平成18年1月3日 余呉湖

腹ぺこさんの記録はこちら

やましじみさんの記録はこちら

 これは別に登山ではないのだが、当初そもそも少しは山に登る気もないことはなかったし、他に適当なコーナーもないので山行記に書くことにした。

 そもそもの発端は、9月に立山で腹ぺこ一家と合同キャンプしたときに、私が腹ぺこ氏のことを「暴悪大笑面」だと書いたことであった。
 実はこの時、最初に奥さんのナウシカ嬢のことを「菩薩」と書いてしまったため、じゃあ旦那である腹ぺこ氏も仏像系で、と面白い顔をした仏像をインターネットで探し回っていたわけなんである。
 で、見つけたのがこの暴悪大笑面だったわけで、これ見つけたときは大笑いしながらキーボードをバンバン叩き、「これだ〜!」と叫んだものであった。そんなわけであの1行を書くのに2時間くらいかけたのであった。

 それはともかく、この暴悪大笑面の写真を見つけたときは気づかなかったのだが、この十一面観音がある寺は滋賀県の高月町。関西なんである。
 そんなわけで腹ぺこ氏とは、「一度実物を拝みに行きたいね」という話をしていたわけで、年末年始に帰省したときにでも一緒に行きますか、と話が進み、それなら私も腹ぺこ氏も仲がいいやましじみさんも誘おう、ということになった次第なのであった。
 で、せっかく湖北に行くのだからと、滋賀県の山の生き字引であるしじみさん「なんか軽く適当に登れる山はない?」という方面に話が進み、余呉湖集合→賤ヶ岳登山→向源寺で暴悪大笑面拝観、という予定が組まれたのであった。もちろん幹事はしじみさんである。
 しじみさんはマメにメールで日程や行程の調整をしてくれ、夕食をとる店まで予約してくれたりして、私はすっかり添乗員付きのツアー客みたいな気分になってしまったのであった。

 しかし、いくらマメなしじみさんでもどうすることもできないのがお天道様である。
 近い将来には「17豪雪」と呼ばれることが確実かと思われるこの冬の大雪は、もちろん富山でも12月に入るなり降り続いていたわけであるが、どっこい湖北地方は富山に負けない豪雪地帯なのである。56豪雪の時に伊吹山のスキー場のリフトが埋まってしまったり小学校の体育館が潰されたりしたことは、当時高校生だったがしっかり記憶している。滋賀県って、私の実家がある大津市のあたりはどちらかといえば太平洋側の気候なのだが、湖北地方は気候的には北陸なのだ。
 そんなわけでこれだけの大雪、余呉に影響がないわけがないのだった。

 年末に偵察に行ってきたしじみさんの報告によれば、余呉湖のビジターセンターのあたりでもう1m以上の積雪だとか。こりゃあ賤ヶ岳には登れないかもしれないなぁ。というかパーティーには3歳の子供だっているのである。腹ぺこさんちの新管理人さんなのであるが、いくら立山をすいすい登ったワンゲル夫婦のメンデルの法則の実証例みたいな子供でも、こんな冬の山となれば話はまったく別である。
 まあ別に山には登れなくたっていいから、天気次第でできることで遊ぼう、と私と腹ぺこさんは気楽なものであった。幹事のしじみさんだけがやきもきしていた・・・まあそんなわけで天候とか現地の状況とかなんやらかんやらの細かい心配はすべてしじみさんに任せ、いよいよその日がやってきたわけであった。

 実家に弟の家族が帰省していて、この3日に茅ヶ崎に帰るという。で、最後の夜にマージャンにつきあえと弟がうるさく、仕方なく家族マージャンをしていたので(メンツは弟、母、カミさん、私)寝たのは2時近かった。
 眠い目を擦りつつ起き出してみると、なんと湖南の大津でさえ雪が舞う天候である。TVで天気予報を見ても、どうもあまり良くない。
 ま〜しゃ〜ね〜な、とりあえず現地に行ってみて、それからのことはそこで考えるべ、と8時に家を出発した。

 時間は比較的余裕があるので、湖西側をずっと北上し、琵琶湖の湖岸沿いに余呉町まで行こうとしたのだが、確かに雪は深い。
 道路が積雪で通行止めになっていたりして10kmほど戻って迂回、とかしていたので待ち合わせの11時どころか10時には着いちゃうな、とか最初は思っていたのにけっこう時間がかかった。
 そのうち腹ぺこさんから「しじみさんと合流しました」なんてメールが来て、「げっ、うちが一番遅いのか」と焦ったりもしたが、なんとか10時半頃には余呉湖のビジターセンターで、無事に腹ぺこ家と再会、またしじみさんとは初対面だったが合流することができたのであった。

