平成19年9月23〜24日 薬師沢〜某沢

9/23 8:10 折立 発
  9:35-10:00 雪量計ポール ベンチ
  11:40-12:50 太郎平小屋
  13:50-14:10 第三徒渉点ベンチ
  14:50 薬師沢小屋 着
9/24 10:00 薬師沢小屋 発
  11:00-11:10 某沢 入渓点
  11:20 某沢F1
  12:50-13:40 太郎平小屋
  15:10-15:15 三角点
  16:05 折立 着

 

 ほんっとに忙しいのである。
 この数年、ずっと「もうしばらくすればもう少し楽になるだろうから」と思いつつ、実際は年々着実により忙しくなっている。まあそういう年代なのだろうが・・・
 せっかくの夏山シーズンの8〜9月にかけても、息子の部活の関係で潰れたり土日出勤があったり、はたまたあまりに疲れていてせっかくの土日も家で仮死状態だったりして、前回の合同キャンプ以来山には行けていない。
 このままでは黒部に一度も入らないままシーズンが終わってしまう。最後のチャンスである9月後半の連休は行かなくちゃ。このサイトに何度か登場した景子ちゃんも、一度は山小屋生活から足を洗って堅気の生活になったものの、結局今年はまた薬師沢の小屋に入っていることだし。

 で、最初は21日の金曜日を休んで3泊4日の日程を取って高天原に行きたい、と思っていた。でもまあ休むのはどう考えても難しいかな、と思っていたらまあ案の定、とても休むどころではなく、それどころか夜半まで残業しなければならないほどだったのだ。
 というわけでほとんど準備もできず、22日の土曜日は家で仮死状態だったので、結局23-24の1泊2日という最低限の日程になってしまったのであった。

 9月23日は和が夫婦の結婚記念日でもあるわけだが、そんなわけで私は1人で薬師沢へ、カミさんは1人で上高地へ、という別行動となったわけであった。私も上高地へということも考えたのだが、そうすると薬師沢に行くチャンスを失ってしまう。

 わずか1泊2日の日程なので、とりあえずこれといって目的は決めず、ただ薬師沢の小屋でのんびりできればいいや、というつもりだった。
 このところ体力が目に見えて落ちてきているので、折立〜太郎間をどれだけの時間で歩けるかは実はかなり不安だったのである。4時間を超えるようなことでもあればショックで立ち直れないかも、と思いつつ登り始めたのだが、まあ案外良いペースで歩くことができた。
 3時間半かかっているが、靴擦れの手当と(春に買った新しい沢靴をようやく履くことができたのだった)、太郎小屋の手前で山岳写真家の三宅岳さんとばったり出会い、そのまましばらく立ち話をしていたロスタイムを含んでいるので、実質的には3時間ペースで歩けているのである。体力が落ちたとは自分で思っている割にはペースは落ちていない。

 太郎小屋で昼食を摂ってから薬師沢に出発。
 薬師沢のスタッフの1人が数日前から体調を崩しているらしく、高熱が下がらないらしい。太郎小屋にある薬を選んで持っていってやってくれと頼まれた。獣医師なんだからどの薬が良いかくらいは判るだろうと。
 でも、獣医師といっても私は「治す獣医」ではないのである。「調べる獣医」なのだ。それも相手が生きていれば殺してでも調べる獣医なのである。「ただの風邪じゃないよねぇ。どんな病気だと思う?」とか聞かれても、「解剖すれば判ると思うけど」と答えるのは仲間内では笑ってもらえるジョークなのだが、堅気の人に言うと確実に引かれるので反省してます。

 ま、そんなわけで薬を持って薬師沢小屋へ。

 

薬師沢小屋

薬師沢小屋に到着

 カベッケを過ぎて薬師沢小屋の屋根が見えてくると、いつもながら「帰ってきた〜」という気分になるのだった。ま、別荘みたいなもんである。

 

 


 

