YAMAHA Renaissa250

 

 

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YAMAHA ルネッサ

 

 実はこれ、自分のバイクではない。息子の嫁のバイクである。

 息子の嫁が結婚後、「池上家に嫁いだからには私もバイクに乗らないわけには」などと言い出して免許を取得した。
 いやまあ別にそんな義理立てを要求するはずもないのだけど、バイク乗りの性としてはバイク仲間が増えることは素直に嬉しい(笑)
 さてさて免許を取った暁には何に乗ってもらおうかと家族一同、あれやこれやと候補を出しては楽しみにしていたわけである。

 そんなところに、たまたま行きつけのYSP店に誰も上がらない二階があるわけだ。いずれはショールームもしくは客の休憩スペースにしたいと言い続けている割には、そもそも二階に上がる階段下にもバイクが陳列してあるため、誰も上がれないという残念なスペースとなっていたわけだ。
 そこにこのルネッサが展示してあるのを見つけたのは私である。走行距離は1万kmに満たず、新車かと見紛うばかりに綺麗な車体なのだが…こんなところに展示してあるということは売る気はないのか?(笑)
 が、聞けば一応売り物だと言う。ならばと嫁にこの店にこんなモノがあるから一度見てみな、と言ったところ、彼女がいたく気に入ってそのまま購入、となった次第なのだ。

 そしてその約1年後、嫁は腹が大きくなってしまったのでしばらく乗れなくなり、整備がてら預かってくれ、と申し出てきたので「たまになら乗っても良い」という条件で預かっている、というわけである。たまに?(笑)

 いやぁ、古いバイクってたまに動かしてやらないと、すぐ不動車になっちゃうからね〜(笑)

 ヤマハのルネッサ。伝説の不人気車である(笑) なんせ実車を見たのは、このYSPで展示されているのを見たのが初めてなんである。

 時代はレーサーレプリカプレームが終わりネイキッドブームが到来していた頃である。レーサーレプリカブームは250ccクラスから始まり、ブームの中心となったのもやはり250ccクラスだったのだが、ネイキッドブームは400ccクラスから始まった。そしてモデル数が多かったのもやはり400ccクラスだった。
 250ccクラスはレプリカ時代の4気筒エンジンを流用するパターンが多かったのだが、それとは別の、いわばレトロ路線はレプリカブームの頃から途切れることなく続いていたのだった。
 つまりホンダのCB250の単気筒エンジンを流用したGB250クラブマンがずっと独り勝ちだったわけで、単気筒車はCB250RSCBX250とこのクラブマンを揃えたホンダの独壇場だった記憶が。辛うじてヤマハのSRX250が抵抗していた程度で、スズキとカワサキから出ていた単気筒250ccなど、いまやモデル名を覚えている者すらほとんどいまい(笑)

 で、単気筒クォーター市場では唯一ホンダに対抗できていたヤマハが、クラブマンの市場を奪おうと仕掛けたのが、このルネッサの前身モデルであるSRV250である。
 つまりブリティッシュカフェレーサー風のデザインという、モロにクラブマンに被るデザインで出てきた。実際、バイクに詳しくない人なら、SRVとクラブマンを見分けることは容易ではあるまい。

 ただヤマハのプライドか、単にクラブマンのコピーを造るようなことはしなかった。
 クラブマンが単気筒なのに対し、SRVはVツインで出してきたのだ。

 Vツインといっても、VT系のような高回転型の90度Vツインではなく、当時ビラーゴに搭載されていた60度の挟角Vツイン、つまりアメリカンのエンジンを積んでいた。

 挟角Vツインって、ハーレーに代表される、いわゆるアメリカン(現在ではクルーザーと呼ぶが)専用のエンジン、といった趣がある。
 元々振動が出まくるのが運命、というエンジン形式なので合理的とは言えず、ハーレーだって前後長を短縮したいために止む無く挟角にしたに違いないのだが、いつの間にかこの独特の振動が「鼓動感」と一部のライダーに好まれるようになった。
 鼓動感と言えば単気筒だってそうなのだが、なぜかロードバイク乗りには単気筒の鼓動感を好む人は一定の割合で存在するが、挟角Vツインの鼓動感を好む人はほとんど聞かない。そういう人はプルバックハンドルとフォワードステップのバイクすなわちアメリカンを好む、と相場が決まっている。不思議だ。

 なので挟角Vツインをロードモデルに採用した例は、本当に少ない。というか記憶にないほど。
 その中では何故かMT-01とかブルドッグとか、ヤマハが数多く手がけているような気がするが、成功したモデルは未だ聞かない。
 最近もSCR950という、ボルトのエンジンをスクランブラー風のボディに載せたモデルを出していたが、あっという間に生産中止に(笑)

