山道具を買おう その3
春秋の山からテント泊山行まで

 低山や夏のアルプスの次は、春や秋の山に登りたくなるのが人情というものである。また、小屋泊まりの山行を体験したらテント泊もしてみたくなるのがこれまた人間の業というものである。だが、そうなると爆発的に揃えなければならない道具が増えてくる。その出費を厭わなくなってしまったあなたは、もう既に堅気ではない。

 基本的にピッケルやアイゼンが必要な本格的な雪山は除外して(そういう人はこんなものを読んでいるヒマがあったらさっさと山岳会に入るなり講習会を受けた方が良い)、夏のハイシーズンの前後の高山(6月とか10月とか)や積雪期の低山を念頭に置いて書いている。

ツェルト

 ほんとうはツェルトは、春秋やテント泊山行だけでなく、夏山でも揃えておきたいアイテムである。
 ツェルトとは、判りやすく言うと「簡易テント」のようなものである。おおむね三角錐の家型あるいは屋根型と呼ばれる形状で、1人あるいは無理して2人が横になって寝ることができるギリギリのスペースを提供するものである。
 グランドシートはたいていセンターで割れるようになっていて、普通に簡易テントとして使う時はそこをヒモあるいはスナップボタンなどで留めて使う。従って底面からの浸水には無抵抗である。また本体生地も極薄で防水加工もしていない製品がほとんどである。
 なぜツェルトが必要かというと、予期しない事情によってビバークに追い込まれた時、これがあるとないとでは大違いだからである。

 モンベル、アライテント、カモシカスポーツ等各社からツェルトは発売されているが、アライテント(RIPEN)だけはやたらツェルトのラインアップが充実している。まあビバークツェルト・スーパーライトシングルツェルトなど、使用方法を限定されてしまうものは最初は避けた方が無難である。

メーカー

モデル名

重量

価格 

モンベル

U.L.ツェルト

230g

\10,500(込)

モンベル

ライトツェルト

450g

\9,240(込)

アライテント

スーパーライトツェルト1

340g

\9,345(込)

カモシカスポーツ

エマージェンシーツェルト

250g

\9,800

 他にモンベルだと「テンチョ」という、雨具(ポンチョ)としてもツェルトとしても使えるものとか、ゴアテックスのツェルトとか、いろいろバリエーションがあるのだが、当面それらは考えなくて良いと思う。オーソドックスなものを1つ購入しておくこと。
 また、それぞれテントとして使うためのポールセットやフライシートなども販売されているが、これも考えなくて良い。

 基本的な道具(靴や雨具やザック)はとりあえず持っているだけで役に立つが、俗に言う「高度な山登り」のための道具になればなるほど、持っているだけでは無意味な道具が増えてくる。ピッケルやアイゼンなどの登攀具はその最たるものだが、とりあえずツェルトがその入門編といつたところかな?

 ツェルトの設営方法にマニュアルはない。その場その場で少しでも快適orマシなor死ななくて済む休息環境を作り出すために工夫を凝らして設営しなければならない。ボールセットやフライシートが不要というのはそのためである。ポールやフライを張って設営できるような条件であれば、そもそもツェルトなんてなくても一晩程度で死にゃしない。
 最悪の状況だとただくるまって横になるだけだったりするし、立木2本の間に細引きを通してツェルトを吊るように設営すると、「ビバーク」と言うことを忘れてしまうくらい快適な環境になる時もある。私は予定外あるいは予定のうちどちらも含めてツェルトで20泊以上しているが、ほとんど毎回設営方法は違っている。
 ビバーク時のツェルト設営は、それこそ創意工夫をこらさなければならないので、この道具は持っているだけでは意味がない。購入したらとりあえず近所の公園ででもビバークしてみて馴れておくべし。
 私はツェルトと同時に10m程度の細引きをいつもザックに入れている。ツェルト設営の時に細引きがないと、設営の自由度は著しく減退し、時には設営が不可能な時もあるので、これは必ず持っておくべきだと思う。細引きがない時に靴紐で代用したこともあるが、そうなると撤収しないと靴が履けないので甚だ不便だし、積雪期だったら足が凍傷になってしまう。
 設営の時、どの程度の長さの細引きが何本必要になるかは、それこそ毎回違う。なので10m程度の細引きを1本用意しておき、設営の時には必要な分だけ切って使う。

