ナイフやマルチツールなど

レザーマン ジュースS2

 

 男の子はナイフが好きである。ナイフだけではなく、銃器類や戦艦、戦闘機などの"武器・兵器"に一度はハマるのが男の子である。大人になってもミリタリーのプラモデルに全小遣いを投入したりサバイバルゲームに夢中になっているような少年の心をそのまま持ち続けている人はけっこう多い。私のお友達だと例えばこんな人とか。
 ま、闘争は男の本能だから仕方ないよな。
 私も少年の頃は戦艦大和のプラモデルに夢中になった時期がある。今はもう「鑑賞する」という嗜好がないため、ミリタリー系のプラモデルにはもう興味がないのだが。ナイフ収集が趣味の人も大勢いるけど、彼らだって大半の人は実際に道具として使うというより鑑賞しているわけだから、私の趣味とはなり得ないのである。
 でも、私でも山に登ればやたらタイムアタックばかりしているし、自転車に乗っても「今日は60kmを3時間以内で走破するんだ」というような、要するにタイムアタック系である。仕事で解剖すれば、牛の頭蓋骨を開いて脳を取り出すのに何分かかるか、という脳出しランキングを熱心に職員の間で競争していた時期もあったし。私のタイムアタック好きも遺伝子に刻み込まれた闘争本能の発現なんだろうな。
 そういえば鶏の採血ランキングにも熱中していた時期が。

 前置きが長くなったが、まだ前置きである。

 私の父親もナイフ好きだった。我が家には親父の形見のナイフが何本も転がっているのである。他に何本かは弟の家にあるので、相当な数を収集していたらしい。でも、貧乏根性が強い人だったし(現にあまり裕福でもなかったのだが)かなり徹底したリアリストだったので、ブランドにはたいして執着しなかったらしく、形見のナイフはオークションで売ってもあまり金にならなさそうなどこのモノともしれないようなものばかりである。
 ナイフだけでなくハサミやドライバーなどのいろいろなツールが付いたモノ、昔は「5徳ナイフ」とか「10徳ナイフ」などと呼ばれていたツールもいくつかあるのだが、あの手のモノの安物って、特にナイフやハサミといった「切る」系のツールがまるで切れない。切れない刃物ほど腹立たしいモノはない。
 よって、この手のツールを山に持っていくことはあまりなく、自分でビクトリノックスなどのツールを買う気もあまりしないまま、今日に至っているわけである。

 だいたい、登山でナイフを使うことってあるか??キャンプにナイフが必需品みたいに言われていたのは30年も前の話で、今じゃ薪をするのに木の枝を切り落としてくることも今日日のキャンプ場ではできまい。ちなみに生木は燃えにくいので、薪をするにしても落ちている木の枝の方が良いのである。ナイフやナタなどの出番はない。
 せいぜい調理に包丁が必要なくらいで、それもフリーズドライを多用して軽量化を図るとナイフの出番はどんどん少なくなる。

 ちなみに冬山ではナイフは必携である。
 それは就寝時にテントが雪崩で流されたり積雪で潰されたり、はたまた火災などの非常事態の際に、テントを切って脱出するために必携なのである。クライミング時の事故の際にロープを切るにも必要だし。
 従って、ナイフは入山時から下山時まで、片時も肌身離さず所持していなければ意味がない。首からネックレスのようにぶら下げておくわけだが、そういう使い方をするため、大げさなモノは必要ない。できるだけコンパクトな、刃渡り3cmほどの折り畳みナイフがベストだった。就寝時も枕元に置いていたりすると非常時には絶対見つからないので、とにかく寝る時も首から提げておくわけで、できるだけ軽くてコンパクトなモノでないと肩が凝ってしまう。

 それに対し、ハサミは比較的よく使うかも。テーピングテープで捻挫や靴擦れの手当をする時に使ったり、食糧袋を切ったり、ハサミは出番が多いツールである。切れないハサミほど腹が立つモノもない。

 ドライバー類はこれまでほとんど使ったことがない。補修にドライバーが必要な道具を使ったことがほとんどなかったためであるが、最近買ったブラックダイアモンドのストックが、固定力の調節にプラスドライバーが必要なのである。
 だいたい調整に工具が必要、という時点で造りが甘い道具、と言えないこともないのだが、その他の点ではまずまず使いやすいし仕方ないので親父の形見の5徳ナイフをここしばらくは山に持って行っていたわけである。
 でも、ドライバーのためだけに切れないナイフやハサミが付いた重いモノを持っていくのも嫌だなぁ・・と思っていたところなのである。現にハサミもナイフも別に持っていく羽目になっていたわけだし。

 という気分になっていたところに、こんなモノを見つけてしまったので、ついフラフラと衝動買いしてしまった次第である。

 

 レザーマン ジュースS2  \10,500

●長さ:86mm(収納時)●重量:120g●仕様:・ニードルノーズ・プライヤー・直刃ナイフ・ワイヤーカッター・ハードワイヤーカッター・マイナスドライバー (特小、小、中、大)・プラスドライバー・紐取り付けリング・栓抜き/缶切り・ハサミ

 

 ドライバー、プライヤー、ナイフ、ハサミと必要最小限のツールが付いたモデルを選んでみた。爪ヤスリとかコルク抜きは不要じゃ。
 プライヤーは意外に使うのである。山に持っていったことはないので使ったことはないのだが、締め込みすぎたストックを緩める時やバーナーを分解する時など、「プライヤーで掴めれば・・・」と思う局面はかなり多い。
 また、あまりに小型だとナイフやハサミが使いにくいので、ある程度の大きさがあって、その中で最大限軽量コンパクトで・・・というモデルがこのジュースS2だった。

 

レザーマン ジュースS2

レザーマン ジュースS2 収納状態

レザーマン ジュースS2

プライヤー、マイナスドライバー、プラスドライバー、缶切りをオープン

レザーマン ジュースS2 全ツールオープン

全ツールオープン状態

 

 スペック上は120gほどで非常に軽い造りなのだが、モノが小さいためかけっこう重量感はある。
 新品だから当たり前かもしれないが、ナイフ、ハサミといった「切る」系のツールがちゃんと切れるのは感激した。
 また、写真では全てのツールを半端に出した状態にしているので判りづらいが、どのツールも単独できちんと出した状態では使いやすいのもさすがである。まあこの価格だからこのくらいは当然だが。

 というわけで、ようやく5徳ナイフを持って行っているのにナイフやハサミを別に持っていく、という事態から解放されるというわけである。

 

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