ブラックダイアモンド
トレイルコンパクト

 

 モンベルのストックはずいぶん長い間使っている。
 結局2組買ったわけだが、そのうちの1本は沢で徒渉中に流され翌年下流で発見されて薬師沢小屋番のタモ受けになっているのは以前書いたとおりである。(一応リンク張ったけど、わざわざ見に行くほどのことは書いてないですよ)

 その後、1本は何かの拍子に曲げてしまい、伸縮ができなくなってしまった。
 というわけで現在なんとか現役として使用できているモンベルストックは2本(1組)という状況だったわけである。

 家族で登る時はカミさんにストックを取られてしまうので、そろそろ新しいのを1組買わなきゃなぁと3年くらい思っていたわけだが。

 実は数年前、仕事の空き時間にふらりと入った登山用具店でブラックダイアモンドトラバースというストックを衝動買いしていた。冬山用のストックというモデルで、ストックの先にはスノーバスケットが装着されているモデルなのだが、別に夏に使っても何の問題もない。
 が、このモデル、伸縮が2段なので縮めた時にあまり短くならず、使わず収納していることも多い夏山(それも岩稜や沢を含む)にはやや不向きだったのであった。

 で、今年の穂高のために1本買うか、というわけで買ったのがこのトレイルコンパクトである。
 実はその1ヶ月ほど前に、登山を始めた職場の女の子がストックを買いたいというのに付き合っていろいろ見ている際に、これが一番良さそうと当たりをつけていたのだった。もちろん彼女にもこれを勧めたのだが。

 価格が比較的安いということとグリップの握り心地が良く、かつシャフトにも延長されているので急な登りの時などにも使いやすい、ということでよく売れているのも判る。急に山でよく見るようになってきたので、おそらくバカ売れしているのではないか。

 

ブラックダイアモンド トレイルコンパクト

ブラックダイアモンド トレイルコンパクト

 

 ブラックダイアモンドのストックがよく売れているもうひとつの理由は、このメーカー独自のフリックロックと呼ばれる固定システムにあるのは確かだろう。
 レキを始めとする他メーカーのストックは、シャフトを回転させて締めて固定するのに対し、ブラックダイアモンドは下写真のようなレバーで固定する方式を独自に開発して採用している。これが使いやすいと評判が良いのだ。
 まあ確かにワンタッチでパチン、と固定できるのでストックを取りだして設定したい長さに調節するのに係る時間は、ブラックダイアモンドの方が早いよな。

 

フリックロックシステム

ブラックダイアモンド フリックロックシステム

 

 でもこの方式にも欠点がないわけではないのだ。

 まず、ストックに大きな突起(フリックロックのレバー)があるので、ヤブっぽい場所で使うとやたら引っかかる。まあ行動を阻害されるような引っかかり方はしないものの、木の葉や蔓などをズルズルと引きずって歩く羽目になる。

 また、"固定の強さ"の調節に+ドライバーが必要、というのも欠点かな。
 回転式だと固定力の調節は、要は"どこまでねじ込むか"であり、各メーカーで「軽い力で強い固定力を得るシステム」を凌ぎを削って開発しているわけである。
 ブラックダイアモンドの場合は、上写真に見えるネジの締め込み具合で締めた時の固定力が決まる。つまり、現地で調節したくなった時にプラスドライバーがないとお手上げなのである。私は普通、山にドライバーなど持っていかないのでこれはちょっと困るなぁ。

 それとこの調節システムと関連するのだが、絶対的な固定力は回転式より弱い。
 かなり強力に締め込んでも、全体重をかければ動いてしまう。もちろん、ストックには全体重をかけるような使い方をしてはならないのだが、かかってしまう時があるのだよ。そういう時って不測の事態だから、その時にストックが動いて縮んでしまうのはかなり危険である。

 で、全体重をかけても動かないような固定力を得ようとすると、ネジの締め込みが強すぎてレバーをロックする作業が異様に辛くなる。「ぱちんと手軽にワンタッチで固定」とはほど遠く、両手で渾身の力を込めないと固定できなくなってしまう。
 逆にこのネジの調節が緩いと、軽くストックを突いただけで縮んでしまう程度の固定力になってしまう。

 というわけで、このストック、山に行く前に自宅である程度きちんとネジの締め込みを調節しておく必要があるのだ。店頭に並べられている時はたいていの個体が緩く、ストックを突いて軽く上から抑えただけで縮んでしまう程度のセッティングになっているし。
 でないととっさの時(例えばバランスを崩して転倒するのを支えようとした時など)にストックが縮んでしまって危険である。
 ユーザー、この1〜2年で非常に増えているような印象があるのだが、みんなちゃんとセッティングしているのかなぁ?

 それともうひとつ。

 ポールの剛性そのものはレキやモンベルより低い。良く言えば「しなる」ポールである。
 なので手にガツガツとしたキックバックが少なく、使いやすいと感じることが多いのだが、下りで目一杯飛ばすような使い方をする時は少し頼りない印象を受ける。そういう時はガツガツとした手応えの方が安心して飛ばせるのだ。
 ま、飛ばしている時は足元に集中しているので、それほど気にはならないのだが。

 というわけで、使いやすい良いストックだとは思うのだが、このフリックロックの調整だけは心配である。ユーザー全員が山行前にきちんとセッティングを出しているとはとても思えないのだが・・・

 

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