パタゴニア ディメンションジャケット

 「登山用具メーカーのカタログ」のコーナーにパタゴニアなんぞを書いていたのは、実は前振りだったのである。

 前から1着欲しいと思っていたのだが、ついに買ってしまったのである。話のネタに。最近の買い物はそんなのばかりでちょっと動機が不純である。

 パタゴニアのソフトシェルにはちょっと興味があった。
 買うならディメンションジャケットコアスキンジャケット、もしくはレディミクスジャケットあたりを考えていたのだが、東京のさかいやスポーツで実物をあれこれいじり回した挙げ句、ディメンションジャケットにした。

モデル名

Style No.

構成(インサレーション)

重量

その他

価格

ディメンション・ジャケット

M's 83683
W's 83693

ポリエステル・ニット

709g

CSS

\36,750

ホワイト・スモーク・ジャケット

M's 29651
W's 29656

ポリエステル・ニット

879g

CSS

\38,850

コア・スキン・ジャケット

M's 84453
W's 84463

片面起毛R2

567g

 

\35,700

レディ・ミックス・ジャケット

M's 84920
W's 84930

なし

425g

CSS

\29,400

パタゴニア 234x600

注)平成17年2月15日より、パタゴニアが商品リンクの提供を一時中止したので、以前の画像をクリックするとダイレクトに該当商品のページを表示する機能が使用できなくなりました。
 表の中のアイコンをクリックしてパタゴニアのオンラインショップのページを表示し、Style No.を入力すると該当商品を表示することが出来ます。

 この3モデル、性格は明確に分けられている。
 レディミックスジャケットは1枚地、ディメンションジャケットは薄手の裏地、コアスキンジャケットはフリースの裏地付きである。なので同じサイズでもフィットはそれぞれ違う。レディミックスとディメンションは保温性はレイヤリングで確保することが前提なので、それ相応のインナーを着る余裕があるフィットで、コアスキンはそれ自体が保温性を確保しているので下には薄いインナー1枚のみ、という想定でかなりタイトである。

 「話のネタ」という予断がなければ多分コアスキンジャケットを買っていた。フリースの裏地といっても厚手ではないので動きやすく軽快だし、フードがないので上にハードシェルを着込むのも楽そうである。けっこう保温性が高いので夏は出番がないかもしれないが、冬は厚手のアンダーを下に着れば、それだけでかなり気温が低い場所での行動もできそうで使い勝手がむちゃくちゃ良さそうだった。普段着でもいけそうだし。

 だが、惜しいことにこのコアスキンジャケットは、今季パタゴニアの目玉であるCSSが未採用なのである。
 CSSとは生地同士を接着剤で接合しているので縫い目がない、という技術で、ウエア全体から糸を排除したのはこれが初めてではないか。
 パタゴニアの説明によれば、縫い目をなくすことで耐水性や耐久性が増し軽量コンパクトになるということなんである。どんなもんじゃろか。
 そんなわけで「話のネタ」なのでコアスキンジャケットは涙を飲んで見送りとなった次第である。多分来シーズンは採用されるだろうし。

patagonia Dimention Jacket

パタゴニア ディメンションジャケット

CSS

生地接合部 縫い目がない!

 耐水性や耐久性の向上というのは理屈で理解できる。縫い目が弱点だからこそゴアのウエアにはシームテープが必須なのである。
 耐久性に関しては、接着剤が糸より強ければ確かにそうだろう。まあそのあたりは十分に検証された上で市場投入されているのだろうし。
 まあ耐水性や耐久性については時間をかけないと判らないのだが、軽量コンパクト性については確かに実感できる。なによりこの程度の厚さの生地のウエアとしては、驚くほどコンパクトに畳める。確かにこれは縫い目がないことによるものだろう。

 また細部の造りはアメリカ人が作ったものとは信じがたいほど丁寧である。
 フードを絞るドローコードがポケットの中に出ているため、ウエアの外をコードがぶらぶらしないなんてあたりはちょっと感動ものである。
 またフードはその開口形状が非常に良い。写真のように横に広がった状態に開くため、フードを絞ったときの視界が抜群に良い。またその状態で振り向いたりしてもちゃんとフードがついてくる。このあたりの感触は今まで使ったどのメーカーのウエアよりも良い。
 ただ、そのフードの調整そのものはモンベルの方がやりやすいと感じた。フードの内側に調整テープがあったりして、着たままの調整は難しそうなんである。
 ちなみに写真でファスナーが口元で曲がっているように見えるのは、本当に曲がっているのである。アンダーのファスナーと干渉しないため、ファスナーを口元でオフセットするのが最近の流行なようで、モンベルは右に曲げている。

 モンベルの場合、ソフトシェルはアウターの機能を持たせた中間着、という定義付けのようである。少なくとも現在のラインアップではそう受け取れる。ライトシェルもマウンテントレーナーも、みな基本性能は中間着すなわち「山シャツ」であり、それに防風性や撥水性といったアウターとしての機能性を加え、さらに伸縮性も持たせて運動性能も向上させた、という造り方である。
 これは伸縮性を持ったウインドブレーカーであるストレッチウインドジャケットをソフトシェルに入れていないことを見ても判る。ソフトシェルだ、と言っても誰も「違う」とは言えないウエアなんだが。

 それに対し、パタゴニアではソフトシェルはシェルに徹しているように思える。このディメンションジャケットも造りはシェルそのものである。単に完全防水ではない替わりに透湿性に優れた生地を使っているだけである。

