2008年モンベルの傾向と対策

モンベルのHP

<テント>

 昨年出たクロノスドームに4型が追加された。
 このシリーズのテントはステラリッジやマイティドームに比べると重いのだが、居住性が良いのと何より安いのがアドバンテージなのだが、4型も安い。\36,500円なのでステラリッジの2型とほぼ同じ値段である。山岳用に使える4人用テントとしては最も安価な部類に入ると思う。
 重量は3.4kgとさすがに少し重い(ステラリッジ4型よりほぼ1kg重い)が、そもそも4人用テントはだいたい3人くらいの共同装備だろうから、1人頭で割れば300gの重量増という計算である。まあこれくらいだったら、と思う人もいるのでは。
 底面積も僅かだがクロノスドームの方が広いし、独特のポールの取り回しをするため天頂部の空間が広いので、サイズ以上に広く感じる。風通しもドーム型テントにしては最大限に確保されているし、重量さえ折り合いが付けばなかなか良いテントだと思う。

 

<シュラフ>

 いつの間にかモンベルのシュラフは非常にシリーズが増えてしまっている。こんなに数多くのモデルを出しているメーカーって他にないのではなかろうか。
 それだけ細かなニーズに対応している、と言えばそうなのだが、よく研究しないと選ぶのが難しそうである。
 というわけで、ちょっと整理してみた。

 

モンベル製シュラフの重量と価格

シリーズ名

素材

EXP
-23℃
(-40℃)

#0
-16℃
(-31℃)

#1
-9℃
(-22℃)

#2
-4℃
(-15℃)

#3
0℃
(-10℃)

#4
3℃
(-6℃)

#5
6℃
(-2℃)

#7
10℃
(3℃)

L

S

UL.SS.ダウン

800FPダウン

1590g
\57,800

1300g
\47,800

1060g
\39,800

824g
\33,800

682g
\27,800

620g
\26,800

538g
\23,800

502g
\22,800

SS.ダウン

650FPダウン

1580g
\34,800

1330g
\29,800

1110g
\24,800

939g
\20,800

839g
19,800

763g
\18,400

741g
\17,400

UL.AL.ダウン

800FPダウン

986g
\37,800

615g
\24,800

475g
\20,800

UL.AL.バロウ

エクセロフト

940g
\18,000

710g
\17,000

565g
\16,000

SSバロウ

エクセロフト

2100g
\18,800

1860g
\17,800

1550g
\15,800

1180g
\13,800

1100g
\12,800

1010g
12,300

835g
\11,800

 注) 番手の下の温度表示はそれぞれ快適睡眠温度と(使用限界温度)を示す。
   Lはロングモデルの設定、Sはショートモデルの設定を示す。

 この他にキャンプ用のホロウバッグやファミリーバッグのシリーズもあるのだが、省略。
 重量と価格はレギュラーモデルのデータである。
 ロングモデルは以前から設定されていたのだが、今年新たにショートモデルの設定が加わった。去年まではボトムアジャスターといって足元で絞ることができる機構で身長が低い人の使用に対応していたのだが、それだとその分の重量は無駄になっているわけで、ロングがあるのならショートも出せばいいのに、と思っていたのだが。ショートモデルが設定されたからといってボトムアジャスターが廃止されたかというとそんなことはないのだが。まあモンベルのシュラフは去年モデルチェンジしたばかりなので、次のモデルチェンジの時にはボトムアジャスター、なくなのだろうか。ショートモデル設定したら無駄だもんな。
 ちなみにレギュラーは身長178cmまで、ロングモデルは身長193cmまで、ショートモデルは身長168cmまで、となっている。
 シュラフは足元が詰まってしまうととても寒いが、足元が余っても非常に寒い。なのでたいていの女性はショートモデルを選んだ方が絶対に良いと思う。その方が軽いし安いので、良いことずくめである。ま、値段の方はたった100-200円しか違わないのだけど、重量は20-30gは違うので、持った瞬間にはっきり判るほどの重量差がある。

 

