独断と偏見まみれのシュラフ考察

 高校時代はもちろん、大学に入ってもいわゆる「3シーズン用」の化繊シュラフを使っていた。当然それで冬山に行くとむちゃくちゃ寒かった。着れるものは全て着込んで、さらにシュラフカバーを使い、4人用のテントにぎっちり4人、くっつき合って寝ていたものである。たまに誰かが欠けて4人用のテントに3人、なんていう事態になると寒くてしょうがなかった。
 まあ、夏と冬とでシュラフを使い分ける、という発想は当時なかったような・・・

 一度だけOBからスーパー天山を借りて冬山に行ったことがある。ダウンの概念を覆すほどのデカさのシュラフで、ザックの底に押し込めるのも一苦労だったし、重さも2kgは軽く越えていた。
 ただし、その暖かさは驚天動地ものだった。3000mを越えた南岳の冬季小屋で2日間の停滞を余儀なくされた時、かなり強力な寒波が来ており、冬季小屋の中に張ったテントの中でさえ、明け方には気温-20℃を下回った。パーティーの他のメンバーは誰1人眠れず、一晩中シュラフの中でガタガタ震えていたらしい。明け方、あまりの寒さに誰かが飛び起きてコンロを炊こうとした時に寒暖計を見たら-25℃だったというのだが、その時私はTシャツ1枚で汗をかきながら寝ていた。ダウンのシュラフは濡らすと厄介なのでシュラフカバーを使おうと思ったのだが、そうすると暑くて寝れなかったのだった。

 下山後、すぐに同じモデルを買おうと好日山荘に走ったのだが、値段が5万円以上と聞いて一瞬の夢に終わった。

 とはいうものの、実はダウンのシュラフはあまり好きではない。とにもかくにも濡らすと厄介だから。
 夏の北アルプスで夜中に降った大雨のせいでテントが川の中になってしまい、当然シュラフも絞れるくらいに濡れてしまったことがあった。そんなことは何度も経験しているのだが、その時いつもと違うのは、パーティーの中にダウンシュラフで寝ていた人がいたことだった。
 翌日は快晴で、私達は晴れの日停滞を決め込み、せっせと濡れたシュラフやウエアを1日かけて乾かしたのだが、そのダウンシュラフだけはどうにもならず、彼はそれから3日間、寒さのため一睡もできずに体調を壊し、パーティーは計画半ばで下山するハメになったのだった。

 でも、今使っているのはダウンだったりする。サウスフィールドのダウンシュラフ

 はっきり言って安物である。ヤフオクで1つ6000円で2つ買った。
 ダウン量300gといえば、モンベルで言えばちょうど#4と同じである。
 モンベルのスーパーストレッチダウンハガー#4の快適睡眠温度は-1℃となっている。が、このサウスフィールドのシュラフは、ダウンもそんなに良いのは使ってないだろうし、ジッパーやネックといった寒気が入り込むポイントの対策もおおらかなものなので、同じダウン量でも確実にモンベルよりは性能は落ちるだろうな。
 それにしても謎なのは、適応シーズンが「春・夏」と表示されている点である。秋の立場はどうなるんだ?

 今年の正月の年越しキャンプで使った時は、外気温はおそらく氷点いくかいかないかくらいだったと思うが、カミさんは寒くて寝づらかったと言っていた。私もちょっと寒いなとは思ったが、普通に快適に眠れた。薄いシュラフでなんとか暖かく寝るのにはノウハウがあって、ペラペラのシュラフで冬山に行っていた私はそのあたりは得意なのだ。カミさんは腹に脂肪を巻いているから寒さが堪えないのだ、と言ってるが。
 足元の余った部分を足の下に敷き込むとか、寝る姿勢の肩のちょっとした角度とか、そんなものでけっこう暖かく寝れるものなのである。横幅の余った部分も抱き込むようにしたりとか。

 このシュラフ、どういう流通になっているのか、今でもヤフオクにしばしば新品が出てくる。腐ってもダウンなので狙い目かも。

 ダウンの利点は実は「暖かいこと」ではない。同じ暖かさなら化繊より軽くて小さくなること、である。現在家族で山に登る際、カミさんも息子達もまだボッカとしての戦力は期待できないので、やっぱシュラフは小さくて軽い方がいいな。
 息子達はモンベルの「ファミリーバッグジュニア」というモデルを使わせている。封筒型のシュラフで、とてもデカい。適応慎重は120cmで長男はそろそろ限界なので、そろそろ大人用のを買わねばならない。そうするとジュニア用のシュラフはヤフオクに、ということになるであろう。しかしそうすると兄貴のものはなんでも欲しがる次男が大人しく自分のシュラフで寝るかどうか・・・が心配である。

 カミさんにモンベルの化繊の#3あたりを買って、長男にこのダウンを1つお下がりで、という構想なのだが・・・ま、今年の夏は今の体制で乗り切ろう。


 ・・・という舌の根も乾かないうちにシュラフを買ってしまった。先日、東京出張の折りに飛行機の時間もないのに大急ぎでモンベルショップ恵比寿店に寄って、スーパーストレッチバロウバッグ#32つ買っちゃった。