 懲りないねぇ、ヤマハも(笑)

 ま、その数少ない実例がSRVそしてルネッサだったわけなのだが、やはりというか何というか、見事なほど売れなかった。
 ブリティッシュカフェレーサー風のSRVがコケれば、今度はイタリアンカフェレーサー風にしたルネッサを出したのだが、やはり劇的に売れなかった。

 ただしこのルネッサ、超絶的にカッコよかったのだ。

 なにこのカッコよさ。もしかしたらこれは売れるのかも…と当時思ったものだが、この超絶的に力が入ったデザインがな〜んにも効果がなかったところを見ると、もう挟角Vツインのロードスポーツというジャンルは諦めた方が良いのではないか?
 ヤマハは諦めきれないらしく忘れた頃に出してくるけど、ことごとく玉砕してるし…。このルネッサのデザインを売ることができなかったのだから、もう何やってもムダ、って悟らないのかなぁ。

 

 ま、ごたくはともかく、せっかく預かったのだから乗ってみた(笑)

 乗ってみたら…楽しいこれ!

 クルーザーに興味がなかったので、そもそも挟角Vツインのバイクに乗るのが初めてなのだ。この独特の鼓動感は楽しいぞ。
 これをクルーザーに乗るライダーだけに与えておくのはもったいないだろうがよ。
 ロードスポーツ用にチューニングしてあるだけあって、けっこう高回転まで素直に回り、なぜか高回転域まで回すと振動が消えるという不思議なエンジンなのだが、回す気になれないほど低回転域が楽しい。高いギアで低回転からアクセルを開けた時のドコドコ感がまったく反則だぞ、ってほど楽しい。
 250ccしかないのに、立派にドコドコ言うんだよね〜。これはビラーゴの後でドラッグスターに搭載され、国産クルーザーで最も寿命が長いエンジンになっただけのことはある。しかも最後まで空冷キャブレターで頑張ってたもんな。

 や〜、もったいないな、このエンジン。FI化して復活しないかな…

 でもロードスポーツとしてはけっこうクセが強いバイクだと思う。

 まずブレーキが効かん(笑)
 効かないというか、強く握り込むとまあ普通には効いているのだが、握り始めの初期制動が「うそっ」と言いたくなるほど効かない。
 ピストンはもうオイルを介してパッドを押してるはずなのに、なぜ減速Gが来ない?
 で、グイグイ握り込んでいくと、ある領域からいきなり握力に応じた効きが出るので、けっこう制動力の立ち上がりが急激に感じる。

 いわば奥手カックンブレーキ、と言いたくなるブレーキ。

 で、リアブレーキはドラムなのだが、こいつがまた意外なほど効くのである。街中ではリアだけで走れるほど。

 …で、これ思ったのだけど、まさかビラーゴのブレーキをそのまま移植してる?

 デザインにこれだけ力を入れている代償なの?

 ポジションは超その気になる前傾である。市販バックステップか、って言いたくなるほど高く後ろにあるステップ、長いタンクで一文字ハンドルのため、遠く低いハンドルバー。
 この一文字ハンドル、実はルネッサのデザインの中で一番好きだったりする。

 

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YAMAHA ルネッサのハンドルバー

 

 このポジションだと、低回転域を使いたくなるエンジン特性はそれとしても、コーナーではひらひらとそれっぽく走りたくなるじゃないか。 ところが、まずブレーキがそうさせてくれない。

 元々エンジン形式と搭載位置から、見るからにリア荷重が多そうな車体なのよ。
 そこにもってきて例の奥手カックンブレーキのせいで、とにかくコーナー進入時にフロント荷重が作りにくいバイクなのだ。
 リアブレーキの効きが良いからといってコーナー手前でリアブレーキに頼ろうものなら、なおさらコーナリングのきっかけを掴みづらくなるし。

 おまけにフロント90、リア110という極細タイヤ。ちょっと無理すると呆気なく前後ともずるずるスライドし始める。
 もっとも限界が低い分、スライドを始めてからもいくらでもコントロールはできる感じ、というかむしろスライドし始めてからが勝負、というバイクでもある。
 ハングオンなんてもっての他(笑)
 ハードブレーキングに頼らなくて良い中速コーナーを、リーンウィズでタイヤと相談しながら綺麗に抜けていく、という走りが身上のバイク…ってなんだ、やっぱりクルーザーじゃん(笑)

 すごく楽しいんですけど、何か?(笑)

 

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YAMAHA ルネッサ

 

 

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