フェリー旅についての考察


 北海道ツーリングに行くにはどうしたって海を渡らねばならないのだが、学生時代はフェリー代がもったいないからと青森まで自走して現在の津軽海峡フェリー(当時は異なる会社名だったし、そもそもまだ青函連絡船と呼んでいる人も多かった)で函館に渡った。
 …嵐の中

 そして雨の北海道を走りながらふと思った。

 …これ、フェリーで北海道に来た方が安かったんじゃね?

 なんせ青森まで3日もかかったのだ。高速もまだ青森まで通ってなかったし、まあそもそも高速を走るつもりなら素直にフェリーに乗るよね。
 3日間のガソリン代と部分的に走った高速代、そして飲食費を考えれば、フェリー代の方が安く北海道に渡れたのは確実なのだ。宿泊費は野宿だったのでかかっていないのだが、それでもだ。

 まあそんなわけで、帰りは素直にフェリーで帰ってきたわけだが、今のようにネットなどない時代のこと、港も航路も知らずに北海道に来たわけで、いろんなところで聞きながらようやく「苫小牧から本州に渡るフェリーが出ている」という情報を得た次第。
 でもね、苫小牧から出ていたのは茨城県の大洗に行くフェリーだったのよ。大洗から岐阜までどんだけかかるんだ。
 小樽から敦賀に行くフェリーが出ていると知ったのは帰ってきてからだった。

 で、今は富山に住んでいるのでフェリーで北海道に渡るとなると、フェリーは新日本海フェリー一択の状況なのな。それも新潟〜小樽便しか選択肢はない。
 でも、いろいろ調べていたら、太平洋側はいろんなフェリー会社がいろんな航路で船を走らせているのだ。さすが海洋国日本。

 というわけで、ちょっと現在(2023年)のフェリー事情をまとめてみた。

 

<北海道編>

 

 まずは北海道編から。


フェリー会社 出港 時刻 到着港 時刻 所要時間 運賃* 備 考
新日本海フェリー 新潟 12:00 小樽 翌 4:30 約16.5時間 17,600円
敦賀 23:55 苫小牧 翌 20:30 約20.5時間 21,900円
舞鶴 23:50 小樽 翌 20:45 約19時間 21,900円
太平洋フェリー 名古屋 19:00 苫小牧 翌々 11:00 約40時間 27,400円 仙台に寄港
商船三井フェリー 大洗 19:45 苫小牧 翌 13:30 約18時間 25,000円 夕方便
大洗 1:45 苫小牧 当 19:45 約18時間 25,000円 深夜便

 注)運賃は標準的な「交互式2段ベッド」の料金と250ccクラスのオートバイの料金の合算で算出。


 さて、まあ何だかんだ言っても、関西以西からは新日本海フェリー、関東からは商船三井フェリーで北海道入りすることがほとんどなんだろうけど、調べてみて思ったのは、関西方面からなら太平洋フェリーも意外に良いかも、ということだ。

 太平洋フェリーは仙台に寄港することもあって40時間、船内で2泊と国内のフェリーでは最長に近い乗船時間で、もちろん料金もその分高いのだが、よーく考えると、新日本海フェリーと実質的にされほど差はない、どころかもしかしたら却って安く北海道入りできるのでは?と思う。

 というのは、例えば1日目にフェリーに乗船するとして、新日本海フェリーであれば敦賀発でも舞鶴発でも、北海道に到着するのは2日目の午後8時半以降ということになる。この時間に着いてもそれ以上の行動はできず、小樽なり苫小牧でホテルに泊まるしかなかろう。
 つまり、行動を開始できるのは3日目の朝から、ということになる。

 これが太平洋フェリーだと、苫小牧到着は3日目の午前11時。当然、即行動開始できる。
 つまり北海道で行動を開始できる時間差は実質的に半日ほど、ということに。

 そして北海道フェリーと太平洋フェリーの値段差は5,500円だが、これ小樽や苫小牧で1泊することで同等になるか、下手すると逆転するのでは?

