Canon EOS M review

 

 さて、EOS Mを買って10日、約200枚の写真を撮って、だいぶこのカメラのことが判ってきた。10日で200枚ってKiss Digitalや20Dを買ったときと比べると少ないけど、まあ雨ばかりで外で写真を撮る機会がほとんどなかったので仕方ないか。
 画質はEOS Mのページで既に書いたので、ここでは主に操作系のことをレビューしようと。

 

EOS Mの液晶モニターと操作系

EOS Mの液晶モニターと操作系

 

 上写真が撮影時の液晶モニター&カメラ背面である。
 カメラ上面にはモードダイヤルと電源スイッチという使用頻度が極めて少ないボタンしかないので、この背面がこのカメラのほぼ全ての操作系である。

 操作系はかなりよく考えられていると思う。撮影に必要なほぼ全ての項目はメニューに入らなくても1アクションもしくは2アクションで設定に入れる。
 タッチパネルでもたいていの操作が可能なのだが、ほとんどの操作はタッチパネルと背面のQボタンとダイヤルでも可能。

 この画面では絞り優先モードにしているので、絞り値が直接設定可能になっていて、それは設定値の上に緑の矢印が出ていることで示されている。画面で2.5の上に矢印が2つ出ているのがそれである。これはダイヤルを回せばいちいち設定画面が出ることなく、ダイレクトに操作できるので早い。このあたりは一眼レフのEOSと同じ間隔で操作できる。

 露出補正はダイヤルで右を押すと(露出補正マークがある)、矢印が露出補正バーに移動するので、後は同様にダイヤルで決めれば良いわけ。

 画面をタッチしても設定可能なのだけど、それだと決めた後にSET(Q)ボタンを押さなければ決定できないので、ダイヤルで回す方が早いし一眼レフの操作に慣れた人には馴染みやすい。

 ただし、タッチパネルからしか設定できない項目がいくつかある。
 いわゆるEOSの一眼レフでモードダイヤルに割り振られていた設定項目、つまり露出モードや簡単撮影でのポートレートとかスポーツ、クリエイティブオートなんぞを選ぶ機能は、画面左上をタッチすることでしか選択画面に入れない。これはメニューにも設定画面がないので、タッチパネルが唯一の設定方法なんである。
 これは判らない人はずっとここを操作することを知らないまま使ってしまうのでは・・・と心配になってしまうが、まあ考えてみればそれほどの初心者なら、フルオートモード(シャッターボタン周りのモードダイヤルで設定)で使っているだろうから、通常撮影モードを使う人ならこのくらいは大丈夫なのか・・・という気がしないでもない。

 もうひとつ、ISOの設定も、メニューからもできるがダイレクトに設定するには、画面をタッチしなければならない。
 でも、まあこれはオートにしておけば困ることはあまりないので、もはやそれほど使用頻度が高くない、という考えの設計なんだろうな。

 

EOS_M_q.jpg

EOS M Qボタンを押したときの液晶モニター

 

 Qボタンを押すか、画面右上の[Q]をタッチすると、この画面になる。
 ここでは、画面左上からAF方式(顔認識追尾、エリアAF、1点AF)、AF動作(ワンショット、サーボ)、記録画質、クリエイティブフィルター、画面右上に行って撮影画面に戻る、ホワイトバランス、ピクチャースタイル、オートライティングオプティマイザ、測光モードが選択できるようになっている。

 基本的に、直接タッチしても良いし、ダイヤルで設定するときは十字キーの上下で項目を選び、左右またはダイヤルでそれぞれの設定項目を選択するようになっている。
 どちらも多項目を選択して最後にSET(Q)ボタンを押せば良いので、かなり便利。

 

 非常に良く考えられた優れた操作系だと思うんだけど、それでもいくつか欠点というか要望を挙げると・・・

 まず、ダイヤルはやっぱ2つ欲しかった。シャッターボタン付近にメインダイヤルがあってそれで露出値を決めて、背面のダイヤルは露出補正をダイレクトに決める、というのがEOSの中級機以上の操作系なのだが、MはどちらかというとKiss系の操作系に近いな。
 実際は露出補正も2アクションで設定できるのでほとんど支障はないのだが、ほとんど使わないモードダイヤルがシャッターボタンの周囲という一等地を占有しているのはもったいない・・・と思う。

 それとQボタンを押した時に出てくる設定項目はカスタマイズさせて欲しかった。
 クリエイティブフィルターなんてほとんど使わない項目なんて要らないし、替わりに高感度時のノイズリダクションの効きとか長時間露出時のノイズ補正とか、そういう項目を設定できるようにしたかった。
 ちなみにこれらの項目は相反するというか、例えば長時間露出時のノイズ低減をOnにしていると高感度時のマルチショットノイズリダクションがOnにできないなど、「両立しない」設定項目がいくつか存在する。これらはメニュー上だとけっこうバラバラに配置されているので設定がしにくい。1つはカスタムファンクションの中に入ってしまっているし。
 なのでQボタンメニューがカスタマイズできるのなら、私ならこれらの項目を並べておきたいところである。
 今は仕方ないので「マイメニュー」に並べてある。メニューをいちいち開かなければならないのは面倒だけど。

