大東新道A〜B沢出合間ルート詳細

 まず最初に断っておくが、このルートの説明は平成15年9月26日時点でのものである。(平成17年9月に補足追加)
 もう今シーズンも終わりなので、来シーズン以降高天原を目指す人の参考になればと思うが、ルートの状況は一度の増水であっけなく変わり得るので、あくまで参考程度のものである。もちろんこの記事を鵜呑みにして行った結果、事故を起こしても私は一切責任を負えない。
 薬師沢小屋から高天原に至る大東新道は、薬師沢小屋〜B沢出合までの区間が黒部川本流の河原沿いのルートであり、本来河原のルートなんて道はあってなきがごとし、その場その場で適当に歩けるところを歩いていくのが基本なのだが、黒部川本流はA沢より下流で幅を狭め、より一層的確なルートファインディングが要求される。B沢より下流は一般登山道はなく、完全に沢登りの世界である。
 特にこのA沢付近では、本流が廊下状を呈してくるのとA沢の崩壊により、ルートの変遷が著しい。過去に何本ものルートが築かれては廃されている場所でもある。
 よって、現在でのルート詳細は、来シーズンも同様であるとは限らないし、シーズン中にも増水やA沢の崩壊などによって頻繁に変わるかもしれない。
 従って、大東新道を高天原方面に歩く際は、必ず薬師沢小屋でルートの状況を確認して向かって欲しい。

 

A沢出合付近から下流方向を望む

A沢出合い付近から黒部川本流下流方向を望む

 さて、上の写真がA沢出合い付近より下流、B沢出合い方面を眺めた写真である。
 現在、このA〜B沢出合のルートは2本ある。1本はA沢を少し遡り、尾根に取り付いて大きく高巻いてB沢の上流に出るルート(大高巻きルート)、1本は写真の赤点線のように水線通しにB沢出合へ向かうルートである。この赤点線ルートを、写真で見るとおり赤い壁伝いに行くルートなので赤壁ルートと呼ぶことにする。
 安全なのは大高巻きルートの方であるが、130mのアップダウンになるので体力時間的に辛い。

H17.9.3追加

 この大高巻きルートは大雨による崩壊のため、たった1年で通行不可能になった。
 こんなことなら1回くらい歩いておけばよかった・・・

大東新道A-B沢間2005

大東新道A-B沢間のルート全容

 2005年7月のA-B沢間。
 ずいぶん河原の石がなくなってすっきりしてしまった。
 ルートは概ね赤線の通りである。

 過去は青点線のように中州に渡って下流へ向かうルートが一般的であった。が、現在ではこのルートは通行不可能である。その理由は水量が多く、中州と右岸の行き来ができないためである。
 なぜか?
 昔、といってもほんのつい最近まで、中州の右岸側はA沢が流れていたからである。
 写真の撮影位置は既にA沢と本流の合流地点より下で、右に崩壊したA沢が押し出した土砂の壁が見えている。ちょっと前までA沢はこの撮影地点では未だ本流と合流しておらず、写真の一番奥あたりでようやく本流と合流していた。そのため中州の右岸側は水量が少なく、飛び石伝いに容易に中州に渡ることができた。
 だが、現在では本流が中州の右岸側を流れているため、水量が多く膝上の徒渉をしなければ中州に渡ることができない。もちろん沢登り装備のパーティーは徒渉して中州に渡るのが最も手っ取り早いルートになるのだが、それは一般登山道ではないのは言うまでもない。
 ちなみに20年ほど前では写真の赤壁のすぐ上をコンパクトに高巻くルートも存在した。しかしそのルートは写真でも判るとおり崩落によって消失している。傾斜も強く安定しないルートだったので、このルートが復活することはないかもしれない。

 この地点は黒部川本流が大きく左に屈曲する場所なので、この中州の右岸側を本流が通るのはごく当たり前の話で、むしろ今まで長い間本流が中州の左岸側を通っていたことの方が不思議である。
 どうもそれはA沢の崩壊が激しく、常に土砂を供給して本流が中州の右岸側に来ることを阻止していたかららしい。
 よって近い将来、再び中州の右岸側の水量が減り、中州経由でB沢に行くことができるようになる可能性も高い、と思う。
 とりあえずここでは、山小屋関係者によって築かれた赤壁ルートを説明する。