<シューズ>

 マリポサというモデルが新しく出ている。昔も同じ名前のモデルがあったが・・
 カットが浅いジョガーと深いブーツの2つのモデルが出たのだが、この2つのモデルはシューレースの仕様が独特でちょっと面白い。
 ワイヤーのシューレースなのだが、それをダイヤルみたいなリールをくりくり回して締め、緩める時はそのリールのノブを引くと一気に開放される、という仕組みらしい。ちょっと面白いかも。試してみたいかも。

 また、最近コロンビアとかソレルとかのウインターブーツを履いている人も増えてきて、少なくとも富山のような半端な雪国では流行っていると思うのだが、モンベルもちゃっかりウインターブーツをモデル展開している。
 ネージュウォーカーベルニナという2シリーズ出してきたのだが、ネージュウォーカーの方は普通のトレッキングシューズとたいして代わり映えしない外観で、それほど興味はそそられないのだが、ベルニナはちょっと面白そう。これ、スーツでも履けるのではないか?
 ただ、富山のような半端な雪国では、この手の靴に防水透湿性素材は絶対必要である。気温が高いので積もった雪が融けて歩道がシャーベット状の川みたいになるのである。融雪で散水しているのでそれらの直撃も避けて歩かねばならないし。
 なので冬に会議などがあると、長靴を履いてこなくてはどうにもならないのだが、会議の場面で長靴を履いているわけにもいかんだろう、というわけで革靴もデイパックに入れて持ってくる羽目になるのだ。ベルニナがゴアテックス使っていれば完璧だったのに・・・

 

<ザック>

 モデルチェンジから取り残されていたトレッキングパックが新しくなった。
 割とオーソドックスな2気室・1気室切り替えタイプになった。エクスペディションパックがU字型の大きな開口部からザック内にアクセスできるのに対し、こちらは大半のメーカー製のザックによくある、ザックの下部で横に開くファスナーというタイプである。
 まあ性格分けが明確になったので良いのでは、とは思うが、私にはエクスペディションパックの方が魅力的だけど。
 ただ、このトレッキングパックは全面に大きなポケット、サイドにもかなり大きなポケットが付いているので、縦走などでは使い勝手は良さそうである。

 

<ギアその他>

 なんと水泳用のウエアとギアを出してきた。もうなんでもありだな。
 水泳用はゴーグルとスノーケリング、フィンを出してきた。
 ゴーグルはストラップの調節が簡単だったりレンズの曇り止め加工をちゃんとしている、ということなので、安いし買ってみても良いかも。

 

<レインウエア>

 去年モデルチェンジしたばかりのトレントフライヤーがまたモデルチェンジしてしまった。
 このモデルは従来、モンベルのゴアテックス製レインウエアの最軽量モデルという位置付けだったのだが、モンベル製レインウエアの標準モデルという位置付けのストームクルーザーが去年、現状これ以上は不可能では?と思うほど軽量化されてしまった。なのでこのトレントフライヤーの存在意義がモンベルのラインアップの中で微妙になってしまったのだが、どうやらこのモデル、「最新技術の展示モデル」という位置付けに変わったらしい。
 ゴアテックス3レイヤーとパックライトのハイブリッド構造、モンベルのレインウエアとしては初めてのストレッチャブルゴアテックスの使用(しかもパックライト)、ポケットはもちろん、カフなど他のモデルでは採用されていない部位への溶着の採用等々。ちなみにこれもモンベルのレインウエアでは初だが、ピットジップも装備されている。
 ま、どれをとっても他メーカーだと数年前からやられていたことだし、モンベル自身も冬用アウターなどでは採用してきた技術要素がほとんどである。まるきりモンベル初なのは3レイヤーとパックライトのハイブリッド構造くらいなのではないか。
 なので別にそれほど目新しさはないにしても、レインウエアにこれら全ての先端技術を投入すると、そりゃ「お、良いな」というモデルは作れるよな。
 その代わり、値段も立派である。ジャケットだけで34,000円は、もう既にレインウエアの値段ではないだろう(少なくともモンベルの)。冬用アウターと同じ値段ではないか。

