悟れてなかった・・

(カワサキ ZZR250)

 

 ・・・・悟れてなかった、というのは、CB223Sのところで「悟りの境地」なんて書いたことに対する辞世の句、もとい自省の句、である。

 別にCBに不満があったわけではない。あれはあれで楽しんで乗っていたのではあるが・・・

 1月上旬、ふらりと近所のYSPを覗いてみたんである。出たばかりのYZF-R25を置いてるかな、と思って。そしたらこの店にこのZZRが中古車で置いてあった次第である。

 実はこのバイク、今大阪に住んでいる長男の大が同じのに乗っている。
 去年の9月だったか、バイク屋でZZRを見つけた大が電話で、「今、バイク屋にいるんだけどZZRってどんなバイク?」と聞いてきたので、知っていることをあれこれと教えてやった結果、やつはそのZZRを買い、またえらく気に入って乗っているんである。

 その時、どんなことを喋ったっけ?

・ ZZRは「ダブルズィーアール」と読む

 これは90年にこのバイクが発売されたとき、カワサキがそうアナウンスしたのを記憶しているのだけど、2007年まで実に17年もたいしたモデルチェンジをされずに売られている間に、そのあたりはなんだか曖昧になったらしい。今では「ズィーズィーアール」と読む方が一般的なんだとかいう話は後から調べて判った話。
 ・・・これをどう読むかで歳が判ってしまいそうな話だね。

・ 1990年から2007年まで、実に17年間も販売されていた超ロングセラーモデルである

 この前のモデルはGPX250で、こいつはツインエンジンのくせに45psの自主規制値いっぱいの出力を出したカワサキの意地とも言うべきバイクだった。ちなみにホンダのVTも40ps止まりだったので、4ストのツインエンジンで45psを達成したのはGPXが唯一である。
 当時、世の中は250ccクラスでは2ストか4スト4気筒が大人気で、この分野に完全に出遅れたカワサキは苦戦していた。
 ただ、そんな風に世の中の流れに取り残されてしまっても決して見捨てないファンがついてくれている、というのがカワサキというメーカーの不思議、というか幸せなところで、「250にはツインがベストバランス」というカワサキのアナウンスはそれなりに好意的に受け止められていた。
 いや、バランスなんてどうでも良いのよ。RZはバランスが良かったから売れたのか?定期的にエンジンをバラして調整しなければならないバルブ強制開閉エンジンは機械的に正義だから根強いファンがいるのか?人はアンバランスなものにどうしようもなく牽かれるんだよ。

 ま、カワサキもKR、KR-1、ZRXという2ストやクォーターマルチを出してきたわけだが、あまり売れなかった。
 2ストの2モデルについては理由は容易に想像がつく。レースの背景を持っていなかったから、だろう。当時はレーサーレプリカブーム、だったのだが、「レプリカ」が許されたのはRG250Γ、MVX250F、NS250Rの頃までの話で、TZR250以降は「市販レーサーと同時開発」というのが売れる条件になっていた。
 だからタンデムツインのKRまではまだ良かった。Γと同時期の「レプリカ」がまだ許された時代だったので、もう当時から見ても「昔の話」にはなっていたものの、現実に活躍したワークスレーサーと同じエンジン形式のKRはまさにレプリカだった。だから一定数は売れた。仲間内でも乗っていたやつはいたし、そこそこ見かけるバイクだった。
 でもKR-1は・・・まったくと言っても良いほど売れなかった。私は走っているKR-1を一度も見たことがないくらい。
 だってその頃は既にNSRが幅を利かせていて、市販レーサーと同時開発はもちろん、パーツの互換性もあって簡単にSPレースに出ることができるマシンが売れ筋で、もう既に「レプリカ」ではなくある意味「本物のレーサー」しか売れない時代になっていたもの。
 そこに、市販レーサーやワークスとの繋がりもなく、レース転用するためのパーツもろくになく、未知数のバイクを誰がレース用に買うか。レースでのユーザー数が増えないと成績も出ず、やっぱり売れないというスパイラルに陥るのは火を見るより明らかで(当時はSPレースでの成績が販売に直結する時代)、実際にそのとおりになった。