 考えてみれば20年前は冬山に防水性は持たないダブルヤッケで行っていたのである。そうか、あれはソフトシェルだったのか!
 ま、日本の冬山は雨が降る場合もあるし深雪のラッセルなど防水性も必要な場面も多いので、ゴアなどのハードシェルの方が何かと都合がいいのだが、高山帯などでは防水性はさして必要ない場面も多々あって、それなら透湿性に優れたウエアの方が有利、という考え方も十分ありなんである。

 だとしても山によってはハードシェルはまったく不要、とも言い切れない場合もあるだろうから、ハードシェルも非常用に持っていくということも多々あるのだろうが、そうなるとハードシェルはできるだけ軽量コンパクトな方が良いだろう。
 ということに気づいてパタゴニアのカタログを見てみると、ちゃんと揃っているのである、軽量コンパクトなハードシェルが。総じてパタゴニアのハードシェルは軽い。アンダー500gのモデルがいくつも用意されているし、400gを切るものすらある。モンベルだと500gを切るものは1モデルしかないので、これはかなりハードシェルの軽量化には力を入れていることが判る。
 ちなみにモンベルとパタゴニアはサイズ設定が違う。モンベルのカタログでは日本サイズのMの平均重量がカタログに載っている重量である。
 パタゴニアも名言はされていないがおそらくMサイズの重量を表記しているのだろうと思うのだが、これはUSサイズなので日本サイズのMよりは大きい。日本サイズのLに相当するくらいのサイズである。
 ということは、カタログ表記の重量がパタゴニアとモンベルで同じモデルがあるとすると、パタゴニアの方が基本的に軽量だ、ということになるのだろう。

 メインのシェルはあくまでソフトシェルで、ハードシェルは非常用、というスタンスだとすると、これらの重量設定は非常に理にかなっている。
 現にソフトシェルは驚くほど軽い、というわけではない。非常に軽快な感じがするディメンションジャケットでも700gほどある。

 まあそんなわけで、かなり細かいところまでいろいろ考えてモデル展開をしているのが判って非常に面白いのだが、それでも日本じゃやっぱりあまり出番はないだろうなぁ。
 確かに冬は良さそうな感じではある。土砂降りでなければ雨具代わりにも使えそうなくらいの耐水性もありそうだし、天候によってはゴアのウエアより十倍くらい快適そうでもある。


(05.03.05追加)

 まだ山には着て行っていないのだが(というか山に行ってない)、しばらく普段着替わりに使ってみた。昨年の年末までなら、嫌と言うほど雪かきで試せたのに・・・年が明けてからはそんなに降ってないのだ。

 ま、着てあれこれ動いている限り、普通のゴアのハードシェルとそれほど着心地は変わらない。似たような、まさにシェルそのものといった感じである。
 ただ、その極めて柔らかい着心地はやはりゴアのウエアとは違うな。伸縮性も十分あるので、アンダーに厚手のフリースなどを着込んでいても運動性はそれほど妨げられないだろう。

 透湿性はどうかというと、やはりけっこう厚手の生地で裏地まで付けられているので、腕周りがそれなりに蒸れる感じはある。ま、けっこう厚着になっているときの話なので、ゴアのウエアに比べたら圧倒的な透湿性能ということに変わりはないのだけど。胴回りは大きく開放できるポケットのもあるし、まったくノープロブレムである。

 この裏地であるが、保温性を向上させるほどの厚みはない。ミッドレイヤーを1枚省略できるほどの保温性はなく、せいぜい少し薄手のものに替えることができる程度の最低限の保温性である。むしろこの裏地は吸汗性能の向上を狙って付けられている様子なのだが、素肌の上にこのウエアを着るようなシチュエーションはちょっと想像できないので、アンダーの補助くらいの意味合いなのかな?

 要するにまとめると、シェルとしては極めてまっとうでしっかりした造りである。確かにほとんどの場面でシェルとして通用すると思うし、例えば5月の連休くらいの時期の北ア辺りの稜線では、これ着て行動するとむちゃくちゃ快適そうである。
 ただし、強い雨が降ったときのために、非常用のハードシェルの携行はやはり欠かせない。レインシャドーとかジェットストリームとか、はたまたスペクターといったパタゴニアお家芸の超軽量シェルは、いわばソフトシェルのオプションパーツなのである。

 ちなみに耐水性であるが、けっこうなかなかのものである。ま、最終的にはきっちり浸水はするのだが、手やザックで圧を加えない限り、外側はべっしょり濡れてもまだ頑張っている感じである。
 ま、それは最近の撥水処理をしたソフトシェルならなんだってそうなのだが、例えばマウンテントレーナー(モンベル)などにしても同様にかなり頑張るのだが、実は真っ先に縫い目から浸水しているのである。生地はまだ持ちこたえていても縫い目部分はしっかり濡れてしまう。
 そのあたりは縫い目のないCSSの威力は抜群である。確かに生地接合部からの浸水がない。
 ・・・ま、とはいってもザックを背負っていたりして圧がかかれば簡単に浸水してくるので、雨が降ったら素直にハードシェルに着替えるか上から羽織るかした方が良いのは当然である。

 パタゴニアのソフトシェルでは、レディー・ミックス・ジャケット(Style No. M's:84920 W's:84930)がディメンションジャケットと性格が比較的よく似ている。というよりディメンションジャケットの裏地を省いて生地をもう少し薄手にしたものがレディーミックスジャケット、という感じである。
 なのでオールシーズン使い倒すにはレディーミックスが非常に面白そうである。ディメンションはさすがに夏場は少し暑苦しいかもしれない。

 

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