 防水加工はしていない製品がほとんどなので、雨天時には雨を避ける工夫も必要になる。まあたいていは「ツェルトの中でカッパを着る」ことでしか対処できないが。カサを1本持っていると、ツェルトの中で広げれば居住空間も確保できるしある程度雨もしのげて快適だったりする。
 間違っても防水スプレーなぞをかけてツェルトに防水加工をしてはならない。結露で晴れていてもびしょ濡れになってしまうし、冬だったら凍って酷い目に遭う。

防寒着、レイヤリング

 基本的には夏の北アルプス級の山に登るのと同じと考えて良い。
 地域や山の標高によって寒さが違うので、一概には言えないが、保温性は基本的に中間着で調節する。寒いからとたくさん着るものを持っていっても荷物が増えるだけで無意味なので、持っていくウエアの選択には夏山より気を遣うのは当然である。

 アンダーウエアに吸水拡散性のポリエステル系のものを選ぶのは絶対である。夏山だったら「風邪引いちゃった」で済むような場合でも、10月の北アルプスだったらひとたまりもなく凍死する場合だってあるのだ。
 また、中間着も夏山より厚手の保温性が高いものを持っていく必要があるが、春や秋の山で難しいのは、良い時の条件は夏山と変わらないということだったりする。つまり、厚手のフリースなんぞを着ているとやたら暑い。かといって天候が崩れると今度は冬山と同じになってしまうので、Tシャツに薄手のシャツで歩いているとひとたまりもなく永久の眠りについてしまう。なので厚手の中間着も必要になるが、あれもこれもと持っていくとやたら荷物が増えるだけであるので、ある程度の経験とセンスが必要である。
 基本的には最低限夏山ウエアに中厚手のフリース1枚あればOKである。大事なのはその中厚手のフリースを着た上からアウター(ゴアのカッパ)を着込んでも窮屈でないか、ということで、それ故にカッパを購入する時は最初からかなりゆとりのあるサイズを選んだ方が良い。

 手袋や帽子が必要になることもあるだろう。
 手袋はゴアテックス等の防水透湿性素材を使ったオーバーグローブを1つ購入しておいた方が良い。インナーは薄手から厚手まで様々なものがあるので、時と場合に応じてそれらを組み合わせて使う。
 帽子は耳を覆うフリース地のものが1つあると心強い。

 また、積雪環境の山に登る場合はスパッツが必要になる。一般的なゴアテックスのロングスパッツがあれば十分つぶしが利く。
 このロングスパッツ、最近では雪渓もない普通の夏山で履いている人が多いのはどういうことなのだろう??かなり謎である。

 基本的に「山道具を買おう その1」で紹介したような、ゴアテックスを使って防水性を確保した靴であれば、多少の積雪環境には対応できる。というか、それらの靴で対処できない山に登ろうと思っている人は、このHPを読んでいるヒマがあったら講習会を受けなさいってば。
 まあゴアのトレッキングシューズにアイゼン付けて5月の北アルプスに行った人もいるくらいだから(もちろん勧めない)、ちゃんとした防水性さえ確保すればある程度はつぶしが利くものなのだろう。
 よって、ヌバックレザーを使った「やや本格派」の靴だと、たいして問題もなくアイゼンは履けるらしい。昔の山屋である私なんかは、あのペラペラに薄いアッパーを見ると「こんな靴でアイゼンを履いたら足の血行が止まるのと違うか?」と不安になってしまうのだが。
 とはいえ、アイゼンを装着して仕えるかどうかというのは、結局は靴のソールの硬さで決まる。ソールが柔らかいとアイゼンの前爪を蹴りこんだ時に安定しないのでやたら心許ない。なのでアイゼン履いて歩きやすい靴というのは、雪のない普通のトレールだとロボット歩きみたいになって歩きにくい靴になってしまう。
 昔は登山靴なんて重登山靴しかなかったので、当然夏山はみんなロボット歩きで歩いていたのだが、今はせっかくいろいろ選べるようになっているのだから、ここはきつちり使い分けるべきだろう。
 つまり、アイゼンを使うような山に行きたくなったら、アイゼンと同時に靴を買うのだ。ちゃんと講習も受けること。

