バイク業界 2017年雑感

 

 何やらこの数年はバイク業界、それもアンダー400クラスの市場が活気が出てきたのだそうだ。「第三次オートバイブーム」とまで言う人もいたりする。軽二輪の出荷台数が前年比50%近くアップすりゃ、そりゃブームと言いたくなる気も分かるが…
 まあ、このバイクが売れない現状、年々厳しくなる排ガス規制や騒音規制を考えれば、各メーカー頑張っているのだろう。

 でもなぁ…これでブームというのも寂しいのだが…

 二輪の業界団体が1〜2年前、5年後の二輪の販売台数を100万台を目標にする、と言っていたが、まだまだ実現には遠い数字である。
 各クラスの車種別販売台数ランキングを見ると驚くのだが、250ccクラスで最も売れているYZF-R25/MT-25でも、その販売台数は3,000台に満たないのだ。その他の400ccクラスやオーバー400クラスだと、1,300台も売れればトップセールス。
 もっと驚くのは400ccクラスで、何とトップテンに2桁しか売れていないモデルが入っているのだ。
 そりゃあやってられんよなぁ…

 国別だと、2016年のデータだがインドがなんと1800万台近い市場になっていて、インドネシアも約600万台、ベトナム300万台、etc..と比較して、日本の市場は約40万台。ケタが違う。
 そりゃメーカーも日本市場向けじゃなく、アジア市場優先で作るわけだ。

 ま、そのおかげと言って良いと思うのだけど、250ccクラスが最近元気が良いのは、このクラスがアジアではフラッグシップ的な高級バイクになるから。一度国内向けのバイクはもう開発しない、とケツをまくったヤマハがYZF-R25などという250ccのニューモデルを出したのは、完全にアジア市場のおこぼれだから。アジア様様だよ、まったく。

 そこにいくと、400ccクラスは完全に日本独自のドメスティックなクラスなので、ろくにニューモデルも出てこないし力もあまり入っていないのは仕方ない。ヤマハも320ccあたりでお茶を濁しているし。

 いっそのこと、日本も400ccまで車検なし、にしてしまえば、メーカーも楽だしスーフォア(ホンダのCB400SF)なんてバカ売れするのではなかろうか。

 80〜90年代のバイクブームは、レーサーレプリカブームの弊害ばかりが今では強調されるが、本当に面白い時代だったと思う。

 250ccクラス、それもロードスポーツに限っても、2ストでパラツイン、Vツイン、タンデムツイン、V型3気筒、単気筒、4スでは空冷パラツイン、水冷パラツイン、空冷単気筒、水冷単気筒、90度Vツイン、挟角Vツイン、並列4気筒と、もうありとあらゆる形式のエンジンを持つモデルが揃っていた。大型バイクであるエンジン形式でこのクラスになかったのは、V4と6気筒、並列3気筒くらいしかない。まあ必ずしもこれらのすべてが同時にラインアップされていたわけではないが。
 確かに売れたのは2ストVツインと4スト4気筒ばかりだった、とも言えるが、それはユーザーの問題であって、少なくともメーカーはこれだけの選択肢を用意してくれていたのだ。

 その選択肢が今じゃ…

 2ストが絶滅し、4気筒も消滅し、挟角Vツインはヤマハがクルーザーでラインアップしているだけ(それも2017年で生産終了)だし、事実上パラツインか単気筒、そしてホンダのVTRの90度Vツインしか選択肢がない。それもメーカーによっては、例えばヤマハはパラツインしか選べない。

 これは私の持論なのだけど、バイクはやはり250ccクラスが最量販クラスになるので(大型にあらずばバイクにあらずみたいな風潮がある現在ですら、最も数が出ているのは126-250ccクラス)、このクラスにたくさん選択肢を用意しなければあかんのだ。
 250ccに乗り始めたライダーのすべてが400cc、そして大型にステップアップするわけではない。車検の負担があるしパーツ代もバイクが大きくなるにつれて高くなる。そして何より大きく重くなる。燃費も悪くなる。
 一度大型に乗っても再びこのクラスに戻って来たくなるライダーも多いし、最初からバイクはこれで良い、とこのクラスに留まるライダーだってたくさんいるんである。
 その時にこのクラスにろくに選択肢がないのは、どう考えても不利だ。

