基本技術 その1
山に行くまでに勉強しておくべきこと

 道具が揃ってさあ山に行こう、という前に最低これだけはマスターしておかなくては、という技術がある。
 歩き方や生活技術などは(事前の予習が必須であるにしても)実際に山で実践しながら覚えなければしょうがない、と思うのだが、いくつかはマスターした上で山に行かないと危険だよ、ということがある。

1.読図

 その最右翼が「読図」だろう。
 北アルプスの整備された登山道しか歩かない場合は、地図なんてなくても3〜4日の山行を無事に終えることができることも多い。それだけに道に迷って地図を開いた時点で既に遭難している場合も多々ある。まあそもそも「道に迷ってから」地図を開いても遅いのだが。
 「地図が読める」ということは、単に道迷いをしなくなるとか(読めても迷う時は迷う)迷った時のリカバリーが可能な時があるとか(不可能な時もある)いうだけでなく、行程の全体を把握できることによってバテにくくなるのだ。少なくとも北アや南アの一般登山道を歩く限り、そちらの効果の方が大きいと思う。迷いたくても迷えないもの。

 で、どうやってマスターするかであるが、これはとにかく毎日時間を惜しんで地図を見ること、に尽きる。読図について書かれた本を1冊くらい読んでおくのも悪くないが、少なくとも今の段階で磁針偏角がどうのといったことを覚える必要はない。
 貴方が住んでいる町が真っ平らなド平野でなく、多少なりとも地形に起伏がある場所だったら、とりあえず自宅が範囲に入っている2.5万図を買ってきて、コンパスを使って地図の北と実際の北を合わせ(磁針偏角は考慮する必要はない)、地形図の起伏と実際の地形の起伏をとことん見比べてみるのが一番早いし面白い。別に勤務先の地図でも良いのだが、ちゃんと仕事もするように。

 まず等高線から地形の起伏を読むというのが第一歩である。これはなんといっても実際の起伏と地形図の等高線を比べてみるのが一番なので、最初のプラクティスとしては自宅周辺のよく見知っている場所が一番なんである。これがいきなり山でそれをやろうとすると、そもそも実際の地形と地図の場所が合っているかどうかが判らなかったりするので意味がない。あくまで「あそこに見えるこれが地図のこの地点なんだ」と絶対の自信を持って同定できる場所で始めるのが基本である。

 地形図に描かれている情報は等高線による地形だけではなく、植生等多岐に渡る。地形が概ね理解できるようになったら、地図上の記号にも目を配り、地形図と実際のその場の様子をできるだけ細部に至るまでリンクして理解できるように地図を読む。

 さらに高度な訓練としては、その地形図上の小高い丘や山などの特徴的な起伏を、見慣れたいつもの場所(自宅や通勤途中)ではなく、あまり馴染みがない場所から見たらどう見えるか、地形だけでなく生えている木や「前景に川を渡る鉄橋がこういう具合に見えるはず」というあたりまで微に入り際に入り想像する。絵心のある人は想像図を描いてもいい。で、実際にその場に行ってみて確認するのである。

 これは凝り性の人は地図から立面図なんか起こしてみたりするのだが、とりあえず最初は「頭の中だけで」やった方が良い。

 次に今度自分が行く山の地形図を使う。近場の行程が短く登山道や指導標が整備されている山がベストである。自分がまだ行ったことがない山ならなおベストである。

 登山口から頂上まで、極端な話コースタイムが3時間なら実際に3時間かけるくらいのつもりで丹念に地図を読む。地形の傾斜や、そのあたりから近くのどの山がどんな風に見えるはずだ、とかとにかくしつこく読む。
 で、実際に登ってみるのである。
 登りながら事前のイメージと実際の地形や風景を重ねて修正していくんである。コースタイムの倍くらいかかるかもしれないが・・・