アイゼン&ピッケル

 「持っているだけでは無意味な道具」の最右翼がこれである。ちゃんとした使い方を知らなければ、無意味なだけでなくただの凶器である。ハーネスやザイルなどの登攀具も同様で、きちんとした技術なしに使えば、それはただの自殺の道具である。時に心中の道具でもある。
 なので詳しい解説は控えるが、これらを買いたくなったら、つまりこれらを使う山登りがしたくなったら、ちゃんとした山岳会に入るか講習会を受けること。これらの技術は、本を読んでの独学では絶対に修得不可能だと考えた方が良い。自分なりにいろいろ試行錯誤して修得する手はあるが、それには命のスペアが5つくらい必要である。

 アイゼンと言っても、いわゆる雪渓歩きのための4本爪の簡易アイゼンなのだが、これは少々私には書くのが難しい。
 というのも、使ったことがないから。夏は剱の長治郎や平蔵の雪渓でもアイゼンなしで登下降していた(第一持っていかなかった)し、冬は当然12本爪のを履くので、簡易アイゼンには少々懐疑的なのである。

 というのも、4本爪は土踏まずしかカバーできていない。雪面の登下降で土踏まずをきちんと雪面に置ける傾斜というのは、転ぶはずがない程度の傾斜だしそもそも転んだって勝手に止まる程度の傾斜である。初心者であってもこの傾斜で恐怖を感じることはほとんどないと思う。傾斜が強くなって初心者が少し緊張してくるくらいの傾斜になると、今度は土踏まずをきちんと雪面に置くことが難しくなる。つまりアイゼンを効かすことが難しくなる。初心者ならなおさらである。
 ならば、4本爪簡易アイゼンとは、雪玉をこしらえて滑落する危険要素を増やすだけのものではないか?と思っているのだが、まあ不安な人は買っても良いか、とも思う。バランスを崩して滑落、という局面は実は傾斜に対する不安感がきっかけになる場合も多いから。アイゼン履いているおかげで安定した精神状態を保てるのなら、まあそれもありかとも思ったりする。

テント

 テント泊の登山をしたくなったら、とにもかくにもテントは当然必要である。というよりテントは何故か物欲をいたく刺激する商品であるので、「テント泊をしたいためにテントが欲しくなる」というより「テントが欲しくなったためにテント泊をしたくなる」ものかもしれない。故にテント選びには気合いが入るのも当然である。

 テントの種類は構造的に何種類かに分類できる。
 1つ目は最もオーソドックスなクロスポールのドーム型である。2本のポールがテント底面の対角線をクロスし、それに沿ってテントを立ち上げる方式である。このクロスポールの変型でジオデジック構造のドーム型というのもある。3〜4本のポールを複雑にクロスさせたタイプである。また、登山用よりツーリング用のテントに多い構造でウェッジ型のテントもある。屋根型の足元が低くなったタイプで、1〜2人の少人数用が多い。
 他に家型などもあるのだが、現実的でないのでここでは省略する。

 この中で絶対的な耐候性や居住性が最も高いのはジオデジック型である。ポールを複雑に撮り回している分、テント壁面の立ち上がり角度が急なので、すなわち同じ底面積でも居住性は良いし、ポールが多い分、テントの剛性も高くなるので耐風性も良い、というわけである。
 ただし、ジオデジックならなんでも良いかというと、おそらく世の中には「なんちゃってジオデジック」も多いと思われる。ポールの取り回しが複雑になる分、強度計算なども複雑になるしフィールドテストも多数必要になるはずで、計算した強度が出ていないテントも世の中にはたくさんあるはずである。
 まあ、世にはMOSSテントという伝説のテントがあって、なぜか非常に人気が高いのであるが、私は別に信者ではないのでどうでも良かったりする。

