初心者家族テント泊山行のための装備
最初に断っておくが、いきなり装備を一式揃えるのは並大抵の出費ではない。マジで海外旅行1回分の金が飛んで行ってしまう。
が、装備は一度買えば長年使えるもので、初期投資はでかいが山行を繰り返すことによって元は引けるはずである。
例えば、装備一式を揃えるのに30万かかるとする。北アルプスに小屋泊まりで行けば1泊2食でだいたい8400円。子供料金は設定していない小屋もあったりするのだが、仮に家族4人で泊まって3万円とする。2泊3日の山行をすれば宿泊費で6万円である。たった5回の山行で元が引けてしまうではないか。(5回も、という考え方もあるが)
・・・ま、一度で良いから山道具屋に30万持っていって「あれとこれとそれと、それからこれもあれも買うぞ。・・・ん?2万円ほど余っちゃったな。よし、それならこのダウンジャケットも買うわ」なんて買い物をしてみたいもんである。気持ちいいだろうな・・・
ちなみに本文中、具体的なモデル名が出てくるが、これらのスペック及び価格は平成16年10月現在のものである。
テント
これがなくてはテント泊山行はできない。当然だが。
家族4人でとなると当然4人用のテントが必要である。4人用のテントに4人寝るのは特に夏山では辛いのだが、この場合は2人は子供なので楽勝である。
4人用のテント、それも軽量テントとなると案外ない。
RIPENは3人用までの少人数用テントのラインアップは充実しているが、4人用テントとなるとベーシックドームというモデルがあるくらいで、しかもそれは3.6kgと少々重い。エアライズ3は底面積が220×185cmなので4人用としてはいくらなんでも辛いが、3人(両親+子供1人)なら十分いける。ちなみにエアライズ3の価格は50,400円である。
多人数用テントのラインアップが充実しているのはダンロップとモンベルである。
ダンロップはVL41というモデルが定価55,650円、K-403というモデルが42,000円である。ただしダンロップの4人用は210×180cmのサイズであり、やはり4人用にはかなり辛い。またK-403は少々重い。(3.5kg)
モンベルはステラリッジ4というモデルが底面積200×230cm、重量3kg弱とちょうど良い設定になっている。価格は53,550円。
なお、RIPENとモンベルは基本的に定価販売で値引きはないが、ダンロップは2割程度の値引きがあるようである。
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メーカー |
モデル名 |
底面積 |
重量 |
価格 |
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RIPEN |
エアライズ3 |
185×220cm |
約2.2kg |
\50,400 |
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RIPEN |
ベーシックドーム4 |
200×210cm |
約3.6kg |
\51,450 |
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ダンロップ |
VL41 |
180×210cm |
約2.2kg |
\55,650 |
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ダンロップ |
K−403 |
180×210cm |
約3.5kg |
\42,000 |
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モンベル |
ステラリッジ4 |
200×230cm |
約2.6kg |
\53,550 |
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モンベル |
ムーンライトテント5 |
210×210cm |
約5.0kg |
\57,750 |
ちなみにモンベルのムーンライト5というテントを表に入れてしまったが、これは底面積はともかく高さがけっこうあって耐風性は他のドーム型テントより明らかに低い。またかなり重いので、いわゆる「山岳用」テントではなく、どちらかというとキャンプ用のテントに分類されるものである。
が、そこらのオートキャンプ用のテントより遙かに軽く、また耐候性も高いので、「ベースキャンプ」としてなら十分使用に耐えるし、それどころか天井が高く通気性が非常に良い構造なのでたいへん快適である。これを担いで歩くのは大変なので、正直「山のテント」としてはちょっと無理っぽいのだが、リストに入れてみた。
雷鳥沢でこのテントでキャンプしている家族がたまにいるが、快適そうで大変羨ましい。
さて、テント本体の他にグラウンドシートはあった方が良いだろう。防水性も高くなるし、テントの寿命も延びるので。
