初心者家族のテント泊山行

 実はこのサイトを見て「自分は登山経験はほとんどないけど、家族で立山にテント泊で行きたい!」というメールを下さった方が複数おられた。それで春からいろいろ装備や計画についてアドバイスらしき(お判りのようにかなり独断と偏見に満ちているが)ことをしていたのだが、結局この夏、いずれも雷鳥沢ベースキャンプ&立山三山縦走を家族で成功させた。やればできるんじゃ〜ん。
 というわけで「ファミリー登山」の自分なりのノウハウらしき怪しげなモノを書いてみようと思い上がってしまったわけである。
 とはいうものの、単なるファミリー登山指南では、それについて書かれているサイトも数多くあるし、山の雑誌などでも特集が組まれたりしているので面白くない。ここは「自分も初心者なんだけど、テント泊で山に行きたい」それもアルプス級の山に、という一見無謀にも思える冒険を実現させるためのノウハウを書こうというわけなんである。

 従ってここでの前提条件は以下のとおりである。

1.夫婦と子供2人の4人家族
2.子供は4〜5歳から小学校中学年程度
3.夫婦共に登山経験はほとんどない
  せいぜい近郊の低山程度で、小屋泊まりでも北アルプス級の山に登ったことはない

 ま、確かにこれで北アルプスにテント泊で登るというのは大冒険である。大冒険だけに成功したときの喜びは日常生活では絶対味わえないほど大きいんだろうな。ただし親の、であるが。
 焦点はまさにそこで、一般的なファミリー登山のノウハウでは、「子供が無理なく楽しめることを大前提に、その中でいかに親も楽しむか」という基本方針が謳われているのだが、違うんである。「親が楽しむことを大前提に、その世界にどうやって子供をついてこさせるか」なんである。

 家族で山登りをすることの良さは、なんといっても家族サービスと自分の趣味を兼ねられることだろう。仕事で疲れて休みたいのに、たまの休日に家族を遊園地に連れて行き、帰りの車では家族全員が寝ているのに自分だけ眠気覚ましのガムを噛みながら運転するような事態はばっさり減らせるのである。
 ま、山に行っても帰りの車では家族全員寝てしまって自分はガムを噛むことになるのだが、自分も楽しんだ山の帰りだったらなんてことないでしょ?

 それから、装備代予算が増えることも利点である。親父の趣味がゴルフだったりした場合などは、少ない小遣いをケチケチ貯めてチマチマとクラブを買ったりするのが関の山だったりする庶民でも、夫婦揃って同じ趣味を持ったときのパワーは、山に限らず圧倒的なモノがある。私も家族で登り始めた頃は、一時自分の収入が倍増したかのような錯覚に陥ったものである。件の立山登山を果たした家族達も、メールを読んで唖然とするほどのペースで装備を買いまくっていた。(自分たちの買ったものを見ても唖然とするのだが)
 ま、夫婦揃って突っ走ってしまって家計が破綻するようなことにさえならなければ、夫婦で同じ趣味を持つことは楽しい、と実感する次第である。

 ま、それと最近地に落ちたと噂の「父権」なるものの復活を目論むこともできたりして。
 ただしこれは誤解のないように言っておくと、下界で頼りない親父は多分山に行くと危険なほど頼りない。父権を失った原因が親父自身の資質にあるのならば、山に行ったところでそれが取り戻せるわけもなく、却って鼻くそほどは残っていた信用が掛け値なしのゼロになるのがオチである。
 下界では何かの判断を誤ったところで鼻でせせら笑われたり借金が増えたりする程度で済むことが多いが、山では即生命の危機に直結することが多いので、実力の伴わないリーダー面は犯罪的ですらある。
 ま、真面目な話、そういうことを考えるには良い機会であるかも知れないけれど。

 そんなわけで、詳細は各論で書くことにしてまずここでは要点だけ述べたい。

1.コース設定

 テント泊は日帰りハイキングや小屋泊まりに比べて装備が非常に多い。つまり荷物が重くなる。
 が、この前提条件ではボッカとしての戦力は、自分(親父)のみとなってしまう。体育会系で体力抜群という奥さんでなければまず奥さんには期待できず、子供達は端から期待する方が間違っている。
 ということは、荷物の大半は親父が担いで歩かねばならないことを意味する。
 登山経験に乏しい親父が通常以上の重荷を担いで長いアプローチを歩くことは、ほぼ無理である。
 よってなるべく近くまで車や公共交通機関で行けるアプローチの短いテント場を選び、テントはそこに張りっぱなしにしてサブ行動で山に登る、いわゆる「ベースキャンプ方式」の登山計画を組むのがベスト、というかオンリーである。

2.計画

 ベースキャンプ方式の登山計画は前提として、具体的な行動計画としてはまず2泊3日程度の計画がベターだと思う。
 1泊2日では幕営した翌日にはもう撤収しなければならない。初心者の場合特に設営と撤収に時間と神経をよけいに費やしがちなので、設営も撤収もしなくて良い日を1日は設けた方が楽である。
 それが3泊とか4泊とかに長くなると、馴れないテント生活の疲れが溜まってくる。
 なので2泊3日、長くても3泊4日程度の計画がベターだと思う。

 次に初心者のテント泊山行でも言えることだが、家族連れすなわち子供がいる場合は特に、計画を欲張らないこと。
 初日:入山して設営、2日目:登山、3日目:撤収して下山、というように1日にこなす行動は1つだけにした方が良い。3日目にまたどこか別の山に登ってから撤収、なんて計画を組むと、親も疲れるし子供はもっと疲れる。

3.装備

 コース設定でも書いたが、とかく人数が多い割には実働ボッカ要員は少なくなりがちな家族山行である。
 なので装備は極力絞り込んで軽量化を図らねば、バテるとかなんとかいう前にそもそもザックに入らない。
 ところが「装備を絞り込む」ことは実は一番難しい。それには経験が必要なのである。初心者にそれができたら苦労はないのである。
 よってできることは、「財力にモノを言わせて軽量装備を買いまくる」ことが最も近道なのだが・・・
 ・・・ま、辛いところだが、家族4人で海外旅行を1回するくらいの経費である程度のモノは揃うので、ものは考え方次第、というところか。

 

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