 体調を崩していたスタッフ(須田さん)も、今日は少しは復活しているようで起きて仕事していた。前日まで2日ほど起きれなかったそうである。良かった良かった、解剖しなくて良いね、などとドン引きされるジョークをかましながら薬を説明しながら渡しておいた。
 前日は宿泊者もけっこう多かったらしく、スタッフ1名が寝込んでいたため大変だったらしい。やはり土曜に入れば良かったなぁ。でもまあ土曜日は俺も死んでいたし。
 この日は宿泊者も多くなく、須田さんもなんとか復活していたし私も手伝ったので、仕事は前日に比べると段違いに楽だったそうである。
 でも須田さんは病み上がりで本調子ではなく、小屋番の高橋さんも疲れが溜まっていて体調があまり良くないらしく、夕食もそこそこに寝てしまった。
 というわけで景子ちゃんと飲んでいたわけである。

 

 翌朝、昨夜の宿泊客を送り出せば、今日はもう連休最終日で宿泊者も激減だろうし、今シーズンはもう終わったも同然である。
 なので午前中は布団干しをするという。
 まあ私も別に予定などはなく、この日のうちに帰宅できればいいので手伝うよ、とは言っていたのだが、その朝のミーティングの時に高橋さんが景子ちゃんに「半日だったらどこかに遊びに行っても良いよ」と優しいお言葉を。なら2人で某沢にでも行くか?と誘ったらば大喜びで即決し、一仕事終えた午前10時に出発、ということになったのだった。
 景子ちゃんも連休の疲れが出てきて「今日はたっぷり昼寝したい」とか朝は言ってたくせに、あそびに行くと決まった途端シャキッとするったら。
 ということで、さっさと部屋掃除と布団干しをやっつけて出発である。

 この某沢、去年も高天原の帰りに遡行したのだが、けっこう手応えがあって楽しめる沢である。赤木沢並みに入渓者が多くなってしまったらちょっと嫌なので、沢の名前と位置は秘密である。でもまあこの周辺に土地勘がある人はすぐに判ってしまうだろうけど。

 

某沢入渓地点

某沢の入渓地点にて

 さて、その某沢の入渓地点である。
 去年来た時は雨での増水直後だったのでかなり水量が多かったが、今回は平年の9月末としてごく普通の水量である。

 

 


 

某沢F1

F1

某沢F1

F1を直登中

某沢F1直登ルート

F1を直登中 その2

 最初の滝、F1。
 去年来た時の同じ滝の写真がこれである。やはり水量の差は歴然である。
 去年は単独だし水量も多かったので左手の斜面から巻いたが、この高巻きも不安定でちょっとしょっぱい巻きだった。
 今日は2人で来てるし水量も少ないので、基本的に滝は全て直登を目指すのである。ま、別にロープ持ってきているわけではないので、2人といっても落ちたら骨を拾ってくれる以上の意味合いはないのだが。

 

 

 

 下の写真がF1を登攀中の景子ちゃんである。
 去年は水流が被っていたのだが、「ここに直登ルートがありそう」と思ったとおりのルートである。
 べつにたいして難しいわけではないのだが、特に上部は水苔がびっしり着いていてちょっと神経を使う。

 

 ま、こうやって写真を見ると、ごく普通にロープ出して登るルートだよな。普通にIII+くらいはあったし。高さも普通にあるし。

 


 

 この沢は最初の3つ4つくらいの滝が「核心部」で、その後は水量も落ちて比較的簡単に登れる滝が続くのだが、それでも源頭部の水が切れる直前まで滝が連続し、短い遡行時間ながらもたいへん楽しめる沢である。

 

某沢F3

某沢F3

某沢F5

F5だっけ?