 こういうことを何度かやってみると、地図を見ただけで「立体的に見えてくる」はずである。実際の話、地形図読みとはどれだけ実際の地形に近いものを頭の中に描けるかというイメージの問題だったりする。磁針偏角などの理論的なことも、まずそのイメージが描けないことにはあまり役に立たない、というかとんでもない大間違いを導くことすらあるのである。
 昔、北アルプスの赤牛岳の頂上で実際に見た出来事だが、とある年輩のベテラン風の登山者がいた。赤牛岳は、水晶岳方面から来ると頂上で登山道がほぼ直角に曲がるのでボケッとしていると間違えやすい。直進して降りていく尾根もあるし、あたりは岩がゴロゴロしていて誰の目にも明白な「道」というものではないため、直進する尾根にも踏み跡があったりする。多くの人が間違えて降りていってしまった踏み跡なのである。
 その人は磁北線まできちんと引いている2.5万図を取り出し、コンパスを慎重に当ててしばし地形と地図を読んだ後、連れのおばちゃんに「うん、こっちだ」谷に向かって降りだした。ちなみに言うまでもないが赤牛岳からの下り道である読売新道は尾根道である。
 私は、その人があまりに自信たっぷりだったので、もしかしてマジにその方向に彼らの目的地があるのか?と一瞬思ってしまったのだが、もちろんその方向には何もない。東沢に降りるだけである。無事に降りられれば、の話だが。
 で、ちょっとためらった挙げ句、頂上から降っていく彼らに「あのう・・・読売新道ですか?」と声をかけた。かなり遠慮がちに。
 するとおじさんはジロリと私を白い目で睨んで、「ああ、そうだが?」と言ったもんだ。
 なんで私が見も知らぬおじさんに白い目で睨まれたのかというと、これは多分私がその時、Tシャツにジーパン、運動靴にヒモで背負うナップザックという、およそ北アルプスの最奥地には似つかわしくない軽装だったからだ、と思う。
 ま、ともあれ私は「読売新道はこっちですよ・・・」と遠慮がちにお教えし、彼らはジロリと尾根に明白に付いている登山道を一瞥し、「ああ、そうかね」と礼も言わずスタスタと正しいルートに戻って去っていったのであった。

 まあつまり、いくら地図とコンパスの正しい使い方を知っていても、地図を見て地形がイメージできないと、この極端な例のように尾根と谷すら間違えるということなんである。

 赤牛岳近辺では、この他にもいくつか面白い話があるのだが、それはそのうち雑談コーナーにでも書こうと思う。

 地図を読んで実際の地形や山の姿をイメージする、ということは、もちろん道迷い防止にも役に立つ。
 今年(平成15年)の8月、上ノ廊下に入山したまま行方が判らなくなり、結局立石奇岩の上流で警備隊にピックアップされたパーティーは、そもそも上ノ廊下を遡行する実力がなかったため入渓後すぐに目標を高天原に変更したらしい。それも大昔に赤牛岳の中腹を通っていた高天原新道を拾おうと思ったらしい。もう道なんか跡形もないはずだが。(しかしポツンと道標だけ残っていたりするらしい)
 まあ結局それにも失敗し、谷と中腹を迷走していたわけだが、ちなみに岩苔小谷出合いの立石(立石奇岩の下流)には高天原に登る道がある。一般登山道とはいえないかもしれないが(ガイドブックにも載っていない)、とりあえず明白な踏み跡はある。その手前の赤牛沢だって登れるし、もし岩苔小谷の踏み跡が判らなかったとしても(沢沿いなので見落とすかも)、この沢が高天原に通じていると言うことは地図を見れば判る。
 そこをもすっ飛ばして奇岩の上流から高天原に行こうとしていたというのは、「自分の現在位置がさっぱり判っていなかった」ことは言い訳の余地がない。本人は「遭難したという気持ちはない」と強がっていたが。(新聞談話)
 立石奇岩からは・・・行けないよ。もう普通のルートでは飽き足らなくなってしまって「どこか誰も行かないようなルートはないかなぁ?」なんて考えている私ですら思いつかなかったルートである。
 ・・・まあそもそもこのケースは「下山予定日を数日過ぎても何の連絡もない」という時点で紛れもない遭難だけど。
 そもそも上ノ廊下を遡行する実力がないのに入渓したこと自体が問題なのだが(登山靴だったらしい・・・)、それでも現在位置が判っていれば途中でどうにでもエスケープできたはずなのである。上ノ廊下ってエスケープルートには不自由しない谷なのに。
 ま、地図読みがどうのと言う話でもないのでこの話はこのくらいで。