 あとは敦賀または小樽、名古屋まで走る高速代やガソリン代、そして時間の差がどうなるか、だけど、これは居住地によって違うので何とも言えん。にしても太平洋フェリーは十分検討してみる価値はありそうである。

 それに太平洋フェリー、けっこう面白いんだよね。
 船内2泊という長丁場の航路のためか、船内施設がけっこう凝っているというか。
 まず個室系の部屋がかなり充実している。
 スイートルーム系が3種で計4室、以下特等、一等と個室があるのだが、個室で一番部屋数が多いのが特等というのが他のフェリーとちょっと違うところ。
 惜しむらくはシングルの個室が設定されていないことだが。
 最近は大部屋形式の部屋でも1人分のスペースを個室形態に仕切り、鍵まで付いている「実質的に個室」的な部屋を設定するフェリーが増えているし(新日本海フェリーならツーリストSといった)、九州航路だと普通にシングルの個室を設定するフェリーもあるのだが、太平洋フェリーではB寝台の上にS寝台があるだけ。
 このS寝台はB寝台が2段ベッドなのに対し、1段ベッドとスペース的には少しゆったりしているのだけど、プライベートスペースはベッドしかないのは同じだし、そのプライベートスペースに鍵がかかるわけでもない。
 船内で2泊するので、簡易的でも良いので個室形態の部屋の設定があれば、ソロライダーにも使いやすいと思うのだけどね。

 太平洋フェリーは船内設備にも凝っていて、本格的なライブができるほどのシアターがあったりする。そこでピアノやバイオリン等の演奏や映画の上映などもしているようだ。
 なんかフェリーというよりクルーズ船っぽいな。まあそりゃ船内2泊となると、そのくらいないと退屈で時間を持て余しそうな気もするけど(笑)

 そして太平洋フェリーは3隻の船を運用しているのだけど、基本的な構造は同じながら、内装はっきりとコンセプトを分けている。

 ………まあね、北海道に向かうのに純日本風の「きそ」という名前の船に乗って、その船の内装が南国風、というのはどうなのよ?と思わないでもないのよ(笑)
 ちなみに「いしかり」はエーゲ海、「きたかみ」は宇宙がテーマなんだと。


 もうひとつ。商船三井フェリーと新日本海フェリーの選択肢について。

 関東在住の人は北海道に行く場合、商船三井フェリーしか選択肢はない、と思っているかもしれないが、よくよく調べてみると案外そうでもないのではないか?
 表での価格差は7,600円。まあ関東の人なら新潟まで走る経費を考えたら軽く逆転する差額なんだけど。

 でもここの表にはすべて期間A、すなわちいわゆる「閑散期」の価格を表記しているのだけど、商船三井フェリーは実質的に「北海道ツーリング適期」に期間Aになることはほとんどないのだ。
 商船三井フェリーで期間Aになるのは5月までと11月からで、6〜9月は期間B以上になる。9月でもシルバーウイークにかかる週末は期間Cまで高くなる。
 ちなみに期間Cだと大洗〜苫小牧の運賃は、表と同じコンフォート(交互式2段ベッド)で16,000円、オートバイが12,600円なので、計28,600円。新日本海フェリーは9月以降はすべて期間Aなので、その差は11,000円まで広がる。これなら居住地にもよるが、高速代+ガソリン代は出そうな差になる。

 さらに。
 新日本海フェリーでは秋の期間、秋旅GoGo割という割引をやっていて、個室利用、1か月前までの予約、そして予約の変更不可(予約が成立した瞬間にキャンセル料が設定される)という縛りはあるが、運賃(オートバイ除く)に2割もの割引が適用可能となる。
 つまり、新日本海フェリーの新潟〜小樽便で、2人で個室(ステートAインサイド)を取った場合、15,900×0.8で12,720円、+オートバイが7,700円で1人あたり20,420円で行けてしまう。これが商船三井フェリーだと、期間Cを避けても期間Bは免れないので、スーペリアインサイドで20,500円+オートバイが12,600円なので、1人当たり33,100円。その差は12,680円、2人計で25,320円の差が生じる。
 これがシルバーウイーク前後の期間Cになると、商船三井フェリーは22,900円+12,600円になるので、計35,500円。その差は15,080円まで広がる。