写真1

写真1 外傾バンドのトラバース

 写真1は一番上の写真中の@地点のものである(以下同じ)。
 最初にやや外傾したバンドの上をトラバースする。岩が滑りやすいので注意が必要である。この場所に、横方向の固定ロープなどが欲しくなる人も多いと思うが、それに頼ってしまうと帰って滑りやすくなるので、固定ロープはむしろない方が良い、と私は思う。

H17.9.3追加

 この写真でカミさんが歩いている場所の奥が崩壊のため狭くなっている。
 1歩だけ、ちょっと微妙なトラバースをすることになるが、壁の灌木にシュリンゲでホールドが作られているので、それを掴めば楽に行ける。

写真2

写真2 トラ縄でクライムダウン

 最初のバンドの端をトラ縄に捕まって河原に降りる。ロープの視点の強度を確認すること。

H17.9.3追加

 この着地点は増水のため掘れてしまい、深い淵になってしまった。
 そのため下降点が3mほど下流に変更されている。
 写真の奥に見える赤ペンキ印が見える棚あたりが今年の下降点。
 ただ、現在のところロープなどはなく、クライムダウンになる。

 

写真3

写真3 河原歩き

 2つ目の赤壁との間に短い河原歩きがある。特に問題はない場所。

 

写真4

写真4 2つ目の赤壁に登る

 2つ目の赤壁に取り付く。
 ここはザイルが固定されているが、来シーズンには鎖等に付け替えられる可能性あり(写真2のトラ縄も同様)。
 が、そもそも来シーズン同じルートであるとは限らないが・・・
 やはり岩が滑りやすいので慎重さが必要。
 登った後は赤丸印に従い、バンドを写真で見る奥の位置に行く。

H17.9.3追加

 ここももっと下流側に変更されている。
 水際を数mへつって、ちょうどこの赤壁のスカイラインの部分を登る。
 ロープが補助として架けられているが、ロープの通り真っ直ぐ登ろうとするとかなり難しい。途中から左に回り込むように登ると、ほとんどロープを持たずに抜けられる。この時、ザックが重かったりフィッティングが悪かったりすると、振られてちょっと気持ち悪い。

大東新道A-B沢間

大東新道A-B沢間 上の写真4の地点

 上の写真4の地点は赤丸で囲んである場所。今はペンキで×印がマーキングしてある。
 現在は人が登っている場所。
 矢印のところから向こう側にチェーン梯子で下降する。
 写真では判りにくいが、そこから向こう側は垂壁になっている。

 

写真5のa 写真5のb

写真5のa チェーンハシゴを降りる

写真5のb 同位置を下流側から

 最後に垂壁をチェーンハシゴで河原に降りる。
 といっても、この日の水量では、降りた先は水の中だった。足首くらいの水なので、ゴアテックスの登山靴などだと、辛うじて靴の中は濡らさずに済む程度。
 当然水量によってはまったく靴を濡らさずに行ける時もあるだろうし、または膝下まで水に浸かってしまう時もあるだろう。
 降りた先は流れの死んでいる場所なので、たとえ少々深くなったとしても危険度は低いはずである。・・・流れが変わらなければ、だが。

 ここを過ぎれば特に嫌らしい場所もなく、河原を塞いでいる大岩をハシゴの上り下りで超えればB沢出合である。(このハシゴは20年前からある)
 ハシゴの手前に、水量が多い時に小さく高巻く道が付けられているが、そもそもその高巻き道を使わなければならないような水量の時にはそこまで来れない、と思うのだが・・・

H17.9.3追加

 ここも下降点が深さ2mほどの淵になってしまった。
 なのでこのチェーン梯子も下流側に付け替えられている。
 少しだけハングした岩場に架けられているので、ほんの2段ほどだが空中に浮いてしまい、荷物が重かったりすると振られる。
 重荷の場合や腕力に自信がない場合は、補助ロープで荷物だけ先に下ろし、空身で降りた方が良いかも。

 総じて各ポイントとも少し難しくなった。
 剱や穂高などで岩稜歩きの経験がある人にとってはなんでもない場所ではあるが、全体的に岩が濡れているので慎重に行動した方が良いと思う。
 また、増水時には通過不可能。(ここが通れなくなる水量なら薬師沢の小屋に行くこともできるかどうか・・・)

 

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