私は関西出身なのでタコ焼きには非常にうるさい。幼少の頃より、1〜2ヶ月に1度は「タコ焼きだけで夕食を済ませる」日があるほどで、タコ焼き用の鉄板は消火器よりも重要な家庭の必需品となっている(誇張)。
子供の頃、母親の実家の大阪に遊びに行くと、歩いて5分ほどの所にタコ焼きを焼いている駄菓子屋が4〜5軒もあって、しかもそれぞれの店で味がかなり違った。醤油味とソース味とか。
現在、我家で焼いているタコ焼きは、つけ汁で食べるし具も少ないので、どちらかというと明石焼に少し近いものがある。
具と言えば、これだけは声を大にして言いたいのだがキャベツを入れるのは許せない!
なぜ許せないのかと言えば、これはキャベツを入れないタコ焼きを一度食べてみれば判る。
というわけで、池上流のタコ焼きレシピである。
1.材料
・鉄板と千枚通し、カセットコンロ
・生地
小麦粉、卵、本だし、煮干粉、醤油
卵は多め(写真の量で6個)に入れると、焼いたときに固まるので扱いやすい。
醤油は生地に少し色が付くくらい。
小麦粉の量は少ない(薄い)方が美味いのだが、あまり薄いと固まらなくて焼きにくいので、焼きながら調整する。
・つけ汁
酒、本だし、塩(少量)、醤油、味の素、三つ葉
汁はかなり薄めに作る。三つ葉は重要で、三つ葉がなければタコ焼きは作るなというくらいである。
2.プロトコル
・まず、鉄板を加熱して油を引く。
・次に、天カスを入れる(下写真)。
・さらに生地を良くかき混ぜて流し込み、タコ、ネギを入れる(下写真)。
天カスは必ず最初に入れないと焦付いて大変な目に遭う。
・千枚通しで回転させる(下写真)。
だいたい、上の写真のように周囲がきつね色に変ってきたあたりが、回転させるのにちょうど良い頃合である。
回転は、左の写真のように千枚通しを使うが、これがけっこう難しく、ここで挫折する人が非常に多い。もんじゃ焼より簡単だと思うのだが。
コツは、千枚通しの先端を穴の外壁に押しつけて、焼けて堅くなったタコ焼きを「はがす」ように回すことである。手首のスナップが重要である。
何回か回すとタコ焼きの方から勝手にくるりと回ってひっくり返ってくれる。
どれだけ生地の調合が上手くても、ここで失敗すると犬のエサにしかならないので、修行あるのみである。
なお、失敗して見るも無惨な状態になってしまっても、後で上手く焼けた場所に移動させてじっくり育てれば、けっこう食える状態に復活してくれるので、短気を起してはいけない。
・焼けたら食う(右下と下の写真)
回転は一度だけでなく、何回か行う。
一般的には、最初は180度回転させるが、2回目以降は90度ずつ回転させ、「継目」を焼いて補強していく。
上手に焼けたら右下の写真のように綺麗な球形になる。が、これを皿に取ってしばらくして冷えてきても球形を保っているようだと、これは固すぎる。
固すぎると、中にタコの味が充分染みず、また粉っぽくなってしまうので、どうも美味くない。
焼いたときは球形でも、冷えるとヘナヘナと萎むくらいがちょうど良いのだ。
さて、食べるときは下の写真のようにつけ汁に浸けて食べる。
たくさん食べると当然、汁はタコ焼きの残骸でドロドロになってしまうのだが、最後にこれをズルズルと飲干すのが正しい食べ方である。
3.注意事項
焼く人間が複数いないと、1人が焼いてばかりになってしまい、食べることができなくなってしまうので人間関係が非常にギスギスする。焼き手を育成する場合、最も障壁となるのが千枚通しを使って回転させることなので、ここはひとつ根気よく教えるべし。
また、次々に焼いているうちに自分の世界に入り込んでしまうことが良くあるので、ちゃんとローテーションを組んで交代すること。せっかく別のメニューがあっても、気が付いたらなくなっていたと言うことが多々あり、これも人間関係をギスギスさせる原因になってしまう。
さらに、黙々と焼いて黙々と食べていると、いつのまにかとんでもない量を食べている、ということも非常に頻繁にあるので(というか、ほとんど毎回)、くれぐれも食べ過ぎには注意することが大事である。