 や、そもそも400ccですら4気筒車がほとんどない現状では、大型二輪免許を取ってオーバー400クラスに乗らない限り、4気筒を知らないままバイク人生を終わるライダーも少なくはないのだろうな…と思うと、不憫だ…

 マルチといっても400ccの4気筒と250ccの4気筒ではぜんぜんムードが違うので、250ccマルチを知らないままライダー人生を終えるのも気の毒な…と思うが。知らないまま、ピーキーで乗りにくいとか音の割に速くないとか、ネガティブなイメージだけが先行している。
 今は存在しないため入手できないモノは悪く言っておいた方が精神衛生上は良いのかもしれないけど、レシプロエンジンとは思えない音と、爆発感がほとんどないモーターのような回転フィールは唯一無二のものだったのになぁ。
 低速トルクがある、というより意外なほど粘ったし。6速で発進ができたからなぁ。

 今年、長男の嫁が普通二輪免許を取ってバイクを買った。
 全員バイクに乗る我が家に嫁いできたからには私も乗らねばならんでしょう、みたいなことを言ってたが(笑)、それで買ったのがたまたまYSPにあったルネッサという250ccのバイクだった。
 これ、今はドラッグスター250に載っている挟角Vツインのエンジンを、イタリアンカフェレーサー風のボディに載せたバイクで、恐ろしく力が入った造りと宣伝をしたのに、ぜんぜん売れなかったモデルである。

 でもこれ、カッコいいんだよ。一文字風のバーハンドルとかタンクの造形とか、かなりイケてる。これ、今売ったらけっこう売れるんじゃないかな〜とも思うのだけど。
 走ると笑ってしまうくらいドコドコしてる(笑) さすがクルーザーのエンジンだ。
 今のアジアオンリーのメーカーは、もう二度とこんなのは作らないだろうけど。こういうのは市場が成熟してないと出せないモデルだし。まあ売れなかったということは、当時の日本市場も成熟はしてなかったのだろうけど。

選択肢が少ないと、こういう好きモノバイクを買う層が逃げちゃうのだ。

 現状だと、辛うじてスズキのGSR系が変わったエンジンを積んでいる。
 水冷パラツインというのは他のと同じなのだけど、ロングストロークに徹底した低速トルク型のエンジンにしていて、出力は24psという40年前のバイク並みの大人しいパワーの代わり、トルク型で乗りやすそうなバイクになっている、はず。(乗ったことはない)
 ただ、そのスズキもGSX250Rというスーパースポーツ寄りのモデルでも同じエンジンを使っていたりするのは無念。
 ショートストロークの高回転高出力型のエンジンをもうひとつ作ることは…できないのだろうな。
 Vストロームには合ってると思うけど。

 ホンダはCBR250RRを出してきた。やっぱりやるか後出しの帝王
 まあ昔のNSRやCBR250RRのように後出しですべてをかっさらう、というわけにはいかないみたいだけど。値段が高すぎるよな。
 ホンダの社長、ほんの2年ほど前に「バイクの価格を適正にするよう努力する」って言ってなかったっけ?排気量×万円が適正だろうと。
 まあいくらなんでも排気量×万円というのは無理でしょ、と思ったが、250ccで80万のバイクを出すか(笑)
 それでも金をかけただけあって面白いモデルだとは思うけど(自分が買う買わないは別として)、他メーカーはあまり追従しないで欲しいな。その土俵でホンダと闘っても勝てるわけないから。その土俵でムキになって闘って、それでユーザーがついてこれない領域まで突っ走ってしまった苦い過去を覚えてるでしょ?(笑)

