中高年登山者について

 最近、中高年の事故が多いそうな。
 まあその要因や対策についてはあちこちで議論されているし、その議論の内容は20年前から一歩も進歩していないような印象を強く受けるけれども、別に私はそのことに文句を言う立場にないので触れない。まあ敢えてひとつだけ言わせてもらえば、心筋梗塞などの病気による事故例が多いことについて、「身体に不安がある人は山に登るな」という論調があるのは悲しい。
 私ももうすぐ「中高年」と呼ばれる年齢に突入するわけで、ついでに言うと「若い頃バリバリやっていて少しばかりのブランクを経て再び登り始めた人」である。一番危ないパターンである。もひとつついでに言うと、血圧が少々高い。まさにハイリスクグループだなぁ。
 まあブランク云々については体力技術共に現役時代に遠く及ばないことは自覚しているし、自覚すべきだろう。
 だが、病気については、「中高年」と呼ばれる年代になってなおかつ身体のどこにも故障を抱えていない人なんているのか?と思う。
 山で心筋梗塞を発症して不幸にも亡くなってしまった人の中には、確かに自分の身体の状態についての過信や無茶があって「なるべくしてなった」人もいるだろうけど、そうではなく「思いがけず」不幸な目に遭った人も大勢いるはずだと思う。その「思いがけず」は予測できたはずという論調を厳しくしていけば、40代以上の人で山に登っていい人なんてほとんどいなくなると思うが。
 そういう論調を山岳警備隊の人が言っているのを読んだりすると、なんだか非常に悲しい。
 そう言わざるを得ない状況も確かにあることはギリギリ理解できても、どこかで「ああ、この人達もしょせん警察官」と思ってしまう。交通事故の原因のほぼ全てを「スピードの出し過ぎとハンドル操作の誤り」が原因によるものと分類してしまって、「事故が減らないのはドライバーのマナーが向上しないから」と片づけるあの論調と、どこか通じる体質を感じる、と言ったら言い過ぎかな?

 むろん、警備隊にはお世話になったこともあるし現場に居合わせて協力したこともある。見も知らない赤の他人のために自分の命を賭ける、ということを純然たる善意ではなしに仕事としてやることについて限りない尊敬の念を持っている。(純然たる善意であればけっこう当たり前にできてしまう)
 だからこそ悲しいわけで。言ってるのが現場の遭難救助に関わっている人でなければ「だったらあんたは歳食ったらもう山に行くんじゃねーぞ」と思うだけだったりする。

 やっぱ日本って年寄りには優しくない国なんだな、と思ったりする。

 

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