 「道迷い防止」ということで言えば、実は地図読みよりも大事なことがいくつもあるのである。上に挙げた2つの例のように、自分の足元にちゃんと踏み跡があるかどうか観察するとか(迷い道の踏み跡もあるが)、そもそも自分の入ろうとしているルートが自分の実力で踏破できるのかどうかちゃんと判断できるかどうかとか。
 なので地図読みが役に立つのは、どちらかというと「現在位置と残りの行程」を正確にイメージで把握できることによるバテ防止の方である。このイメージでというのが大切である。ガイドブックに「3時間の急な登り」と書かれているのを、それしか読まずに文言として覚えているのと、地図を読んでイメージとして把握しているのとでは天と地ほども違う。

 なお、上に書いた地図読みのトレーニングであるが、馴れないうちはもちろん本番の北アルプス登山でもやるべきである。ただし、6時間の行程を12時間もかけていては小屋の夕食の時間に間に合わないので、ペース配分はきちんとした上で、となるが。(だからこそペース配分を度外視してトレーニングできる近場の山でのトレーニングが大切)
 だが、これをいつまでも律儀にやる必要はないと私は思う。まあ馴れれば地図をざっと見ただけである程度のイメージはできるものだし、そもそもあまりしつこくやると登る前に疲れてしまう。それにあまりバーチャルな登山を重ねると、さんざ地図を読んで頭の中で登った山と、実際に登った山の区別が曖昧になってしまうことすらある。私は旧高天原新道の途中にある薬師見平には行ったことがあると思ってしまっていた時期がある。昔から一度行ってみたくて、どのルートから行こうかと地図をしつこくしつこく見ているうちに、行ったことがあるつもりになってしまった・・・薬師見平から見た薬師岳の姿すら思い出せたりして。
 何事もほどほどがいいのである。

 技術的なことで「実際に山に登る前に修得しておくべきこと」というのは、この地図読みくらいで他にはたいしてない。
 もちろん持っていく道具の使い方には習熟しておく必要がある。特にコンロなどの火器類は、泥酔していても間違いなく操作できるくらいに馴れておくこと。
 また、私は夏の小屋泊まりの山行であってもツェルトは持っていくべきだと思っているが、これも持っているだけでは何の意味もない道具である。特にツェルトは、これを使う状況というのは何らか予期しない事態によってビバークに追い込まれた時であり、遭難寸前の状態である。(実際は予定のうちの場合が多々あるが)
 基本的にビバークは、一夜を過ごすにはあまり適切でない場所で行う羽目に陥ることが多いので、そういう場所状況下でツェルトを張って身体を守る空間を作り出すというのは、慣れと創意工夫が勝負である。
 ツェルトを買ったならば、部屋の中、近所の公園の滑り台の下、自宅のベランダや軒下、近くの神社の立木の間など、ありとあらゆるところで10mの細引き1本で設営する練習をしておいた方が良い。この「細引き1本」というのは、もちろん現場で適当な長さに切って、必要な長さの細引きを必要な数だけ作って使うのである。他には道具を使わずに、である。せいぜいストックくらいか。

 かなり厳しい条件でビバークに追い込まれた時、ツェルトを持っているかいないか、また持っていても使えるか使えないか、上手く張れたか張れなかったか、という違いで、ビバークに追い込まれたのが信じられないほど快適な一夜を過ごしたすぐ近くで別の人が冷たくなっている、というほどの差が生まれるものなんである。

 別に綺麗にピンと張る必要はない。体の周りに一夜を耐え得るだけの空間を作り出せれば良いのである。その空間があるかないかで体温の奪われ具合がまるで違ってくるし、何より精神的な安定を得ることができる。激しく怯えていたりパニックに陥ったりすると、体力なんてあっという間に奪われてしまうので、この精神的な差は非常に大きい。
 さらに、ツェルト張りの練習を重ねることによって、山で「こりゃちょっとヤバイぞ・・・もしかするとビバークか・・・?」てな状況に陥った場合でも、精神的な負担はかなり軽くて済む。
 ある人がパニクッて暗くなってきているのにジタバタとムダに歩き回って体力を消耗していくのに対し、さっさとその日の行動に見切りを付けて明るいうちに少しでも快適なビバーク地を捜そうという余裕も生まれるというものである。

 このツェルト張りもなかなか面白くてハマる。実際にビバークしてみればなお面白い。
 だが、高じて駅の地下街で新聞紙にくるまってスヤスヤと安眠するような趣味を持ってしまうと、社会生活に影響を及ぼしかねないので、これもやはり程々が良い・・・