駐車場にて

余呉湖ビジターセンターにて やる気満々の新管理人さん

 現地は空は暗く、ちょっとみぞれっぽい雪が降り続いている。けっこう酷い天気である。
 新管理人さんは新しいウエアと靴を買ってもらい、やる気満々である。

 


 天候は最悪に近いし、さてどうしたものかとみなで相談するも、「ま、とりあえず湖周道路の東屋まで行くべ」ということであっさり話がまとまる。ここに堅気の人がいれば「今日は天気も悪いし、やめてどこか暖かいところでお茶でもしない?」という話がでるのだろうが、まあこのメンツではそういう話にはならないのだな。

 今日は昼食はみなで作ろうということになっていたので、ザックに食糧をとりあえず突っ込んで歩き出す。大と生はもういきなり全開で雪に突っ込みながら歩いているので、あっという間に手袋がぐしょぐしょに濡れてしまったようである。
 新管理人さんもご機嫌に「先に行かないでください!」なんて言いながら歩いていたのであるが・・・

 30分弱くらい歩いただろうか、道の除雪が終わってしまっている。ここからは新雪のラッセルである。げげ。雪は締まっているのでそれほどは潜らないのだが、それでも歩行速度はがくっと落ちてしまう。

湖周道路にて

湖周道路にて

 腹ぺこさんはソリを出して新管理人さんを乗せていたが、この半端に堅い雪と水平な道では、ソリはちょっと引き辛いだろう。やはり何回か横転してしまったらしい。

 東屋を目指し、大と生を先発偵察隊に出してみたのだが、ちょっと先は長そうである。


 林の中に小さな小屋があったので、その影に風を避けて休憩することにする。しじみさんがGPSを出して現在地と東屋の位置を確認していた。実は使い方を聞きたかったのだが、寒くてそれどころではなかったのだった・・・
 東屋はやはりまだ少しあるらしい。新管理人さんの靴の中に水が入ったらしく、「足が冷たい」と言っている。おお!新管理人さんが弱音を吐くのは初めて見た!考えてみれば当たり前だが。3歳の女の子だぞ。ニコニコと文句ひとつ言わずに立山に登頂してしまった新管理人さんでも、こんなに寒けりゃね。
 ちなみにその時、うちの息子どもはとっくにじゅくじゅくになった手袋のために手が冷たく、半泣きであった。
 そのため、私とカミさんのフリース手袋&オーバーグローブのセットは息子どもに奪われてしまったのであった。

小屋の影で吹雪を凌ぐ

小屋の影で吹雪を凌ぐ一行 (腹ぺこさん撮影)

 このままこの小屋の影で昼食にしようか、という話もあったのだが、天候も回復しそうにないし、駐車場まで戻ろう、ということになった。

 というわけでまた来た道をえっさえっさと戻る一行であった。

 

 


 わいわい喋りながら歩いていたので、別にこの吹雪の中の雪中行軍も苦ではなかったのだが、風向きの関係で帰りは真っ正面から吹雪かれるのには参った。
 帰り道、道路の融雪設備で水がちょろちょろ出ているのを、「道路がおしっこしている」と言いだして子供達とカミさんがそれを雪で塞ぎだした。塞いでもしばらくするとまた水が出てくるのをゲラゲラ笑いながらみていたのだが、腹ぺこさんの記録の中では、

>なんでも遊びにしてしまう子供の発想力は偉大です。

 と書かれている。
 しかし。あれを言いだしたのもあの遊びを一番楽しんでいたのも、実はうちのカミさんである。ま、そんなもんだ。

 さて、そんなこんなでビジターセンターまで帰ってきた。裏の軒先を借りて店開きすることにする。相変わらず寒い!
 そんな我々を後目に息子2人は相変わらず全開で雪遊びモード。

雪上三点倒立

雪上三点倒立!

 余呉湖はワカサギ釣りしている人が多かった。それをそのままテンプラにしている家族連れもいたりして、この寒い中、外で自炊している物好きは我々だけではなかったのが嬉しかったのだった。

 


 今回のメニューはカレーうどん+チーズフォンデュである。カレーうどんは具材はやましじみさんが用意してカレールウ及び味付けはもちろん腹ぺこ氏、チーズフォンデュは何かサイドメニューと考えながらスーパーに行ってカミさんと材料を買い込んできた。

飯を作る!