 ヤマハは昔はホンダに真っ向から対峙できるフルラインアップメーカーだったのに、いつの間にかラインアップが狭くなってしまったな。
 大型にしても、MTシリーズが売れていて、その派生モデルでネオクラシックっぽいモデルが売れていて何よりだけど、普通のロードスポーツがしょぼい。もし大型免許を取って大型に乗るとすれば、乗ってみたいのはホンダのCBR650FとかスズキのSV650あたりなんだけど、ヤマハに載ってみたいモデルがない。
 普通二輪クラスにも、そもそも単気筒がSRしかない。250ccクラスにはパラツインオンリーだし。ホンダはともかく、カワサキに単気筒とパラツインでフルカウルスポーツをラインアップされてヤマハにはないなんて。
 カワサキとスズキが出してきた250ccのアドベンチャーツアラーも、ヤマハは出すのだろうか。2ストだけどTDRでこのジャンルの先鞭をつけたのはヤマハなのになぁ…
 MT-25/MT-3で辛うじてラインアップを確保しているが、これもネイキッドを作るならせめて最終減速比をもう少し低速寄りにすれば良いのに…。街中で6速が使いづらいこのギア比のままで出すなんて。MTの名が泣くぞ。

 カワサキはNinjaがフルモデルチェンジするようだけど、こんなに素直にパワー競争についてくるとはカワサキらしくない
 まあ考えてみれば、あの80年代に250ccのツインで唯一、自主規制いっぱいの45psを絞り出したメーカーなので、妙なところで意地になるのはカワサキらしいと言えば言えるのか(笑)
 それにしても燃料タンクが14Lになったのは残念無念。これで250ccのフルカウルスポーツはみんな14Lに。GSX250Rだけ15Lだっけ?
 現行Ninjaの17Lという容量は魅力的だったのになぁ。

 レーサーレプリカ時代もそうだったけど、み〜んな一緒になっちゃうとユーザーがシラケるんだぞ。

 Ninja400の新型は面白いと思う。250ベースの軽量な車体に45ps、3.9kgf-mのトルクは、ようやくレーサーレプリカ時代のマシン並みに走るモデルが出てきたか、という気はする。
 でも250ベースの悲しさ、タンク容量はやはり14L。250より確実に燃費は悪いはずなのに、14Lは足が短いぞ。
 それに250で39psを絞り出している割には、400は45psという平々凡々な出力なのも不思議。

 今年はカワサキからVersys250、スズキからVストローム250という、250ccのアドベンチャーツアラーが出てきた。
 これはイケると思う。自分は買わないけど(笑)
 このクラスの車重、車格のツアラーって、旅バイクとしてはひとつの理想形だと思う。自分は買わないけど売れて欲しいな〜。

 

 話は変わるが、80年代って50ccのスポーツバイクが各メーカーから出揃っていて、1.大学に入った時に通学の足として50ccのスポーツバイクを買う → 2.バイクに乗る面白さを知ってしまう → 3.中型二輪免許を取って中型バイクに乗る → 4.ますますバイクにハマる、というパターンができていた。とにかく乗せてしまえば何割かは食いついてくるわけだから、できるだけ多くの人をまず乗せてしまうクラスがあったわけだ。
 今はそれがなくて250ccクラスあたりがエントリークラスになってしまっているから、あかんのだ。まず10万もかけて免許を取らねば乗れないクラスでは、撒き餌の役割は果たせない。
 今、業界団体が小型二輪免許を容易に取ることができるよう、免許制度の改正を働きかけているのは、だから正しい。
 それでも普通免許を取れば自動的に付いてくる原付免許と同等にはならないだろうけど…

 なので51〜125ccのクラスを充実させなければならないよね。スクーターでは「撒き餌」としての力は弱いので、ちゃんとしたマニュアルのスポーツ車のラインアップを充実させねば。
 80ccとか面白いと思うんだけどな〜。250cc並みの車格のモデルも必要だろうけど、もっと小さくて気軽に乗れるモデルがあると良いのに、と思う。小さくて軽くてシート高が低くて安いモデル。そこで間違ってでもバイクに乗っちゃう人が増えれば、バイクの楽しさにハマって乗り続けてくれる人も増えるはずだから。
 個人的には125クラスのオフロードモデルが欲しい。

 もうちょっと日本のオートバイ市場が活気づかないと、いつまでもアジア向けの大味なバイクしかラインアップがない、という事態が続きそうだから。

 

 

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