2.パッキング

 ザックに効率よく荷物を詰める技術であるパッキング技術は、近年ザックの進化と共にだんだんその重要性が薄れてはきている。
 かなり昔に山登りを始めたり、一部の大学ワンゲルなどに所属していた経験を持つ人は、あの悪夢のようなキスリングを覚えていることだろう。なんでもキスリングという人が考案したのでそういう名前になっているらしいが、「こんなとんでもないもの考えやがって」という呪詛の言葉と共に(一部の人種に)永遠に記憶される名前だろう。
 なんせ「考案した」という言葉が虚しくなるほど何の工夫も変哲もないただの袋に背負いヒモが付いただけのものである。その形状は横長で、さらに大きなサイドポケットまで付いているという、現代の人間工学からおよそかけ離れた姿である。それで始末の悪いことに、やたら大きな袋なので、その容量はほぼ無限大とさえ思えた。特大キスリングなど、今の容量表示で言えば120Lは入ったのではなかろうか。
 ただの袋に120Lの荷物を入れてそれを担ぐのであるから、キスリングのパッキングはまさしく技術であった。背面に何も緩衝材のようなものがないので、背中側に固いものを入れると当然背中が痛い。背面に対する長さはそれほどでもないので、少しでも重量物を下の方に入れすぎると、ただでさえ根本的に劣悪な重量バランスが目も当てられないものになった。横に長いので左右のバランスもシビアだった。
 そうやってせっかく完璧にバランスを取っても、行動中バテたやつの荷物を分担して持ってやるとそれでバランスが崩れてしまい、あっという間に自分もバテてしまうことが多かった。そうやって1人のバテをきっかけに次々と連鎖反応を起こし、パーティー全員が野に屍の山を築くことも珍しくない光景だった。

 実は私は山岳部だったので、ほとんどキスリングは使ったことがない。キスリングは重量バランスが悪く横長の形状のため、登攀的要素がある登山では使い物にならなかったためである。長期の冬山、それも登攀的要素が皆無の山行で数回使っただけである。キスリングを愛用しているのはワンゲルとかハイキング部だったなぁ。ちなみに高校山岳部の時は「修練」と称して何回か強制的に使わされた。

 現代のインナーフレームのザックでは、重量バランスはほとんど気にする必要がないのだが、技術解説書や山岳雑誌などで「重いものは上に、軽くてかさばるものは下に」とお題目のようにしつこく唱えている人は、キスリングの悪夢から抜けきれていない人達である。
 キスリング・・・・・・あんたの名前は一生覚えていてやるからな!

 さて、気を取り直して現代のザック(だいたい30L以上のフレームザックの話)は、ザックの中がどういう重量バランスであれ、ザック全体を1つのマスとして腰を主体に肩にバランス良く荷重をかけるように設計されている。なのでパッキングの際に重量バランスを気にする必要はたいしてない。
 ただ、当然重いものが最下部に収まってしまうと、せっかくのザックの優れた重量バランスも生かしきれないので、そこらへんは常識的になるべくトップヘビー(上の方が重い)状態にパッキングした方が良い。
 ただしここで間違えてはならないのは、「重いものは最上部」という意味ではないということである。ザックのショルダーストラップの取り付け部より高い位置に重いものを入れてしまうと、当然極端にバランスが悪くなる。ザックが勝手に重量バランスを最適化してくれるのは、ウエストベルトからショルダーストラップ取り付け部までの間の荷物に関してのみ、なのである。
 ま、「軽いものは下に、重いものは上に」と言ったところで、現代の山道具はみんな軽いので困ってしまうよね。

 というわけで、実はパッキングの際に重量バランスより神経を使うべきポイントは「使用頻度」なのである。
 下山時に着替える衣類は山の中では使わないので、当然一番下である。非常用の下着の替えも基本的には下山セットと同じ位置である。テント泊山行ならシュラフが一番下というのがお決まりのパターンであろう。
 コンロやクッカー類は、腰を落ち着ける大休止の時にしか使わないので真ん中辺でよい。雨具、休憩時や行動中肌寒い時に羽織るシャツ類などは一番上のすぐ出せる位置に入れた方が良い。