寒い中、飯を作る

新管理人さんも復活!

チーズフォンデュを頬張る新管理人さん

 手分けしながら調理、息子どもは相変わらず雪遊び、新管理人さんはさすがに暖かいビジターセンターの中に避難である。
 それにしても息子ども、しょっちゅうどちらかが深雪に嵌って助けを呼びに来るのでいちいち煩わしいぞ。長靴が雪に取られたと裸足で帰ってくるので発掘しに行かねばならなかったり。

 で、気が付けば生のスキーウエアのズボンが破れている。激しすぎるぞ、遊び方が。

 ようやくチーズフォンデュができあがった。カレーうどんができるまでにはもう少し時間がありそうなので、とりあえずできたものから食べて暖まることにする。
 大量に用意したウインナーも、子供達があっという間に消費していく。
 新管理人さんもいよいよ復活してチーズフォンデュを頬張るのであった。

 次はいよいよメインディッシュのカレーうどんである。
 これは美味かった。さすがは腹ぺこ氏である。なんでもわざわざ年末に予行演習までしたらしい。
 美味いのは良かったが、ちょっと量が多かったのか?うどんがなくなってからもなおも大量に残るカレー汁。一同の胸に「残飯にはできない・・・」という山屋の習性とも言うべき強迫観念が。

 とはいうものの、腹は減っていたので別にそれほど苦でもなく、私と腹ぺこさんとしじみさんの3人で難なく完食

 


 暖かいチーズフォンデュとカレーうどんを食べて身体が内側から暖まったからか、新管理人さんも本格的に復活して食後は雪遊びの仲間入りである。
 息子どもがしじみさんを標的に雪上プロレスに興じ、いや、というかしじみさんをいじめているようにしか見えない・・・

雪上プロレス!

雪上プロレス 大&生&新管理人さん 新管理人さんの勝ち!

雪上プロレス

しじみさんを虐めないように・・・

 そのプロレスごっこが面白そうに見えたらしく、新管理人さんも参戦である。

 そのうちに大が無謀にも私に勝負を挑んできたので、あっさりと雪の上に放り投げてやった。
 こいつは最近、「ドッジボールだったら父ちゃんに勝てるよ」とかなんだか挑戦的なんである。まだまだ父親に勝つのは10年早いことを思い知らせておかなくては。
 ・・・でも10年なんてあっという間か?

 

 


 新管理人さんは雪の上をぽくぽく歩くことも気に入ったらしい。広場のまっさらな雪原をぽくぽく歩いていく。
 が、新管理人さんは体重が軽いのでぽくぽく歩けるのだが、その後を大人がついていこうとすると一歩毎にスボッ、スボッと嵌るのである。なので意外にも新管理人さんの歩行スピードに追いつけない。
 そのまま新管理人さんが湖の方にぽくぽく歩いていって・・・湖に落ちてしまったりして、でも大人が助けに行こうとしても深雪に埋まってなかなか辿り着けなくて・・・という図を一瞬想像してしまった。
 ナウシカ嬢が「そんなに遠くまで行ったらダメよ〜」と新管理人さんを呼び止めていた。顔も声も笑っていたが、微かに緊迫しているように感じてしまったのは私の気のせいだったのだろうか?
 それともすぐそういう状況を想像してしまうのは、この2人の息子どもの父親だからだろうか。とにかくこいつらには何度キモを冷やされたか・・・

 私たちはな〜んにも気にしないで遊んでいたのだが、しじみさんが時計を気にしている。
 で、「あの。そろそろ」と言うので聞いてみたら今回のメインイベントである向源寺の拝観が4時までなんだとか。そういえばそうだったわ。
 まったく、先生に引率される小学生並みである。急いで向源寺へGo!なのであるが、駐車場まで戻ってきたら突然生の姿が消えていて、もしや水路にでも落ちたかと一瞬キモを冷やしたのだが(ビジターセンターから駐車場へは水路に架かる橋を渡る)、何かよく判らないがビジターセンターの方で泣いていたりして(何があったのかは謎である)、またもや時間を取られる。

 しじみさんは万が一はぐれても辿り着けるよう、地図まで用意してくれていた。ちゃんと道程と目的地が書き込んであるのだ。さすがである。
 小谷山がちょっと格好良く見えていたりして、古戦場マニアだと賤ヶ岳だけでなく小谷山にも行きたくなるよな、なんて思いながら向源寺に到着。
 寒い!夕方になって気温が下がってきたのもあるし、一度暖かい車の中に入ってしまったからよけい寒く感じるというのもあるだろうけど、とにかく寒い!その寒い中をしじみさんがシャツ1枚で歩いていくのである!!見てると寒くなってくるぞ。

向源寺

向源寺にて シャツ1枚で歩くしじみさん 寒い!!