これは例えばステラリッジ4のグラウンドシートであれば5,565円である。
また、テントマットも必要だ。これはテント内で敷くマットのことだが、個人用のシュラフマットとは別にテントの床一面に敷く。
これは山用品店ではなく、ホームセンターなどで買えば良い。2000円くらい。
ということで、テントは仮にモンベルのステラリッジ4を買うとして、グラウンドシート、テントマットまで含めた予算は、約6万円である。
シュラフ
夏の北アルプス雷鳥沢、春秋の北八ヶ岳や霧ヶ峰、といったあたりであれば、適合温度域が0℃〜3℃くらいのシュラフが適当だろう。
人によって寒さの感じ方が違うのでこれだ!という決めつけはできないが、普通の人はモンベルでいえば#4、ちょっと寒がりの人でも#3のシュラフで間に合うはずである。
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メーカー |
モデル名 |
中綿 |
適合温度 |
重量 |
価格 |
|
モンベル |
ULSSダウンハガー#4 |
ダウン |
3℃ |
600g |
\22,575 |
|
モンベル |
SSダウンハガー#4 |
ダウン |
3℃ |
850g |
\16,275 |
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モンベル |
ULSSダウンハガー#3 |
ダウン |
0℃ |
645g |
\23,625 |
|
モンベル |
SSダウンハガー#3 |
ダウン |
0℃ |
980g |
\17,325 |
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モンベル |
SSバロウバッグ#4 |
化繊 |
3℃ |
1140g |
\11,340 |
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モンベル |
SSバロウバッグ#3 |
化繊 |
0℃ |
1230g |
\12,390 |
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イスカ |
エア280 |
ダウン |
2℃ |
550g |
\25,200 |
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イスカ |
タトパニ |
ダウン |
2℃ |
860g |
\21,000 |
例えばモンベルの同じ#4(つまり暖かさが同じ)でも、最軽量のダウンモデルと化繊モデルでは、重量がほとんど倍違う。ある程度登山経験を積んでくると判ってくるが、この600gの差はとてつもなく大きい。
初心者の場合、扱いがデリケートなダウンより化繊の方がお勧めだとは思うのだが、家族でということであればトータルでkg単位で重量が変わってくるのでここは軽量ダウンがお勧めである。つまり、モンベルのULSSシリーズかイスカのエアである。ちなみにモンベルとイスカの同等モデルではイスカの方が価格が高いが、実売価格はそれほど違いはないようである。
とりあえずここは、大人用の2つはモンベルのULSSダウンハガー#4を2つ買う、ということに仮定する。
予算は約4万5千円である。
子供用のシュラフはモンベルのホロウバッグJr.#5というモデル以外にあまり出ていない。価格は4,725円、重量は900gである。
大人用のダウンシュラフの方が軽いのだが、さすがに値が張るし寝汗を大量にかく子供にダウンシュラフは神経も使う。大人用の化繊シュラフを買うくらいなら、値段の点でも重量の点でもこのモデルを買った方が良い。適合温度域は6℃と少し寒いのだが、大人の間に寝かせればよほど寒がりの子供でない限り問題ないと思う。(だいたい子供は暑がりなものだし)
というわけで子供用にホロウバッグJr.#5を2つ買うとして、予算は約1万円である。
マット
自動エア注入式は高いのでとりあえずクローズド・セル方式のマットを考える。
軽量化を最優先で考えれば、サーマレスト(モチヅキ)のZライトがレギュラーで重量430gと軽いので、Zライトレギュラーを2つ、子供用にショートを2つ買う、と仮定する。プロライトシリーズは金に糸目を付けないのなら・・・という感じかな。
予算はレギュラーが7,140円、ショートが6,037円(共にスタッフバッグ込み)なので、約2万6千円となる。
「テント泊」の用具だけで、これまでで14万1千円かかっていることになる。
さらに基本的な山用具も揃えていくとなると・・・
雨具
大人用にモンベルのレインダンサーを2着、子供用にスーパーハイドロブリーズ クレッパーJrを2着買うとする。
なぜストームクルーザーではなくレインダンサーなのかというと、値段の差にちょっと弱気になってしまったのと、レインダンサーの方がほんの僅かであるが軽いからである。
