも高い。R1もR2も同じ\30,450である。せめてもう2割安けりゃなぁ〜。
モデル名 |
Style No. |
重量 |
その他 |
価格 |
|
ディメンション・ジャケット |
M's 83683 |
709g |
CSS |
\36,750 |
|
シュート・トゥ・スリル・ジャケット |
M's 29350 |
907gg |
|
\65,100 |
|
DASパーカ |
84096 |
822g |
|
\40,950 |
|
R2グラニュラー・ジャケット |
M's 29700 |
610g |
|
\30,450 |
|
R1グラニュラー・ジャケット |
M's 41100 |
666g |
|
\30,450 |
|
注)平成17年2月15日より、パタゴニアが商品リンクの提供を一時中止したので、以前の画像をクリックするとダイレクトに該当商品のページを表示する機能が使用できなくなりました。
表の中のアイコンをクリックしてパタゴニアのオンラインショップのページを表示し、Style No.を入力すると該当商品を表示することが出来ます。