平成27年9月18〜22日 薬師沢

 

 今ではもう「魔のシルバーウイーク」として伝説になっているシルバーウイークがある。それはもう6年も前、平成21年の9月の連休のことだった。
 あの年は5連休になったこと、転校が安定していたことなど、いくつかの要因が重なってあの大入り御礼の大盛況となったわけだが、今年のシルバーウイークはあの時以来の5連休なんである。しかも今年も天候はずっと晴れ予報。さらに今年は新幹線の開通効果もあるかも?

 つまり、今年はあの魔のシルバーウイークの再来となる可能性がとっても高かったわけである。
 なのでこのところ忙しいのと趣味がオートバイにシフトしつつあるせいで、さっぱり山に登っていない私も、シルバーウイークは薬師沢に行くから戦力計算してていいよ、と伝えていた。

 連休は19日から始まるのだが、魔のシルバーウイークの時は連休初日に入ったら駐車場に停める場所もなかった、ということで前日の18日から入ることに。ほんとは17日から入るつもりだったのだが、雨の強さにやる気をなくして18日入山ということにした次第である。

 入山初日、なんだか前日までの疲れをそのまま引きずっていて、登り始めてからどうも調子が悪く、アラレちゃんにも到達しないうちに登山道の脇にひっくり返って昼寝をするハメに。いやまだ朝寝か。
 1時間近く寝ていたのだが、その後は何とか山モードに切り替わったのか、比較的快調に太郎小屋に到着。

 太郎で予約状況を聞けば、19日の薬師沢は予約だけで130以上入っているとか。来たぞ来たぞ〜、魔のシルバーウイークだ!

 しかしこの前日の18日は、夕食数で15人ほどという快適さ。17日はゼロだったという。

 

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変わらない黒部川の流れ

 

 この嵐の前の静けさが漂う夜は、私の他に篠崎さんが居候で入っていた。明日は高天原に入って魔のシルバーウイークを迎えると言う。
 facebookでは入山前から連絡を取っていて、薬師見平へのルートを聞きたいとかいう話をしていたが、会うのはこれが初めてだった。
 高天原には19日、西さんも折立から一発入山して魔のシルバーウイークを迎え撃つらしい。

 

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景子ちゃん、ダワさんと (篠崎さん提供)

 

 さて試練の19日。予約だけで130人、予約外も入れると150オーバー確実と思われる正念場である。
 迎え撃つ薬師沢小屋のスタッフは、正規のスタッフが小屋番の赤塚君と10年来の厨房長の景子ちゃん、去年から入っているシェルパのダワさんの3人、居候が私と松下夫婦、それに目黒君の4人という体制である。松下夫婦と私は6年前の魔のシルバーウイークを生き残った精鋭(笑)。万全の体制ですな。
 目黒君は燕からテント泊で入って縦走してきて、なんと槍の肩から薬師沢まで一気に来た。すげぇ。

 ところが。
 予想に反して9/19の夕食数は125、素泊まりはほとんどなかったので宿泊総数も130程度だった。物足りん。
 一説によると、私が前回の魔のシルバーウイークのことを書いたので、登山者が薬師沢小屋を避けたのではないか、というのだが、いくらなんでも俺のサイト、そこまで影響力はないだろうよ。薬師沢小屋を避けても、太郎か雲の平で混むだけなんだし。

 翌20日の朝、薬師沢小屋の前を通過する登山者の数が凄かった。
 下の写真は早朝の薬師沢小屋の前の様子なのだが、これすべて太郎方面からの通過者である。

 

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大混雑の薬師沢小屋前

 

 どうあっても吊り橋で詰まるので、手前のテラスが大混雑している。ヘリポートまで人がいる。
 こんなに人が乗って大丈夫なのか?このテラス。

 このシルバーウイーク、最も混雑が予想される19-21日は、夕食のメニューはカレーライスに設定していた。魔のシルバーウイークでは最も混雑した日は通常メニューで討ち死にして、食材が足りなくなったこともあって翌日からカレーライスになったのだったが、今回は最初からカレーライスである。
 なので仕込みは楽だし配膳もないので、夕食数200くらいまでは余裕で対応できるのに・・・

 下写真は凍らせていたカレーの解凍を始める景子ちゃん。

 

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カレー!