 ちなみにKR-1、車重は当時の最軽量を達成していて、これはカワサキとしては凄い快挙だったのに。
 カワサキって共用パーツが多いから軽量化は苦手なメーカーなんだよね。同クラスでは重いモデルが多い→男のカワサキ、という図式がたいして疑いもせずに信じられていた当時。

 で、カワサキとしてもいつまでも男のカワサキではユーザー層が広がらない→販売が伸びないので、その状況を打破しようとしてGPZ250Rなんてモデルも出したことがあった。典型的な勘違いデザインで、ホンダのVT系がけっこう無骨なデザインなのにあれほど女の子に売れた理由をまるきり判ってなかった、ということだろうな。
 GPZ250Rが発表されたとき、多分99%のバイク乗りが写真を見て絶句したと思う。ついたあだ名が「鳩サブレ」だもん。興味がある人は画像検索でもしてみてください。
 ・・でも、あのピンと跳ね上がったテールなんて、けっこう今風のデザインだよな。今出てればそれほど違和感なかったかも。

 という、無惨な失敗作の次に、GPX250が出た。これがツイン唯一の45ps達成モデルで、それなりに売れた。

 それからようやくカワサキも250ccマルチエンジンの開発に成功し、ZRX250が出てきたわけだが、面白いマシンだったけどそれほどは売れなかった。
 その理由も例によってレース用のパーツが少ないという他、なんといっても決定的なのは「出た時期が遅すぎた」ったことだろう。もうレーサーレプリカブームも終わりかけだったもの。せめてもう2年早く出てれば・・・

 ま、そんなこんなで迷走したカワサキの250ccクラス。元々カワサキは大排気量バイクが得意で、250ccクラスはこれといったエポックメイキングなモデルは出ていない。Z250FTくらい?
 ともあれ、45psクラスにZRXを出せたことで、ようやくツインエンジンのGPXをもう少しカワサキの理想通りに作れるようになって、それで出てきたのがこのZZR250だったわけである。

 エンジン出力は40psにデチューンされ、ツアラーと称して売り出したわけなのだが、これがけっこう受けて爆発的なヒットはしなかったけどコンスタントに売れ続け、いつの間にやら17年も売られるロングセラーになったわけである。

 400の方は600をベースにしたため、軽量化が苦手なカワサキとしてもこれはあんまりだろ、というほど重かったが、250の方はスーパースポーツを名乗っていたGPXがベースなので、カワサキにしては、そしてかなり重量感があるデザインの割には軽く作れていた。乾燥重量148kgなので、まあ当時の4気筒マシンが同等の重量だったことを考えれば「軽い」とは言えないが、でも決して重いバイクではない、というあたり。
 エンジンも低中速寄りにチューニングされているので、当時としては扱いやすい部類のマシンだったのだろう。

 

 

・・・というようなことを大に教えたわけだが、結局彼はそのZZR250を買った。94年式(でもカラーで検索すると97年式にしかなかった色なんだけど)、辛うじて大が産まれた後の製造モデル。

 

 話がちっとも前に進まないが、そのZZRを1月に近所のバイク屋で見つけてしまったわけだ。
 年式は92年式。かなり初期のモデルだな。大が産まれる前の製造か。
 値段は?お、安いじゃないか。これなら今のCBを売れば買えそうな・・・

 と考えてしまったらもうダメだね。2月初旬には「買うから」と注文してしまった次第である。ちっとも悟れてなかった

 買うと決めてから納車が2月23日とけっこうかかっているのは、ちょっと面倒だったからで、なんせCBを売らなければZZRの購入資金は出ないわけだが、そのCBはローンで買っていたので勝手に売れないんである。
 で、銀行で借金してローンを借り換え、CBを売り、自賠責をスライドさせてようやく、というわけでちょっと時間がかかった。
 CBは買って約3ヶ月、走行3,000kmで売られていった・・・

 

ZZR250_1.jpg

Kawasaki ZZR250 右側

 

 92年式、もう23年も前のバイクにしては綺麗。左側に立ちゴケ傷があったが、バイク屋さんが同色のテープを貼って上手く処理してくれた。
 走行距離は1万kmほど。

 

ZZR250_2.jpg

Kawasaki ZZR250 左側

 

 ZZRの背後にYZF-R25が見える。これ、試乗車である。3月になったら試乗させてもらおうっと。(買わないよ?)

