卒業山行 比良 蛇谷ヶ峰

S59 3/6-7 比良 蛇谷ヶ峰

by Keigo

 たしかあの山行は2泊3日の予定であった・・・・

 我々は無事卒業ということを祝して蛇谷ヶ峰登山を試みた。
 思っていたよりも雪が非常に深く、バス停から歩き始めていきなり輪カンを着けるハメになってしまった。着けたのはおれと石島の2にんだけだったので、やむを得ずおれと石島が交代で先頭を歩いた。かなり深い雪で本来の道が判らなくなり、本来なら蛇行しているはずの道を直進してしまったりした。
 ずいぶん歩くと木のない所へ出た。ここまで来れば目的地まですぐだと思ったが甘かった。稜線だと思った所は単なるピークで、そんなことが何度も続いた。おれは肉体的にも精神的にも参ってしまい、先頭をヨコヤンや他のメンバーに代わってもらったりした。
 ・・・・と突然、石島がダッシュし始めた。彼は目的地を超能力らしきもので感づいたのである。おれは石島に続いた。そして目的地に着いた。そしてみんながやってきた。しかし目的地とは言ったが目的地らしき所という意味で、本当にそこが目的地である確信はなかったのである。
 そして幕営地さがしに取りかかった。堀田しゃんと池上は峠の方へ探しに行き、残り3人は上の方に探しに行った。そして我々3人はすぐに幕営地を見つけた。そこは風当たりは強いが、フライもあることだし良い場所であった・・・・・・
 さっそくテントを立てることにした。天気もいいし、テントを立てるのさえ楽しかった。
 が!フライがなぜか小さいのだぁぁぁぁぁ
 それは4人用のフライだったのである。一瞬にして暗い気持ちになったのは言うまでもない。

 そして夜・・・例によって食後の"お水"となりました。もうその夜は狂気の沙汰で、声がつぶれるまで歌いまくりました。あの堀田氏の独唱には胸を打つものさえ感じられました。石島氏も普段の自分を捨ててしゃべりまくりました。そしてそう、池上氏の「関文理のお嬢さん事件」の話が出たのもこの時でした。彼は神社でどうのこうのと言ってましたよ〜。しけべぇ。
 横山氏はみんなが歌っているのを横目にシビアに決めていました。

 そして悪夢の翌日、みんな昨日のお水と睡眠不足がたたり、体力と気力がひじょーーーに弱まっていたのです。そして恐ろしい言葉が誰からともなく発せられたのです・・・・
 「もうこのままおりひんけ・・・」
 この言葉は全員の気持ちでもあったはずです。しかし池上氏が「蛇谷だけでもいこけー」と言い出しました。彼のこういう気持ちはみんなにもよく判りました。彼は蛇谷に一度も登ったことがなかんったのです。我々よりもキャリアがながーいというのに。そして彼が一度言い出すとあとに引かぬこともみんな知っていました。仕方なく(これは私個人の気持ちです)全員で蛇谷へ・・・・
 サブ行動とはいっても、これまた体力の衰えを感じざるを得なかったのである。

 ほとんど水の持ち合わせがなかったので雪を食いながら登っていくと、蛇谷の木でできた三脚が目に入った。そしてその横を見るとでっぱりが1.5mほどもあるでかい雪庇があった。
 頂上はやたら風がきつかった。しかし天気も良くなかなかのものであった。さっそく雪庇の方へみんなで行った。そして横山氏が最初にその犠牲となったのである。彼は「勇気の片足」と言いながら徐々に雪庇の先端へと進んでいった。とその瞬間、彼は悲鳴を残して姿を消した。彼の落ちた所には大きく穴が空いた。そして彼が再び登ってきた時、恐るべきゲームが始まった。横山氏と堀田氏と私の3人でジャンケンで負けた者が一歩ずつ先端へ歩を進めるというゲームである。
 「ジャンケンホイ!」
 横山氏がまず一歩、顔をひくつかせて前へ出た。
 「ジャンケンホイ!」
 堀田氏と私が一歩ずつ、これまた笑いと共に顔をひくつかせて前へ出た。
 「ジャンケンホイ!」
 「ジャンケンホイ!」
 私は続けて負けてしまった。そして死ぬ思いで前へ出た瞬間、足元が急になくなり、私の姿は雪の間へ消えていった・・・私が下であがいていると堀田氏が落ちてきた。上に残った横山氏が我々2人に雪を落としてきた。我々はそれに応戦した。そして私が横山氏の足元のすぐ下に行った瞬間、彼の足場が崩れ、彼が頭の上に落ちてきた。私は頭に1辺50cmの立方体の雪をまともに浴び、すんでのところで横山氏が直撃してきそうになったが、私は何とかそれを避けることができた。
 横山氏は斜面をウルトラマンのように両手を広げ、逆さになって滑り落ちていった。

 そうこうしているうちに天気が悪くなりだした。我々は幕営地にもどることにした。しかかなりの雪で来る時に作ったトレースはほとんど消えてしまっていた。しかし私のするどい判断力で、なんとか幕営地まで帰ることができた。

 テントをてっしゅうして下ることにした。峠より下はずーっと急斜面で木がないのでシリセードで下ることができたが、横山氏と石島氏は雨具のスボンを履かなかったので思うように滑ることができず、かなり往生していた。木が多くなり始めたので輪カンを着けて歩くことにした。そして一歩踏み外すと谷へまっさかさまという所にさしかかった時、横山氏にハプニングがおきた。彼の足が雪に深くもぐり、動けなくなったのである。しかし彼は必死に踏ん張り、なんとか切り抜けることができたのである。

 バス停に着いた・・・しかしバスはほんのちょっと前に行ってしまっていた。
 そして1時間以上待ってやっとバスに乗って帰ることができた。

 

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