独断と偏見まみれのストーブ考察

 高校の頃は県高体連の方針で「ガソリンストーブは禁止」だった。なんでも「危険だから」という理由らしい。ついでにガスストーブも補助的に使用することしか認められておらず、基本的に「灯油ストーブ」だった。
 灯油ストーブ・・・まあ楽しかったけどね。灯油が安全でガソリンが危険という判断もちょっと納得しかねるものはあるにしても。

 灯油ストーブは箱から出してまず組み立て、メタの受け皿にメタを燃やしてのんびりと予熱する。後はポンピングしてタンクの内圧を上げ、ノズルから気化した燃料を噴き出させ、それに点火するという意味ではガソリンストーブと変わりない。
 ただ、灯油は気化熱が高いのでこの予熱を相当のんびり行う必要があった。でないとノズルから気化せず液体のままの灯油が噴き出し、それにメタの火が点火すると囂々と灯油を燃やすことになってしまう。
 高校山岳部の競技登山は、通常の高体連、インターハイ予選、国体予選、踏査大会と何種類かあって、それぞれ特徴があったのだが、インターハイ予選ではこの「灯油ストーブ点火競争」があった。ヨーイドンで箱からコンロを出して組み立て、点火するまでのタイムを競うという、バカバカしくも楽しい競技である。
 ある年のインハイ予選でこのストーブ点火競争に出て、自分たちはさっさとストーブに点火してよその高校をのんびり見ていた時(確か2番目くらいだったような)、どこぞの高校が高らかに炎を巻き上げていた。「あ〜あ、予熱不足なのにポンピングしちゃったな」と思いつつ見ていたのだが、一度火がついてしまうと圧を抜こうにも熱くてバルブに触れない。故にますます灯油は吹き出てますます勢いよく燃える。タンクの灯油がなくなるまで燃える。
 どこのバカな高校だ??と思ってみたら、なんとうちの高校の女子だった、ということがあった。
 ほんとに灯油ストーブの方が安全なんですか??

 規則は破るためにある、と思っていた当時の我々だから、当然個人でガソリンストーブを買ったやつがいた。それも多分当時出たばかりのコールマンのピーク1。
 一時はメンバーの垂涎の的だった。「あいつ、すっげぇ良いもん買いやがった」って。でも使ってるのを見るとどうもそんなに使いやすそうに見えない。予熱は不要だけど結局ポンピングは必要なわけだし。そのうち誰も羨ましがらなくなった。
 さらに大学時代になって、冬山で持っていたピーク1が山中で壊れてしまい、危うく死にそうな目に遭ったやつが出て来るに及んで、「コールマン欲しい病」はすっかり完治した。

 高校時代にEPIが「寒冷地用ボンベ」を引っさげて衝撃的に登場し、興味はむしろガスストーブに移っていた。でもまだその頃はボンベの残量で妙に火力が不安定になったりということもあって、「これ1つで冬山へ」とまでの信頼感はなかったように思う。
 大学時代のストーブはホエーブスが主力だった。625を「大ブス」、725を「小ブス」と呼んでいたものだ。
 大学の団体装備で大ブスを、自分の個人装備で小ブスを持っていたので、たいていの冬山はこれ2台で行っていたように思う。
 ブスはメタによる予熱は必要だったが、点火した後の火力の調節はコックで行うことができ、これがまたかなり微妙な調節が可能だった。最近コールマンの508Aを買ったが、絶対これより小ブスの方が微妙な火力調節ができた、と思う。
 また、ジェネレーターがないという点も、却って「故障する場所がない」という点で優位だった。せいぜいノズルが詰まるくらいで、それも針が1本あれば解決、である。
 ホエーブスは最近生産中止になってしまって残念である。ヤフオクで出品されているのを見かけるが、とんでもない値段が付いていてとても手を出す気にはなれない。あの小ブス、今でも持っていれば良い値が付いたのに・・・部室に寄付してきてしまった。

 大学の後半になって、山岳部もとうに辞めて1人で山に行く機会が多くなった時、プリムスのガスストーブを買った。名器2243である。
名器2243

 この火力の強さは衝撃的だった。「なんだかんだ言っても火力はガソリン」という迷信を見事に打ち砕いてくれた。
 もうかれこれ15年使っているが、まったくのトラブル知らずである。


当時はこんなパッケージ

 