 

 ちなみにカレーは数日前から作ったものを凍らせていたようだ。それを朝に解凍して夕食に出す、というわけで、カレー対応の場合は夕食の仕込みはサラダを作って配膳するのと米を炊くくらいしかないので、物足りんくらい楽なんである。

 そんなわけで20日も、居候は日中ヒマを出してもらった。松下夫婦も目黒君も釣りに行くと言う。
 俺も釣りしてもいいんだけど、昨日のテント場(薬師峠)が300張りを超えたという話を聞いて、居候で入ってきててテン場の担当になっている勝山さんの顔でも見に行こうかな、とふと思ったわけだ。
 思ってるだけにしておけば良かったのに、口に出してしまった
 するとすかさず景子ちゃんが、「だったら私の携帯、電波拾ってきて」と。

 どういうことかというと、薬師沢は当然、携帯は鉄壁の圏外である。携帯どころかラジオの電波もつい最近までNHK第二しか入らないと思われていた。窓際にKNBが入るポイントがあることがダワさんによって発見されたのは去年のことってくらい。
 なのでここで働いている人たちは、世間からは完全に音信不通になっているわけで、つまり携帯を太郎小屋に持って行ってメールなどの受信をしてきてくれ、ということで。太郎小屋周辺はドコモなら辛うじて電波がある。

 小屋番の携帯も頼まれてしまった。
 というわけで、景子ちゃんと小屋番の携帯を持って太郎小屋に行くことに。
 太郎までコースタイム3時間ほど。ここは当然タイムアタックだが、すれ違いが多すぎて1時間半は切れなかった。

 太郎小屋でうっかりしていたら、昼食がカレーだった。しまったカレー以外で、と頼むのを忘れていた。
 今朝もカレーだったんだぞ〜。

 20日は各方面の山小屋で史上空前の混み具合だったらしい。高天原もなんとなんと200人オーバーという、物理的にあの小屋にそんなに入るの?という想像を絶する混み具合だったらしい。
 居候の西さんが夜中にうなされて壁にケリを入れていたとかいう噂も聞こえてきたが・・・

 

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朝のお茶のひととき

 

 その日は100にも届かなかった。カレーで100人に達しないと働き足りないぞ。

 翌21日は午前10時から午後3時まで休みをもらった。昼に小屋にいるとまたカレーを食わされるので、居候たちは蜘蛛の子を蹴散らすように小屋を飛び出していった。
 景子ちゃんが昨日来ていたメールの返信を打ったらしく、「また太郎に行くぅ?」とか聞いてきたが、無視して釣り&写真撮影に。

 

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薬師沢小屋

 

 上の写真、減光フィルターをかまして8秒というロングシャッターを切った写真である。

 

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上流の流れ

 

 ここは上流の中州の上。
 目黒君もここが大好きらしく、好きすぎてこれと同じアングルの写真をスマホの待ち受けにしていた。

 釣りもしていた。
 昨日から松下さんたちが魚影が薄いとさかんに言っていたのだが、確かに午前中下流に行ったときは、「イワナ、いなくなった?」と思うほどイワナの姿そのものを見なかった。
 上流ではポイントに毛針を入れるとライズはしてくるので、ああイワナいるんだ、とひと安心。
 結局俺の腕のせいで釣れはしなかったのだけど、毛針に魚が来るだけで釣りは楽しいので、これで良いのだ。

 

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忙しく働くスタッフ&居候たち

 

 21日は山ちゃんも来ていたので、居候大集結である。

 22日は俺と目黒君が下山する日。松下夫婦はもう1日いるんだそうだ。そうやって少しずつ人がいなくなっていくの、小屋に残るスタッフにすれば寂しいんだよね〜。
 槍からテント装備で1日で薬師沢まで来る人と一緒に歩けるわけがないので、先行して出発。

 

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第二徒渉点付近の紅葉

 

 それにしても素晴らしい天気。
 今年は紅葉が早く、この時期にもう盛りだった。数年前まではあまり目立たなかったナナカマドが増えているのか、ここらの紅葉も少し派手になったような。

 

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太郎小屋と薬師岳

 

 草紅葉も綺麗。

 今年はこの1回で薬師沢も終わりか、と思うと少し寂しいが、来年はまた何回か来よう。
 ヒマな時期にも来ないと、1日かけてゆっくり沢を歩くこともできないし。

 

 

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