 

ZZR250_3.jpg

ハンドルバー周り

 

 メーター周りなんか、見慣れていて落ち着くデザインだなぁ。
 やっぱこの年代のバイクがいいや。

 ちなみにカミさん、今回の買い換えには珍しく、非常に協力的だった。借り換えの時などは一時的に銀行のカードローンを使うことを許可してくれたくらいである。
 なんでも、「こんな走らないバイクにいつまでも満足して乗っているわけがない」と確信していたんだそうな。

 

 で、現在は納車されて3日、約200kmほど走った状態である。

 まだ燃費を計っていないので確定的なことは言えないが、エンジンの調子は抜群に良い。14,000rpmのレッドゾーンまで荒々しく一気に吹ける。
 荒々しいと言えば、このエンジン、全域でそういうフィーリングである。さすが80年代のカワサキのエンジンである。エンジンが冷えているときのアイドリング時のメカニカルノイズったら、エンジンが壊れているか、さもなくば壊れるか、というほど賑やかである。まさにこれがカワサキ。

 低回転域、特に4,000rpm以下はスカスカといって良いほどトルクは薄いし粘らない。6,000rpmからようやくレスポンスが鋭くなり始め、本領は10,000rpmを超えてから、という、「これをツアラーって売っていたのか?」と思うほどハイキーなエンジンだ。いや、良いエンジンだよ、これ。
 そもそも250ccの低回転域になんて期待する方がどうかしてる。元2スト乗りなので、このトルクでもお釣りが来るくらいである(使わないけど)。
 音が勇ましいので、けっこう回しても「音ほど速くはない」という感じだけど、十分な速さ。これ以上速かったら免許が危ないからこれで良い。

 ポジションもけっこう前傾がきつい。昔のTZRとかほどではないけど、「これ、ほんとにツアラーって売ってたのかよ」と思うほどにはハンドルが遠くて低い。ステップもけっこう後ろよりの高い位置にある。とても体重移動がしやすい位置でokである。

 いや、あの時代の「ツアラー」だもん。こんなもんでしょうよ。まして共用パーツが多いカワサキのバイクである。仮にもスーパースポーツとして売っていたGPXからそんなにガラリと変えたモデルを出すわけがなかった。

 でもこれでokである。むしろ歓迎。

 私はワインディングでは膝を擦って走っていたけどツーリング派、と他で書いた。要するにいわゆる「ツアラー」バイクは嫌いなんである。
 直立してステップが前にある、いわゆる「リラックスしたポジション」で、エンジンは低速トルクはあるけど高回転域では糞詰まり、レスポンスがダルなバイクは嫌なんである。
 私が「ツアラー」としてバイクに求める要件はただ一点、「リアシートの造り」だけなんである。あ、もうひとつは燃料タンクの容量と。
 リアシートが十分な座面とフラットな造りでないと、荷物が積みにくい。だから現行モデルのスポーツ系のバイクはほぼ全滅。
 だからTZRが良かったんだな。あれ以降のレプリカモデルが軒並みシングルシート風のテールカウルに座布団みたいな小さなタンデムシートを取って付けたように装備していたのがダメだった。何とかなるか、と思い直して買ったVFRも積載性はやっぱり最悪だったし。

 今のバイクはさらにタンデムシートが絞り込まれているので、見ていて悲しくなってくる。これは積めないわ・・・
 それより何だよ、あの名古屋城のシャチホコみたいに跳ね上がったテールは。タンクの上面も前下がりになっているので、全体としてフロントフォークが抜けて前に落ちてしまったようにしか見えない。今のデザインは理解できない・・・

 しかしリラックスポジションとダルなレスポンスのエンジンが嫌いなんて、それでよくCBに乗ってたな、と自分でも思う。
 CBはとにかく軽いのと燃費が良いので全て許せていたんだなー。

 

 というわけで気に入ったZZR、長く乗ることになるだろう・・・と言うのはやめておく。人生一寸先は闇である。

 

 

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