 もうひとつ。
 ツインのステートAを1人で取ると、普通は定員に満たない人数の半額を貸切料として取られるが、新日本海フェリーでは期間Aの間は貸切料は生じない。

 というわけで、割引情報等を確認しておく必要はあるが、やり方によっては関東から新潟まで移動して新日本海フェリーに乗る、という選択肢も場合によってはありなのでは?
 まあ新潟を正午に出港なので、午前10時頃までには新潟港に着いている必要があるわけで、なかなかの早朝出発が必要にはなるだろうけど(笑)
 でも小樽には早朝4時半に到着するので、到着直後から1日フルに行動でき、なかなか使い勝手が良いフェリーなんだけどね。その日のうちに稚内まで走ることもぜんぜん楽勝でしょ。



<北海道 自走編>

 

 さて、次は自走編なのだ。
 北海道ツーリングにおける「自走」とは、青森まで自走することを言うわけだが、当然これまで青森〜函館の津軽海峡フェリーしか頭になかった。
 でも調べてみたら、他にも選択肢があるじゃないか、っていう話である。


フェリー会社
出港
時刻
到着港
時刻
所要時間 運賃* 備 考
新日本海フェリー 秋田 6:15 苫小牧 当 16:45 約10.5時間 10,900円 敦賀からの寄港便
太平洋フェリー 仙台 19:40 苫小牧 翌 11:00 約15時間 19,100円 名古屋からの寄港便
津軽海峡フェリー 青森
函館
約4時間 6,810円 1日8便
大間
函館
約1.5時間 4,870円 1日2便
シルバーフェリー 八戸
苫小牧
約7時間 14,000円 1日4便

 注)運賃は新日本海フェリーと太平洋フェリーは北海道編と同じ、その他は最も安価な「大部屋」で算出。

 

 青森から北海道というと、中〜短距離フェリーということになるのだけど、定義を広げて「東北から北海道に渡るフェリー」ということにして長距離フェリーの寄港便も表に入れてみた。でないと表が寂しくなるので(笑)

 で、調べてみると、八戸〜苫小牧便を運用しているシルバーフェリー、これ良いんじゃないか?

 値段は当然7,000円以上高くなるのだけど、函館から苫小牧まで250kmもあることを考えると、この差額で苫小牧に上陸できるのはメリットの方が大きいように思える。
 シルバーフェリーは4隻の船を五月雨式に運航して1日4便を就航させているのだけど、運航ダイヤは下の表のようになっている。


航 路 船舶 出港時刻 到着時刻
八戸〜苫小牧 シルバープリンセス 8:45 16:00
シルバーティアラ 13:00 20:15
シルバーブリーズ 17:30 1:30
シルバーエイト 22:00 6:00
苫小牧〜八戸 シルバーブリーズ 5:00 13:30

シルバーエイト 9:30 18:00

シルバープリンセス 21:15 4:45

シルバーティアラ 23:59 7:30


 これ、深夜1時半に苫小牧に着いてどうするっての?というのはあるけど、深夜発早朝着の便なんかは使いやすいと思う。
 津軽海峡フェリーで函館に着いても、さらに苫小牧まで250kmを下道で行けばほとんど1日かかるし、高速を使っても半日はかかるわけなので、道南を目的にしない限りは、シルバーフェリーの方が使いやすいと思うのだけど、どうだろう?

 この4隻の船も基本的な構造は同じだが(でもファンネルが1本の船と2本の船があったりして微妙に違う)、内装の色やオブジェなどで船ごとのコンセプトを差別化している。
 部屋の構成もそれぞれ微妙に違うようで、定員が船によって違ったりする。

 その中でシルバーティアラにしか設定されていない「ビューシート」という客席があるのだが、これは船の前方窓の前にカップルシートあるいはソファーベッドみたいな2人掛けシートを設置しているというもので、これはちょっと乗ってみたい。
 しかしこのシルバーティアラ、八戸→苫小牧の時は13:00〜20:15なので良いのだが、復路の苫小牧〜八戸の時は23:59〜7:30の深夜航行なのだ。
 せっかくビューシートを取っても、ほぼ全行程、窓はブラインドで閉まっていて海が見えないではないか(笑)
 まあ入港前にちょっと見えるか(笑)