 まあそのあたりが基本的なところなのだが、大切なのは荷物の仕分けである。何もかもむき出しのまま単品単位で入れていくと、どこに何が入っているか判らなくなってしまうし、第一雨が降ったら中のものが濡れてしまう。
 そのため、衣類はビニール袋あるいはスタッフバッグにまとめて入れながらパッキングしていく。
 下山セット、非常時用の下着などは「絶対に濡れては困るもの」なので、ビニール袋でパッキングする場合は必ず二重にする。防水のスタッフバッグなら完璧、と思うだろうが、口をドローコードで締めるタイプのものはそこから水が侵入する。雨でずぶ濡れになったり川に落ちたりした場合は絶対に濡れてしまう。なので口を巻き込んでバックルで留めるタイプのスタッフバッグ(ドライバッグという言い方もする)を使うか、もしくはこれも二重に使うと良い。スタッフバッグを二重で使う場合は、口を反対の位置で使うこと。案外良いのはビニール袋+スタッフバッグである。

 あるいは、ザック全体を大容量のスタッフバッグ(もしくはドライバッグ)で使い、その中にスタッフバッグに入れた物をパッキングしていくという手もある。私は沢登りの時はこの手を愛用した。

 そういうわけで、スタッフバッグは大量に必要である。各種容量取り揃えて多くあればあるほど良い。別に用事がなくて冷やかしで登山用品店に行っても、とりあえずスタッフバッグ1枚買ってくるようにしておくと、気が付けば大のスタッフバッグ持ちになれる。

 また、用途別に各種ザックを取り揃えるようになるほど深みにはまった人はともかく、普通の人は容量別に3つほどのザックを持てばいいところであろう。20L、40L、60Lという揃え方が一番つぶしが利くだろう。日帰りのハイキングは20Lで、小屋泊まりなら40L、テント泊なら60Lという使い方である。
 実際には小屋泊まりだと実は30Lもあれば十分で、写真などの趣味を持っていない限りは30Lのザック1つで日帰りハイキングから小屋泊まりの北アルプス縦走まで対応可能である。
 その場合、日帰りの場合はザックがスカスカに余るわけだし、数日間の縦走の場合は入りきらない、ということになる。
 この「スカスカ」対策であるが、この場合はザックの底にだけ荷物を詰めて上はスカスカだとかなり担ぎづらくなってしまう。荷物は腰から肩まで均等に詰めるようにして、ザック容量の調節はサイドに付いているコンプレッションベルトを締めて行う方が断然良い。つまり、そもそもサイドコンプレッションベルトも付いていないようなザックは使い物にならない、ということでもある。
 「入りきらない」方は・・・荷物を少なくする以外にない。そもそも初心者はザックに入るだけ荷物を入れてしまうので、仮に小屋泊まり山行に60Lのザックを用意すると、ほんとに60L一杯に使ってしまうことすらある。実際に小屋で仕事をしていると、60Lのザックで泊まっている人なんてゾロゾロいる。まあそのうちの何割かは写真が趣味で機材が山ほどあったり、次の日はテント泊だったりもするのだろうが、間違いなくムダな荷物を持ちすぎている人も多い。それでバテていては世話はない。小さいザックで軽快に登るべし。

 オスプレーというザックメーカーが面白いザックを出している。このメーカー、ザック専門メーカーでデイパックから遠征用の100Lザックまでフルラインアップしているのだが、この中のエクリプスというシリーズは面白い。容量別に42、36、32という3つのモデルがあるが、日帰りハイキングから小屋泊まり縦走まで最も汎用的に使えるのは42だろう。
 このザック、構造は基本的にデイパックで、背面のファスナーをガバッと開けて荷物の出し入れをするようにできている。ザックを転がしてファスナーを開け、適当に荷物を放り込んでいって最後に前面のコンプレッションベルトを締め上げればOK、なんである。適当に、と書いたがマジである。なんなら目をつぶって放り込んでもOKである。ちゃ〜んとウットリするくらい担ぎ心地が良いザックになっている。実際に買って使ってみて衝撃を受けてしまった。キスリングの悪夢から開放されること請け合いである。
 ま、いわゆるパッキング技術は決して修得できないザックなので、このザックを最初に使ってしまうと将来テント泊をしたいと思った時には大型ザックで学ばなければならないが。

 いずれにせよ、ザックを買ってきたらいろいろ山に持っていきそうなものを詰めてみるべし。何度も詰めて担いでいるうちに、効率の良いパッキングの方法や必要なスタッフバッグのサイズと数などが判ってくる。

 

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