 耐候性、特に耐風性でジオデジックが高いと書いたが、実のところテント本体の絶対的な耐風性って山用のテントではそれほど重要ではなかったりする。というのも、どれだけテント本体で耐風性が高くても、山では中に人がいるテントごと飛ばされてしまうような風が吹くからである。そうなるとどれだけ剛性が高くても無意味である。むしろポールがしなって風を受け流すクロスポールのドーム型の方が、飛ぶ限界点は高いような気がするし、そもそも飛ぶくらいならポールが折れた方がマシである。剛性の高さが裏目に出る場合だってあるだろう。
 もっと基本的なことを言えば、そもそも飛ぶほどの風が吹いている時に幕営していることこそが愚かなのだが。さっさと撤収して山小屋に避難するか、山小屋がなければどこか風を防ぐことができる場所でビバークするのが筋というものだろう。
 すなわち、剛性の高さを誇るジオデジックテントも、多くの場合はただ重いだけのテント、ということになりかねない。

 山では全て自分で担がねばならないので、耐候性と重量のバランスが取れているオーソドックスなクロスポールのドーム型テントが、とりあえずお勧めである。

 ただこのクロスポールのドーム型テント、世の中には掃いて捨てるほど出ている。その中からどれを選ぶか?

 次に選ぶべきポイントは材質だろう。
 大きく分けてナイロンあるいはポリエステル系のものと、ゴアテックスのものの2つがある。
 ナイロン系のテントはそれ自体に防水性を持たないので(持たせれば結露だらけになってしまう)、防水性は別にフライシートを使って確保する。テント本体(インナーテントという)とフライシートの2層構造になるので、この手のテントを「ダブルウォール」という言い方をする。
 対してゴアテックスのテントは、1枚の生地で防水性と結露を防ぐ透湿性を併せ持っているので、フライシートなしの構成が可能である。なのでこれを「シングルウォール」という。最新のゴアテックスは通気性を持たないが(透湿性と通気性を混同しないように!)、多くのゴアテックス製テントは通気性を確保するために第一世代のゴアテックスを使用している。

 ゴアテックスのテントの利点とは、シングルウォールで済ませることができることによる軽量化である。といってもゴアの生地自体が3レイヤーで重くなるため、軽量化と言っても微々たるものである。メーカーによっては同サイズのナイロン系テントより重いものさえある。
 一方、それでは防水性や透湿性といった性能はナイロン系テントより遙かに上か?というとそうでもなかったりする。
 まず防水性であるが、RIPENのカタログには「ゴアテックステントは完全防水ではない」と書かれているとおり(良心的なメーカーだ)、しょせん1枚の布で長時間に渡る激しい雨を防ぎきれるものではない。まあそんな時はナイロン系テントも漏水しているが。
 耐水圧のカタログ数値では防水処理したフライシートとゴアテックスでは1ケタくらい数値が違うのだが、実際はそれほど桁違いに防水性が良いという印象はない。
 また、フライシートがないということは出入り口が雨ざらしになると言うことで、出入りの度にテント内に激しく浸水する。それはゴアテックスの防水性能を補ってあまりある。
 で、結局多くのゴアテックステントユーザーがフライシートを併用することになるのだが、そうなると確実に重量増になる。その代わり防水性能は確かに完璧に近くなるが。とはいえ、雨の日はなんだかんだでテント内に水は入ってくるものなのだが・・・

 透湿性や通気性に関しては、これは圧倒的にナイロン系テントの勝ちである。ゴアテックスとは水の分子は通らないけれど水蒸気分子は通る微細な穴によって防水性と透湿性を両立させているのだが、透湿性だけに勝負を絞ると水の分子でさえスカスカに通るドデカイ穴を持った普通のナイロン生地の圧勝であることは考えなくても判る。通気性も然りである。

 つまりゴアテックステントとは、乱暴な言い方をすれば「中途半端な性能と引き替えに爪に灯をともすような軽量化を得るためのテント」ということが言える。
 もちろんそのことが最高に意味を持つ局面はあるので、ゴアのテント自体が無意味とか買うべきではないというのではないが、とりあえず最初に買うテントとしてはオーソドックスなナイロン系テントの方が勧められる。