 もうひとつ。メニューの操作なのだけど、撮影モードあるいは画像表示モード、どちらからメニューを出しても同じ項目が最初に表示されるのである。
 普通は撮影モードからメニューを出せば撮影関係の項目を、画像表示モードからメニューを出せば画像表場関係の項目を最初に出すだろー?
  Mのメニューは、基本的に前回出した項目を出すので、画像表示しているときに選択削除したいと思ってメニューを出しても、下手するとカスタムファンクションのシャッターボタン半押しの機能選択、なんてところが表示されてしまう。これは使いにくいぞ。修正してくれ。

 ちなみにMの操作系の思わぬ落とし穴があって、それはサムネイルで画像を表示しているときに画像消去がダイレクトにできない、というものだ。
 サムネイル表示自体はスマホのように画面を2本指で縮小・拡大すれば自在にできるので、これは良いのだが、画像消去のボタンを十字キーの下に配置してしまっているため、サムネイル表示中にゴミ箱ボタン(つまり十字キーの下)を押しても、下の画像にカーソルが動くだけで消去の動作にならないのである。

 普通は、サムネイル表示中に画像消去ボタンを押せば「選択消去」になるのが大多数のデジカメの動作なのだけど(EOSの一眼レフだってそうだ)、Mでは通常表示のゴミ箱ボタンは普通に1枚消去にしかならないので、ダイレクトに「選択消去」ができないのである。

 つまりメニューから選択消去を選ぶしかないのだが、ここで先に述べた「どのモードからメニューを呼び出しても前回使用した項目を表示する」仕様が仇になる。選択消去に行き着くまでに何アクションもしなければならないわけで。

 仕方がないので、「画像消去」をマイメニューに入れて、マイメニューの設定でメニューボタンを押したときは必ずマイメニューから表示するようにした。
 ここも修正して欲しいところだね。

 

 あと、AFの遅さもファームアップで改善して欲しいところである。

 

 まあいじり倒してよく判るのは、やはりキヤノンの中ではこのカメラは「kissシリーズより下」のポジションなんだな、ということである。このあたりがキヤノンのしっかりしているところというか、ユーザーを舐めている、と言われかねないところというか。

 画質はフルサイズ機を別にすればキヤノンのAPS-Cのフラッグシップである7Dとほぼ同等か少し上回っているはずだ。センサーが基本的に同じで画像エンジンがDIGIC5なので7Dより新しいものな。KissのX6iと同じ。
 だけど、昔からキヤノンは画質で下位モデルが上位モデルを上回るのは意に介さないのだけど(これを意に介していたら全モデルを一斉に出さなければならなくなってしまう)、ボディの機能は絶対に下位モデルは上位モデルを上回らないように作ってくるメーカーなんだな。ニコンやペンタックスはそのあたりは下位モデルが上位モデルを完全に食う、ということを良くやるメーカーなんだけど。

 でもなぁ、ミラーレスはいわゆる「kissシリーズ→2桁シリーズ→1桁シリーズ→フルサイズ機」というキヤノンのヒエラルキーから外して考えないとまずいのではないかなぁ。

 kissなら、「kissで物足りなくなったら60Dを買ってください」と言えるし、60Dで物足りなくなったら7Dかフルサイズ機を買ってくれ、と言えるだろうけど、ミラーレスはそんな単純なヒエラルキーには入らないと思うんだけどな。

 私が20Dを使っていて60Dにも7DにもいかずにMを買うように、一眼レフのサブ機あるいはむしろメインとしてMを買う、という層はかなりいるはずだと思う。キヤノンの目論みどおり、一眼タイプのカメラを初めて買う初心者層なんて、果たしてMを買うか?この層だったらオリンパスのペンシリーズの方がよっぽど魅力的だと、キヤノンユーザーの私ですら思う。
 画質は確かに良いけどさ。でも画質はカメラの魅力を決める大きな要因ではあるけれど、全てではないよ。
 ましてMの場合、キヤノンのEFレンズが使えるというのが大きな魅力なのだけど、そんなの今からシステムを揃える初心者には関係ない話だし。

 このキヤノンのヒエラルキーからは、「ミラーレスの中級機」は当分出てこないのでは、というのが危惧するところ。このMにしてもAFの速度や追従性、連写速度ではミラーレスの中ではぶっちぎりの最下位だもの。最後発で出してきたのに、これで良いと思ってるの?という感じである。
 キヤノンがこれで良いと思っているのなら、それは「Mはkissの下だから」というキヤノンのヒエラルキーからしか物事を考えていないから、なのでは。

 オリンパスのOM-Dなんて既に60Dより魅力的な中級機も出てるぞ。まあ動体追従モードでの連写性能はもう少し、といったところだけど。

 ミラーやペンタプリズムで光学ファインダーを実現するカメラ、というのは、実際のところデジタルカメラでは必然性なんてない機構である。フィルム時代に撮影画像と同じ画像をファインダーで見たければ、こういう方法しかなかった。だけどデジタルだったらセンサーに届いた画像をそのままモニター(背面の液晶モニターかビューファインダー)に出せば良いだけだから。
 あとはその液晶画面の再現性や追従性といった話になるのであって、それは技術が進めばどんどん改善されていって、ますますミラー構造の光学ファインダーは存在意義を失っていく。

 だから、Mは一眼レフのラインアップにあまり縛られて欲しくはなかったんだけどね。他のミラーレスはあまり縛られていないモデルが多いから余計そう思う。

 

 

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