 ま、別に他の海外メーカーだとこれくらいの価格帯のレインウエアも珍しくはないので(私もパタゴニアのジェットストリームジャケットは喜んで使っているけど)、1つくらいこういうモデルがあっても良いとは思うけど、なんとなくモンベルらしくないな、とは思うのであった。
 モンベルって、軽量化には血道を上げるくせに、こういう「新技術」モノは技術があってもそれら全てをぶち込んで「最高のモノを造りました」と悦に入るようなメーカーではなかったと思うのだが・・・全ラインアップを見ると、流行の新技術はたいてい網羅しているくせに、ここの製品に対しては「レインウエアにそこまで必要か」という見切りがあったと思っていたのだが。

 また、このモデルはパックライト部分に伸縮性を持たせているのだが、肘は良いとしても肩にパックライトを使うのはちょっと疑問である。耐久性が厳しくなるのでは。確かに伸縮性は欲しい部位なのだが・・・

 去年の同モデルもそうだったが、縫製でちょっと凝ったことをやっている。こういうチマチマした技術はいかにもモンベルらしい。
 これも冬用アウターとか他のレインウエアに拡大採用されると良いな、と思う。

 こういうモデルを出してきた、ということは、冬用アウターなんかも5万くらいのモデルを造る気なのだろうか。

 もう1つ、メドーパーカという新しいモデルを出してきた。
 どちらかと言えば街や郊外あたりで着るレインウエア、という設定のようである。尻まであるロングテールなので、少々の雨だとジャケットだけで済ませることもできそうだし。
 カタログではよく判らないが、コーデュラナイロンを使っていて街中で着ても違和感がないウエア、ということらしい。まあカタログではよく判らないが。

 それにしても、せっかく上下別売にしたのに相変わらず全てのモデルにジャケットとパンツを用意しているのはどういうわけなのだろう。パンツは整理して3〜4モデルにしてしまった方がコスト的にも有利だと思うんだけどな。

 

<パンツ>

 去年あたりからモンベルのパンツは総入れ替えと言って良いくらい、モデルが入れ替わっている。
 去年からなのだが、モンベルのカタログから「ショーラー社」の文字が消えた。一応モンベル独自の素材であるバイサーフェイスストレッチも部分的にショーラーのドライスキンという素材を使っていたはずだが、その表記もしなくなってしまった。何があったのだろう。ショーラー社が消滅したかショーラー社と縁を切ったかのどちらかではとは思うのだが。

 で、モンベルのパンツは上位モデルはほぼショーラーダイナミックを使っていたので、それらがばっさりモデルチェンジしてしまった。

 私が持っているのは、数年前のショーラーダイナミックを使ったトレッキングパンツというモデルと、バリスパンという丈夫なナイロン生地を使ったサウスリムパンツというモデルなのだが、気に入っているのは圧倒的にサウスリムパンツの方である。ただのゴツいナイロン生地で伸縮性もないのだが、なんせ速乾性が圧倒的なところが良いのだ。
 実はこのパンツ、仕事用に買って、実際仕事で履いていたのだが、冬の最中に伝染病が発生して畜舎消毒に出た時のことだが、動力噴霧器を振り回しい消毒していると全身ずぶ濡れになるのに、昼休みに30分ほど普通にストーブに当たっているだけでパンツがカラカラに乾いてしまった。
 で、これはと思って沢登りに履いてみたら、パンツが終了点に濡れて稜線を歩いている内に乾いてしまう。
 伸縮性はないので足の動きの自由度を、膝部分の立体裁断で確保している。なので濡れて乾いてを繰り返すと、膝の部分がぽっこり膨らんでしまって不格好なのだが、この速乾性は全て許せる。履き心地もあまり良くないが(けっこうゴワゴワする)許す。

 前置きが長くなったが、今年ブリーズスパンという素材が出た。これまでもあったウィックロンブリーズスパンとは別物らしい。ポリエステルなのは一緒なのだが。
 これもなんとなく速乾性が良さそうな気がする。ブリーズスパン・サウスリムパンツという名称による先入観かも知れないが・・・

 なお、バイサーフェイスストレッチを使ったモデルもあって、少し高いがちょっと欲しい気がする。今はなくなってしまったマウンテントレーナーに使用されていた素材で、あの素材感は好きだったので・・・

 

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