 次に留意したいのは、「出入り口がテント底面の長辺側短辺側どちらに付いているか?」ということである。特に底面が長方形になる少人数用テントでは重要な選択肢になる。4人用テントくらいになると底面がほぼ正方形になるので、どちらでもそれほど影響はない。
 短辺側にあるテントは、RIPENエアライズシリーズを筆頭に、IBSICIなど登山用具店がオリジナルで出しているテントはたいていこのタイプである。長辺側にあるテントはモンベルダンロップエスパース(カモシカスポーツ)などである。
 それぞれ言い分はあるのだが、短辺側の長所としては、まず風下に出入り口を向けて設営する場合、テントが風を受ける面積が少なくて済むというのがある。まあ確かにそのとおりなのだが、風向きはいつも一定なわけでもないし、長辺側のテントだって風下に出入り口を向けるか風向きに対して直角に向けるかはその時の状況次第なので、これはどっちもどっちという気がする。
 私がいろいろな状況下でテントを使って、「やはりここは短辺側でないと」と思ったことは、壁の中などのごく狭いところにテントを無理矢理設営する場合、長辺側に入り口があると出入りが極めて困難になってしまう、ということだけだった。むろん北アルプスのキャンプ指定地でそんな思いを味わったことはなく、ヤブ山とか雪山での話である。

 一方、短辺側のテント、それも1〜2人用などの少人数用テントでかなり致命的な欠点は、テント壁面の傾斜が緩い方に出入り口が付いてしまうので雨や雪の吹き込みが激しいということである。これはフライシートがあってもかなり辛い。ましてゴアテックステントをフライシートなしで使っていた場合、激しい雨の日だと出入りの度にテント内のほとんど全面積が風雨に曝されてしまう。これではゴアの意味なしである。
 というわけで、ここもとりあえずは長辺側に出入り口があるテントの方が無難、と思う。

 他にスリーブ式か吊り下げ式か、という選択肢もあるのだが(ダンロップ以外はスリーブ式)、これは双方開発努力によりそれぞれのネガをかなり潰してきているので、どちらでもいいんじゃない?というところである。

 ということで、とりあえず結論としては、モンベル、ダンロップ、エスパースあたりのクロスポール型のドームテントが無難、というところである。

 最後にサイズであるが、これは普段1人で山に行き、たまに2人でも行くかな?というのであれば、1〜2人用を選ぶべきである。このサイズに2人はきついのだが、そこで3〜4人用を選んでしまうと、1人で行く時に寒い思いや淋しい思いをしなければならない。
 テントがムダに広いと保温性も当然落ちるし、そもそも下界で寝てみて「広くて快適〜」と思うような広さは、山の夜では妙に寒々しい空間になってしまう。適度にタイトな方が安心感もあるし暖かいのである。
 そもそも例えば4人用のテントというのは、4人が寝れて荷物も入る広さなのである。「4人用のテントに4人寝ると荷物が入らない」などというのは、単に生活技術の問題なのである。
 とはいうものの、冬山ではともかく、夏山では4人用のテントに4人寝るのは暑苦しい。3人が限度だろうな。
 ともかく、「大は小を兼ねる」というのはテントではあまり当てはまらないと思って選ぶべし。

シュラフ

 シュラフは材質でダウンか化繊、形状でマミー型か封筒型に分類できる。まあ山では封筒型は重いし寒いしであまり良いことはないのでマミー型に絞り、ダウンか化繊かで選ぶことになるだろう。

 ダウンの方が同じ重量だと暖かい=同じ暖かさだと軽いので、ダウンの方がと言いたくなるところだが、ダウンは濡れると始末に負えないという欠点がある。ぐっしょり濡らしてしまったら、その山行どころかそのシュラフそのものがもう終わりだと思った方が良い。となると、扱いやすい化繊の方が良いかな、という気がする。冬山だとさすがに化繊では重くて辛いし、シュラフカバーの使用は最初から前提なのでダウンの方が良いとは思うが。