 

 


 拝観料を払ってお堂へ。腹ぺこさんも、「さて、俺様はどこかな?」とすっかりその気である。
 本堂に入ればそこにはお目当ての十一面観音像が。暴悪大笑面はこの後頭部で爆笑しておられるはずである。
 本道にはボランティアのおじさんがいて、この寺や十一面観音像の由来を語ってくれた。まるで予備知識もなかったので、ふむふむと興味深く聞きながらも、気持ちは「で、いつ見せてくれるの?」のひとつである。

 が、このおじさんが不吉なことを言った。
 「今は宝蔵庫を改築したので十一面観音像もこちらに移しています。6月には宝蔵庫に戻す予定です」
 え?ということは、今は暴悪大笑面は・・・「はい。申し訳ございませんが見ることができません」
 ・・・その瞬間、一同は崩れ落ちた・・・

 くそ、それならせめて横顔だけでも、とお堂の端っこから横顔を見ようとするも、よく見えない・・・写真はあるので見せてもらえるのだが、そんなのならwebでも見れるし、お堂をあちこち移動しながらなんとか見れる位置はないかと苦闘する我々に、その人の良さそうなボランティアのおじさんがトドメを刺すのであった。

 「すみません。4時になったのでもう閉めたいんですが」

 かくしてすごすごと向源寺を追い出された我々一行であった。うぅ、寒さが身に染みるぜぃ。

 というわけであとは晩飯を食べに行くのみである。ここもしじみさんが予約してくれていたのだ。おまけに地図付きなおかつ先導付きである。
 それにしても睡魔が半端ではなかった。なんとか長浜の「おりひめ」に到着。

食事風景

おりひめで食事

 大は変な顔だし生は白目を剥いているし、もう少しマシな写り方ができんのか・・・?

 

 


 鍋をつつきながら楽しく談笑していたのだが、時間が足りなくてしじみさんにGPSの使い方を聞こうと思っていたり、ナウシカ嬢に音響設備のことを聞こうと思っていたりしたことは果たせなかった。また次の機会だな。
 新管理人さんには「ジャングルおじさん」と懐かれてしまったのだ。なぜ「ジャングルおじさん」なのかはこれを読んでいただければお判りかと思うが、若い女の子に膝に乗られるなんて実に久しぶりだったので大変嬉しかった。

 腹ぺこ氏の奥さんのナウシカ嬢がAV関連機器の元バリバリの営業だったことは腹ぺこ氏のサイトで書かれていることだが、そのおかげで腹ぺこ氏の自宅には立派なホームシアターセットが組まれているそうな。今じゃ新築した自宅に、アンテナの不調でテレビはまともに入らないのにホームシアターはある、という状態らしい。
 で、その以前の社宅時代に組んだホームシアターは、その筋の雑誌に取材されたとか。これも腹ぺこ氏のサイトに紹介されている。

 前置きが長くなったが、その雑誌を持ってきて見せてくれたのである。今よりほんの少し若い2人が確かに写っておりました。
 それにしても、取材を受けているというのに短パン姿の腹ぺこ氏の気合いの入らなさは如何なものか。

 というわけで名残は惜しいが、いよいよお開きである。
 腹ぺこ氏は名神を飛ばして神戸へ、しじみさんと私は湖岸道路で大津に帰るわけだが、なんせ帰りは眠かった。まさに睡魔との闘いであった。
 あまりに遊び疲れて「おりひめ」に着いてすぐに爆睡してしまい、結局料理をほとんど食べることができなかった大も、帰りの車の中では復活を果たし、今さら「腹が減った」とかぬかしていた。

 そんなこんなで決して天候に恵まれたとは言えなかった冬の1日が、それにも拘わらず楽しく過ぎていった。
 しじみさんの幹事ぶりに甘えて気楽な1日でした。今度は六甲かな?それともまた立山かな?

 

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