 発端は、珍しくというか初めて宝くじが当たったことなんである。1万円なのだが、カミさんにすれば最高成績である。(ちなみに私は買わないので当たった試しがない)
 1万円握りしめて「みんなでお寿司でも食べに行こうか〜」とカミさんが浮かれていたので、そんなことで一瞬で使ってしまっても後に何も残らなくて虚しいし、「たまには自分の小遣いにしたら?どうせ不労所得の泡銭なんだし」と言ったら、その瞬間、カミさんは1万円札を握りしめたまま硬直してしまった。どうやら頭の中が真っ白になってしまったらしい。・・・を〜い。まったくお子様か?やはり精神年齢は私よりかなり下である。
 で、しばらく必死に何を買おうか悩んでいたようであるが(1000円札握りしめた時の長男とそっくり)、結局前から欲しい欲しいと言っていたモンベルのシュラフに決定した。まあ私は最初から「あ〜、モンベルの#3が買えるな〜」と見当は付いていたのだけど。

 いつものモンベルサイトからの通販で買っても良かったのだけど、ちょうど東京の日帰り出張があったので、恵比寿店にでも寄って買ってくるかということになった。#3だと1万円では少しだけ足りないのだけど、差額は私が出してやる、ということで。
 私も靴を買おうと思っていた。超特急カッ飛び山行のために、モンベルのメドーウォーカーという靴が欲しかったのだ。靴は通販では買いにくいので、恵比寿店でサイズを合わせて買おうという魂胆だった。ちょうどジャンスポーツのザックをヤフオクで売ったお金があったので。

 でもここで心配事が1つ。
 息子達は今までモンベルのジュニア用のシュラフを使っていたのだが、長男はそろそろ身長がジュニア用では厳しくなってきていた。カミさんが#3を買えば、今まで使っていたサウスフィールドのダウンは長男にお下がり、ということで願ったり叶ったりなのだが、問題は次男である。兄貴が持っているものなら何でも欲しがる次男が、自分だけジュニア用のシュラフという状況に耐えられるとは考えにくい。雷鳥沢のテント場で泣き喚かれるのも面倒である。
 ほんとはダブダブの大人用シュラフよりジャストサイズの子供用シュラフの方が暖かいはずなのだが・・・そんな理屈は通用しないのである。
 なので私も#3か#4あたりを買って、ダウンを2つ揃って息子達にお下がりにする、というのがベストなんだろうな・・・とは思った。ジュニア用のシュラフはけっこう大きくて重いので、モンベルの#3が2つとダウンシュラフ2つ、という構成にした方が荷物としては軽くてコンパクトにもなるし。
 でも、メドーウォーカー欲しいし、とりあえずそのところの結論は出さずに出張に行ったのであった。

 で、結局#3を2つ買ってしまったわけである。意外に仕事の方が長引いて飛行機の時間が迫っており、靴のサイズをのんびり合わせる時間がなかったこともある。でもまあそれ以前に「まあ今回はしゃ〜ね〜なぁ」という気持ちになっていたし。
 恵比寿店でディスプレイされているメドーウォーカーを横目で見ながら、「ちょっとサイズだけでも見てみようか」とも思ったのだけど、一旦足を入れたが最後、買ってしまうに決まっているのでここはこらえた。

 どーせならということで、カミさんのは青の右ジッパーという希望だったので、私のは赤の左ジッパーにした。

連結シュラフ! 

見よ!これが連結シュラフだ!

 モンベルのシュラフは右ジッパーと左ジッパーとで連結できるのだが、さっそく連結させてみたのが右の画像である。
 キャンプ用の封筒型シュラフならいざ知らず、完全な山用のシュラフを連結させて何の意味がある?とは思ったのだが・・・まさかカップルで山行く時に連結させて2人仲良く寝てください、とでもいうわけでもあるまい。
 確かにジッパーで連結できるのだが、上まで引き上げたジッパーを留めておける機構がない。ベルクロも連結するとオス同士メス同士になってしまう。なので連結してもシュラフの頭のあたりを両側に引っ張るとジッパーが下がってくるのである。
 このあたり、さしものモンベルもあまり真剣に考えてないな、と思った。

 カミさんが、連結させて次男も一緒に寝る、という案を出したが、なんだか非常に寝苦しそうなので却下した。

 


 まあ連結はともかく、シュラフ本体はさすがモンベルというか、良い造りである。
 スーパーストレッチシステムとはどんなもんだと興味はあったが、確かに中であぐらをかけるくらいには伸びる。でも、他メーカーのシュラフでもあぐらくらいはかける。そのくらいの幅はあるものだ。スーパーストレッチと言えど、それ以上には伸びない。
 だがこのスーパーストレッチの真価は「伸びる」ことにあるのではなく、「縮む」ことなんだな。シュラフに潜り込んでみると体の周りに適度にタイトにシュラフが巻き付いてくる。これは絶対暖かい。
 シュラフで寝ている時に「寒い」と感じるのは、要するに身体とシュラフの間にムダな空間ができていて、その余分な空気が暖まりきらないから寒いんである。上の方で書いた「ペラペラのシュラフで暖かく寝る工夫」とは、要するに如何にしてシュラフの中に余分な空気を作らないか、ということでもある。
 それがこのシュラフだと、何もしなくてもシュラフが勝手にやってくれるのである。後は肩口から寒気を入れないことにさえ気を配ればよろしい、というわけか。また、他のシュラフだとせっかくチマチマと工夫して暖かくなってきても、寝返り一発で振り出しに戻ったりするのだが、このシュラフだとその心配もないし。良いシュラフだなぁ。

 まあそんないきさつで、あっさりモンベル#3×2、サウスフィールドダウンシュラフ×2という体制に切り替わった。
 つまり、ジュニア用のシュラフは用済み、というわけである。さっそくヤフオクに出品しようと思うのだが、海の日連休直前というのはいかにもタイミングが悪い。もうちょっと間を置くのが得策なのだろうが・・・

 

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