 シュラフはモンベルの製品が非常に良い。ダウンだと金に糸目を付けず良質のダウンを惜しみなく使っているイスカなんかも良いなと思うが(その代わり値段も惜しみない)、化繊では値段の安さも含めてモンベル以外はほとんど選択肢に引っかかってこないほどである。
 モンベルのシュラフはスーパーストレッチといって、シュラフの内側にゴムが入っている。これが寝ていると適度にタイトに身体にフィットするのだが、そのため同じ量の中綿を使っていても格段に暖かい。寒い時に薄いシュラフで寝る時、いかにシュラフと身体の間にムダな空間をなくすか、ということをいろいろ工夫するのだが、それをシュラフが勝手にやってくれている感じである。
 モンベルの番手で#4だと快適睡眠温度が2℃である。使用可能限界温度で-7℃である。寒さの感じ方は個人差が大きいので一概には言えないが、だいたいこれ1つで夏山から5月の北アルプスまで行けてしまう。むろん寒い時はシュラフカバーを併用したり着込んだりという工夫は必要にはなるが。ちょっと寒がりの人だったら#3であれば快適睡眠温度が0℃で使用可能限界温度が-10℃である。値段は1万円ちょいである。
 ダウンになると値段が倍近くになるし、これがイスカあたりになるとさらに倍近くになったりするので、まあとりあえずモンベルの化繊でいいんじゃないの?といったところである。

マット

 ひょっとするとシュラフ以上に快適な睡眠に影響する道具がマットである。マットの役割は地面の凹凸地面からの冷えの解消である。
 これは1500円くらいの銀マットから2万円オーバーのサーマレストまで、実に価格帯が広い。まあ高いものには高いなりのことがあるので、財力の許す限りでいろいろ試してみれば?というしかないのだが・・・

 とりあえずお勧めは中空ウレタンのエアマットなのだが・・・高い。最高峰のカスケードデザインサーマレストは2万円オーバーである。まあモンベルあたりだと1万円を切るものも出ているので、とりあえずそちらがベストバイということなのだろうか。正直サーマレストとモンベルの倍以上の値段の差というのはよく判らない。耐久性なのだろうか。
 まあチューブ式のエアマットでだってちゃんと寝ることができるし、そもそも銀マットだってそれしかない頃は別に不満もなく使っていたのである。どのあたりで「これで快適」と思えるかは人によって違うので、いろいろ試してみるのが一番だろう。

コンロ(ストーブ)

 テント泊山行でなくても欲しい道具である。
 これは燃料によってガスガソリン灯油の3タイプがある。アルコールコンロなんて物もあるのだが、あまりに実用的でないのでここでは説明しない。

 これは普通はガスコンロだけ考えれば良い、と思う。灯油はもう主流ではないし、ガソリンは大人数の長期合宿か海外遠征、あるいはオートキャンプ場でハッタリを効かす以外の使い道はない。重量、火力、火力調節のしやすさ、取り扱いのしやすさ、どれを取ってもガスコンロの圧勝である。

 よってガスコロンの何を選ぶか、ということになるのだが、ざっくりとEPI派プリムス派に分かれる。それ以外のメーカーではスノーピークが人気があるが、複数台所有を考えるとスノーピークはちょっとラインアップに乏しい。もちろん別のメーカーのコンロを買っても良いのだが、ボンベの共用を考えると同じメーカーの方が便利である。メーカー間のボンベの互換性はあるようなないような曖昧な状況なので。

 日帰りや小屋泊まりの山行でお茶を沸かす程度の用途であれば、とにかく軽いことを優先して選んでも良いだろう。
 テント泊のメインのコンロということになると、火力はある程度(3500kcalくらい)以上あった方が良い。また、火力の数値以上に大事なのがバーナー部の大きさで、ある程度大きくないとクッカーの狭い範囲にだけ火が当たってしまい、カタログ数値ほどの火力を感じないし焦げ付きやすくなってしまう。
 私はプリムス派なのだが、P-2243がやはり名機だと思う。もちろんEPIからも同様に良い機種が出ている。

 単独行の場合は1台で全てを賄うことになるので、P-2243クラスのコンロを1台買えば用は足りる。
 人数が多かったりすると複数台必要になるのだが、まあ結局同クラスのをもう1台、という無難な選択になるかも。3〜4人のテント泊でコンロ2台、という体制だと、1台は火力が落ちても軽いのを、とはなりにくい。火力が強いのが2台の方が使いやすい。

 ちなみにランタンはあまり使わない。テントの中では火災&酸欠が怖くてあまり使えないし、テントの外で夜遅くまでランタンをガンガン炊くわけにもいかない。周囲に迷惑なだけである。まあオートキャンプなら、という道具か。

 

 

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