某沢F某

けっこう後半の滝

某沢F某その2

源頭部も間近

 F3。
 この滝は去年も同じルートで登り、最後はシャワークライミングになるのだが、今回は水量もずっと少なかったので楽だった。

 F5?は去年は右から巻いてしまった滝だが、今回は水量も少なかったので釜をへつることができた。
 写真では景子ちゃんが右岸から釜をへつって登っているが、私は左岸から登ってみた。
 ちょうど流木が上手い具合に引っかかっていたので、そいつを利用して釜の深い部分をカットできたし。
 この滝は滝自体の傾斜は緩く階段状なので、釜さえクリアできれば楽なモノである。

 後半になると難しい滝はなく、どの滝もホールドも豊富で容易に登れるのだが、高さはけっこうある滝もあるので、メンバーによってはロープを出した方が良いような滝もある。

 ちなみにこの右の写真の一番下と写真とその上の写真は同じ滝である。水が切れる直前までこんなのが続々と出てくるのがこの沢の素敵なところ。

 ほとんどの滝で、まず滝下で景子ちゃんとルートを決めると、私は「ぢゃ、君は登りたまへ」と景子ちゃんを先行させて自分はカメラマンをしていたのであった。

 

 


 

某沢源頭部

某沢源頭部

某沢遡行終了点

遡行終了点は草原

 この沢はほんとうに水が切れる直前まで小滝が連続して楽しませてくれるのだが、最後はこんな階段状のガレ場となる。実はまだ水も流れているのだが。
 最後はハイマツに囲まれた水路になるのだが、あまりにも忠実に水路を辿りすぎるとハイマツのヤブに突入してしまうので、適当に草原に逃げた方が楽である。ま、あまりにも早く草原に逃げると、やはり後でハイマツのヤブに突っ込んでしまうが。
 草原を歩くのは気が引けるのだが、どのみちどこかである程度はお花畑の中を歩かねばならないので、最短で銃走路に出るルートを上手く拾った方が良いだろう。

 

 


 

 さて、そんなこんなで某沢の遡行も終了し、太郎平小屋に戻ってきた。
 ここで昼食の後、景子ちゃんは薬師沢小屋に戻り、私は下山というわけである。

 

草紅葉

太郎坂の草紅葉

 今年はナナカマドも十分赤くなる前に枯れている木が目立つし、あまり綺麗な紅葉ではないのだが、それでも草紅葉は綺麗である。
 この写真は樹林帯を抜けて五光岩ベンチに至る急坂の途中で撮ったのだが、このあたりでずいぶん長い間雷鳥の鳴き声が聞こえていた。
 ずいぶん探したのだけど、姿を見ることはできなかった。
 こんな標高の低いところにも雷鳥がいるのか?

 


 

 天候は元々曇りがちでそれほど良くはなかったのだが、三角点のあたりまで下りてきたところで上空からなにやらゴロゴロという気配が。
 雷??
 まあ落ちるような鳴り方でもなかったので、雷には敏感に反応する私もそれほど焦ったりしたわけではなかったのだが、三角点から下の樹林帯を下りている最中についにバリバリと鳴り出した。
 まあ結局、近くに落ちるようなこともなく、ちょっと雨が降った程度で済んだのだが、それにしてもここ数年、この道を通る時は2回に1回は雷鳴を聞いているような気がするのだが・・・今何月だと思ってるんだ?なんで9月下旬に雷鳴を聞かねばならんのか。

 今回は薬師沢小屋でのんびりするのが目的といえば目的で、他にどこに行こうとかいう気持ちは特になかったのだが、予定外に軽めとはいえ1本沢を歩けて楽しかった。(予定はないといいつつ沢靴履いていたりするが)
 やはり沢は1人だといまいちつまんないし。写真撮っても人が写らないとつまらないんだよな。
 それにしてもこの沢、お気に入りである。短い割にはきっちり楽しめるし、赤木沢より少しだけ手応えがある、という程度の難易度がまことに手頃である。「ついでに寄れる」程度のロケーションと遡行時間も手頃。
 この沢の周辺に、このくらいの軽めで楽しめる沢が他にもあるかも。

 

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