 ちなみに、15年前は左写真のようなパッケージだった。
 今はハードケースのようだが、私としてはこのパッケージの方が好ましい。


 

 しばらくは1人で登ることが多かったため、これ1台で何も不便を感じずにいたが、家族でしかもテント泊で登ろうとすると、やはりもう1台は必要になる。
 「買う」となると不思議にガスストーブって物欲を刺激しないんだよな〜。で、血迷ったかコールマンのスポーツスター508Aを買ってしまった。

コールマン508A

 

 でもこのコールマン、キャンプではまだ良かったのだが、「山に持っていく」ということになると、やはり重い。でかい。
 おまけに火力は弱い。プリムスと比べて明らかに弱い。
 点火直後の炎が安定しないのはガソリンストーブの宿命だから仕方ないとしても、やはり微調整はやりにくい。ポンピングのポンプと火力調節のノブの位置が離れているのも甚だ疑問だ。点火してからコンロを回転させないと火力調節ができない。
 というわけで、物欲に釣られて買ったものの、2回ほど使っただけで愛想が尽きて、ヤフオクに出品してしまった。
 「コールマン欲しい病」は実は完治していなかったのね。
 やはり1度は感染しないと免疫はなかなかできないものである。


 で、現在は2台目のガスストーブ購入作戦を展開中である。
 2243をもう1台、というのが一番「まとも」かもしれないが、それでは物欲を毛ほども刺激してくれないっ。
 で、P-171を買おうかと。問答無用の大火力、というやつを試してみたくて。


 スポーツスター508Aは無事売れた。フューエルボトルをおまけに付けたせいか、けっこうな値段で売れた。
 で、さっそく買っちまった。プリムスのP-171を。

Primus P-171A

 脅威の4200kcalである。さっそく次の山で使ってみよう。
 が、今の時点で気づいたことをいくつか。
 造りはなかなか凝っている。バルブ部分の角度(点火装置に対しての)を自由に変えることができたり、ゴトクも折り畳み式のアームを伸ばして写真のように大きな鍋などを乗せることができるようになっていたり。
 でも、ちょっと嫌な予感がするのは、バーナーの直径が小さい。2243と比較して明らかに小さいんである。バーナーの直径は鍋底を熱する炎の直径と直結しているので、ここが小さいと大きな鍋を乗せるには使いにくいんだなぁ・・・
 バーナー径が小さいと、狭い範囲に炎が集中するため、スペックほどの火力を感じないことが多く、また大きな鍋でカレーなんぞを作ると、底が焦げやすいんである。
 まあ、小さいとは言っても2243と比較しての話だし、しばらく使ってみないと細かいことは判らないが。数回使ってみて、2243とP-171とどちらがメイン機になるのか?

 ゴトクはこの十字型が大好きである。なんつっても風に強い。ガスバーナーは特に風に弱いので、私はこの十字ゴトクの機種以外は買うつもりはなかった。
 ただ、この折り畳みアームのゴトク、こういう子供だましのギミックは大好きなのであるが、その折り畳みが堅いのが気になる。4本とも硬さが違うのはもっと気になる。
 ま、8000円かそこらのものに、そこまでの工作精度を求めるのは無理というものだが・・・

 


(07.4.29)

 ストーブはかなり久しぶりの更新である。P-2243とP-171の2台体制で十分だったのだが・・・

 ま、火力は良いのだがちょっと重いし嵩張るな、とは思っていたわけよ。バーナー部が大きいのは、自分で選んだ仕様だったのだけど、これだとザックにパッキングするときにコッヘルの中に入れるのであるが、一緒に入れるモノの自由度が低かったわけである。
 なので火力は十分でバーナー部が小さくコンパクトなP-153はちょっと欲しいなとは思っていたのであった。

 そのうちP-153は、20周年だかの記念モデルが出た。チタン製になって少しだけ軽くもなった。
 ここまで来るとモロに私のツボに入っているので、「うぉー、欲しいっ」と思いつつも、なんとか誘惑を振り切っていたのであった。

 それがさ。
 先日、サワークライマーの注文をするために好日に寄ったら、なんと発売後1年以上経つのに記念モデル、あるじゃないの。

P-153Ti_1.jpg

P-153Ti

 

 で、買ってしまったのだった。しかもクレジットカードで。

P-153Ti_2.jpg

P-153Ti

 やっぱ軽いし格好いいし、良いよね。

 

 


 

 

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