レインダンサーが20,790円、スーパーハイドロブリーズクレッパーJrが7,035円なので、合計約5万5千円である。
靴
こればかりはモデルが多すぎて例としても絞りようがないので、とりあえず大人用に1足2万円、子供用に1足6千円の予算をかけると仮定する。
ま、これだと大人用の靴はあまり選べないが、子供用はトレクスタのゴアテックスシューズが買える。
これで合計5万2千円也。
ザック
とりあえず一応、全ての荷物を担ぐとすれば(駐車場から近いキャンプ場では手に提げていくという最終手段もあるが)、とりあえず親父には70Lクラスのザックが必要であろう。80Lとなるとさすがに馴れていないと担ぎ切れまい。
「金に糸目を付けずに軽量化を」とか言いながらも、書いているうちにだんだん弱気になっていくあたりが庶民であるが、とりあえず価格の安いモンベルのトレッキングパック70を買うと仮定しよう。(機能的にも十分すぎるくらいなのだが)
22,050円である。
お母さんは、まあ普通ならば60Lクラスのザックはちょっと担ぎ切れまい。体育会系でバリバリに体力があったり、既に登山経験が豊富な人なら別だが。
というわけで、お母さんには45Lのチャチャパック45を買うと仮定する。12,180円である。
子供にもせめて自分のシュラフと雨具、ある程度の衣類くらいは担いでもらわなくてはどうにもならいので、子供用のグラナイトパックJrを2つ買う、ということで。4,620円。
よって、ザックで約4万3千円である。
その他
あとはコンロがガスコンロ2台で1万5千円、クッカーはアルミの多人数用で3千円、ウィックロンのTシャツを2枚ずつとして1万6千円、ヘッドランプが3000円×2で6千円、あとスタッフバッグとかいろいろ小物もたくさん必要なのだが、とりあえずこれで締める。
今までの全てで合計33万1千円となってしまった。これでまだ全てではないというのが怖い。
ここまでで大きな落とし穴がある。
実はこれらの装備、70L、45Lと子供用ザック(23L)2つでは、まず入らない。
元々2泊3日くらいのテント泊山行だと、4人全員が60Lクラスのザックを担いでちょうどくらいの装備量になるのである。親父のザックを70Lに増やしても、他にまともな戦力がないので焼け石に水である。ま、シュラフが化繊だったりするとなおさら絶望的である。(重量だけでなく嵩も張るので)
で、どうするのか?と言えば、努力して荷物を減らすしかないのだが、まず最も軽量コンパクト化をドラスティックに実行可能なのが食糧である。
が、食糧を削るのは経験が必要で、ヘタすると山の中でひもじい思いをすることになりかねない。そうなるとせっかくの楽しいはずの家族登山も、最悪の場合家族崩壊の引き金になりかねない。なのでとうぜん見極めは必要なのだが、特に家族登山の場合食糧をあまりドラスティックに削ることはお勧めできない。
ま、ある程度は荷物を手に提げて入山するしかないだろう。特に食糧の一部は。帰りにはなくなっていることだし。
だからこそ、アプローチが短いキャンプ場でのベースキャンプ型登山、なのである。このザック構成ではまず縦走は不可能なのである。
それでもたぶん、まだザックに入りきらない。
衣類はもちろん極力点数を減らす。着替えは各自Tシャツ1枚と下着1枚ずつ、それに防寒着1枚ずつ、くらいにしてしまう。長袖シャツは入山時に着て入る。
・・・この防寒着が嵩張る。
ならば嵩張らなくて軽い防寒着を買ってしまおう。
大人には極薄のダウンジャケット(例えばモンベルのULダウンインナージャケットかダウンインナージャケット)、子供にはサーマラップジャケットJr。これで劇的に重量、嵩共に減らすことができる。嵩はフリース1枚分のスペースに4着とも入ってしまうほどである。
こうやってまたさらに3万円ほどの金額が消えてしまうわけである・・・
ま、実際は全くゼロから一気に全てを買い揃えることはあまりないだろうし、アウトレットやオークションを利用すれば多少なりとも安く揃えることはできるだろう。
これだけの金を装備につぎ込むのは「山ってなんて金がかかるんだ」という暗澹たる気持ちになるのも仕方ない。実際、家族でするアウトドアとしては、オートキャンプよりは少し金がかかるかもしれない。
しかし、同じキャンプでもオートキャンプと登山のキャンプでは、得られるモノは桁違いである。少なくともかかる金額の差額をカバーしてお釣りがくる、と思う。
金がかかると言っても家族で海外旅行を1回したと思えば良いのだ。海外旅行はお金を使って行ってきたら後には思い出しか残らないが、山の装備は1回揃えたら何度でも使えるのである。子供の成長に合わせて靴やウエアを買い換えなくてはいけないのがかなり辛いが・・・
・・・それにしても恐ろしいのは、ここに書いた装備を私がほぼ全て買っている、ということである。い、いつの間に??
はっきり言えるのは、キーパーソンはお母さんである。お母さんがその気になったら、ここに書いた装備なんざあっという間に揃うに違いない。