 一度自走で北海道、行ってみたいな、と思ってたりして(笑)



<九州編>

 

 さて、九州編である。もともとこっちを調べていて北海道編まで話が広がったわけだが(笑)

 九州は学生時代に走ったきりでリターンしてからは足(タイヤ)を踏み入れたことがない地方なので(出張では博多や宮崎、熊本には何度か行ってるけど)、そのうち行きたいとは常々思ってはいる…のだけど、やはり富山からは九州は遠い。
 敦賀あたりから新門司に行くフェリーでも就航してくれないかなぁ。RO-RO船は出てるらしいのだけどね。

 で、学生時代は例によって往復とも自走でシコシコ行ってきたわけだが、これもフェリーを使えば時間も経費も節約できるのでは?
 何より身体が楽だし(笑)


フェリー会社
出港
時刻
到着港
時刻
所要時間 運賃* 備 考
東京九州フェリー 横須賀 23:45 新門司 翌 21:00 約21時間 24,000円
東九フェリー 東京 19:30 新門司 翌々 5:35 約34時間 30,910円 徳島寄港便
阪九フェリー 泉大津 17:30 新門司 翌 6:00 約12.5時間 13,460円
名門大洋フェリー 大阪 17:00 新門司 翌 5:30 約12.5時間 13,830円 1日2便
さんふらわあ 大阪 19:05 別府 翌 6:05 約12時間 20,690円
大阪 17:55 志布志 翌 7:40 約14時間 24,650円
宮崎カーフェリー 神戸 19:10 宮崎 翌 8:40 約14時間 21,720円
 

 注)運賃は標準的な「交互式2段ベッド」の料金と250ccクラスのオートバイの料金の合算で算出。


 さて、関東発の場合は東京九州フェリーの一択状態だろう。
 オーシャン東九フェリーは徳島に寄港するため、船内2泊で34時間という長時間の乗船になるし、値段も高い。
 ただ発着時刻については上の北海道編でもあったが、21時着と翌早朝着では実質的に差はないだろうし、値段の差も東京九州フェリーでは新門司に到着後に付近での宿泊を余儀なくされることを考えれば、実質的に差はない、と思う。
 ただ、東九フェリーの船はカジュアルフェリーというのか、レストランがないのだ。各種自販機と飲食スペースがあるという、いわゆる「オートレストラン」というタイプの船なのだ。
 中距離のシルバーフェリーなどもこのタイプなのだが、東九は船内2泊だぞ…?
 自販機の飯で2泊の長丁場、耐えられるかな…

 ま、関東発は自分的にはあまり関係ないので、まあいいや(笑)

 それより関西発九州行きの便である。
 さすが大阪または神戸から九州に行くフェリーは複数のフェリー会社から多くの便が出ている。さすが瀬戸内海。

 ちなみに大阪〜新門司と並行して神戸〜新門司の船を就航させているフェリー会社も複数あるが、自分的に神戸発はあまり関係ないので表からは省略していたりする(笑)

 阪九と名門大洋フェリーが大阪〜新門司のフェリーを、さんふらわあが大阪〜別府のフェリーを運航しているが、新門司と別府で7,000円の差額をどう評価していいのか、いまいち土地勘がないのでよく分からない。ちなみに新門司から別府までの高速代は2,800円ほど。

 それはそうと、中学の修学旅行で別府から大阪南港のさんふらわあに多分乗ってる。そんな昔から同名の船が就航していたんだ。同じ船名でも船は更新されてるだろうけど。

 九州で面白いのは、北海道だと比較的近い位置にある小樽と苫小牧くらいしかないわけだが、九州の場合は新門司、別府、宮崎、鹿児島と関西と行き来するフェリーの港が多数あることだ。
 つまり、陸路にしろ海路にしろ、北九州から九州入りして南下し、鹿児島まで到達したらフェリーで大阪まで帰る、というコースが可能、ということなのだ。これ、鹿児島から再び北九州に陸路で走る「九州一周」ルートと比較すれば、日程も経費もかなり圧縮できそう。

 というわけで、いつか行きたい九州ツーリング、なんだよねぇ。


 

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