インハイ予選

S57 6/12-13

by 理系の横山

 序章  前日まで

 2年以上の奴は知っていると思うが、インハイ予選というのは修学旅行、第1回実力考査という2大イベントの直後にある大事な山行だ。当時2年だった5人の中から4人選んだわけだが、その方法は最も素朴かつ合理的だった。5人で輪になり額に冷や汗を流しながら「ジャンケンホイ」
 ちゅうわけでみんなあまり勝つ気がなかったわけや・・・
 で、決まったのは石島を除く4人。みんな夏休みにはもぐりの個人山行でアルプスに行く予定をしていたから、「もし優勝したらどないしょ」などとアホなことをゆーとる奴がいた。(堀田とは言わないが)

 1章 幸せの予感

 紙面の都合で話は当日へ飛ぶ。高い金を払って国鉄に乗り、近江長岡駅へ。そこからテクテクと1時間以上歩いて上野神社へ。ところがここでちょっとしたケンカがあった。その時までは4人が話し合った結果、圭吾と俺の国体予選入賞コンビに荷物の比重を傾けることになっていた。(ちなみに規定では4人で100kg) しかしその2人が突然、「あんまり重い荷はいやじゃ」と一見正当に聞こえる突発的わがままによる利己的発言をしたもんやから堀田と池上が怒りよった。しかしこの時は口下手2人組の主張が通って4人ともだいたい25kg前後を持つことになった。思えばこれが悲劇の幕開けだった。昼飯を食って順番を待っている間、みなは何を考えていたのだろう・・・・・・

 2章 バカなのはだぁれ

 出発は確か11or12番目やったと思う。出発が近づいてくると小心な俺の胸はやたらどきどきしてくる。ちなみに俺はトップ(ペースメーカー)だった。あと1分・・・30秒、となるとのどが渇いてきて胸が熱くなって足が浮いてきやがって何ともいえず興奮してきて例えようもなくいい気持ちに・・・なるわけがない。
 目を閉じて深呼吸をし、誰にともなく熱い視線を向け、「も・・・もっと・・・」違うっちゅーのに!!
 Goサインが出ると4人1丸となって歩き出す。そして林道のくせにすぐに急登が出てくる。ペースメーカーの俺は頭の中にとある音楽を思い浮かべ、そのリズムに乗ってみなを引っ張っていった。5分もせんうちに前のパーティーに追いついた。
(よっしゃ!いける!)
 俺はほくそ笑んだ。林道の中でもう1つのパーティーを抜き、3つ目のターゲットを捉えた。
(他の奴ら、たいしたことないぜ!!)
 俺は青春ドラマの主人公のように心の中で叫んだ。喜びと優越感で胸はどきどきしてきて、目はらんらんと輝き、胸が熱くなって何とも言えず興奮してきて、「も・・・もっと・・・」
 その時、堀田が俺を呼び止めた。池上が遅れているという。
(アホな・・・・)
 しかし事実、池上はペースが速すぎると言いながら少し遅れだしていた。俺は舌打ちしたが、やはり先がまだ長いことを考え(1日目のゴールは3合目。ひのうち林道は1合目までだった)、ペースを落とした。しかし、しかしだ。林道が終わったところ、つまり1合目について1つ目のオリエンテーリングのポストを見つけた時、池上がバテよった。
(そんな馬鹿な・・・)
 俺は目を疑った。しかし・・・でも・・・いや、やっぱり信じられないが事実だった。けれども、なんで・・・信じられないが池上良当時16歳はバテていた。・・・そんな・・・でもやっぱり本当なんだよ。
(い・・・いやだ・・・そんなの・・・うっそぉ!!)
 しかし彼は尻餅をつき、他の3人が見守る中がぶがぶと水を飲み始めた。
(しゃーねぇなぁ、もう)
 しかし俺は今度はマジに燃えだしていた。そして池上のザックの中の石を次々と自分のザックに突っ込み、圭吾と堀田もそれに習った。そして目の周りを赤くしてパンダ状バテ顔をしている池上良当時16歳をトップに立たせた。もう大丈夫とみなが思い、我々は遅いペースながらも歩き出した。しかし、1分もせんうちに、
「み、水、飲んだらあかんけ・・・」
などとR君が言い出した。(かわいそうなので匿名にします)
 俺達は舌打ちした。ここまでR君が参っているとは。困惑して立ち止まる膳所高の横をさっき抜いたばかりの石山がよいしょよいしょと抜いていった。
 ・・・・・笑うしかなかった。

 3章 幕営地

 省略

 4章 2日目

 ワープ!

 こうして2日間の苦しい山行は幕を閉じた。確か6位やったと思う。

 終章 感想

 尻切れトンボですんまへん。しかしあの山行で池上のバテ以外に面白い事件はなかった。強いてゆーなら東川がコンロを何したくらいのもんや。他に覚えているのは2日とも天気は良かったこと、伊吹の山頂でレモンをかじったこと・・・くらいかな。

 蛇足 その後・・・・・・

 池上は突然盲腸から腹膜炎を起こして入院した。俺達は笑いが止まらなかった。

 

Back to up