独断と偏見まみれのザック考察
中型〜大型ザック編

 高校の山岳部に入って容量が大きなザックが必要になり、私が購入したのがdaxのザックだった。まだ新しいブランドで、少なくとも「一流メーカー」という認識はなかったように思う。安かったから買った、という感じだった。
 同期の他の4人はそれぞれ、カリマーとシュイナードが2人、もう1人のは覚えていない。
 3年使って、シュイナードとdaxの3人のザックは、もうかなりガタが来ていてそろそろ寿命、という感じだったのに対し、カリマーはまだ各部の造りもしっかりしており、さすがカリマーと感心した記憶がある。

 大学に入ってdaxがもう寿命に来ていたのと、さらに大きな容量のザックが必要になったこともあり(高校時代は50Lのザックで通した)、カリマーの60Lザックを購入した。ほんとはミレーが欲しかったのだが、予算オーバーだった。

カリマー60L 

カリマーのザック 60L

 

 このカリマーのザック、20年近く立った今でも現役である。
 ほとんどまともに洗ったことがないため、汚いことこの上なく、カミさんは捨てたがっているが、機能的に痛んでいる部分はまだほとんどない。
 ザックを持ち上げる時に持つD型のストラップが切れているが、それだけである。各部のストラップはミレーと比較してえらく細く、購入当初はこんなので大丈夫かと心配したものだが、20年近く経ってもどこも切れていないのはさすがだ。
 ただ・・・・汚い・・・・・カリマーのロゴももうかすれてしまって読めない。


 このカリマーは現代のザックと違って、フレームは入っていない。ただの袋である。だが、このただの袋は悪くない。
 ビバークの時はたいていザックに足を突っ込んで寝るのだが、フレームもないただの袋なのでたいへん具合がよい。エクステンションも引き出せば、胸くらいまで入れるので、夏はシュラフカバーとこのザックだけで高山帯でも寝れた。
 背中にも薄いパッドが入っているだけなので、多少パッキングに気を遣わないと、背中が当たって痛かった。この問題には、高校時代からずっと背当てにウレタンマットを入れて対処していた。(そのウレタンマットもまだある・・・)

 今持っている2つ目のザックは、カミさんの嫁入り道具(?)のミレーである。

ミレーのザック 40L 

ミレーのザック 40L

 

 これは40Lと小さなザックのくせにフレームザックなのは、さすがに現代のザックである(といってももう10年前のモデル)
 造りはさすがに頑丈そのもの。
 あまり使っていなかったせいもあり、また使うのが主にカミさんであまりハードな山にも連れて行ってなかったので、10年ものにしては非常に綺麗だったのだが、こないだ私が血まみれにしてしまった。


 最近、ひょんなことからジャンスポーツのザックをゲットした。

ジャンスポーツ 60L 

ジャンスポーツ 60L

 

 容量は十分の60Lある。(そうでなければいくら安くても買わない)
 フレームは2本で背面長もちゃんと調節できるようになっていてウエストベルトはちゃんと腰の位置に決まる。(カリマーはよく腹にずり上がる)
 比良ではこのザックで行った。20〜25kg程度しか担いでいないのだが、それでも担いでみてバランスはとても良いと思った。
 だが、いくらなんでもストラップが多すぎる。
 ヘッドの位置も荷物の多さに合わせてきちんと調節できるようになっているのは良いのだが、馬鹿正直にストラップを素直に付けているだけなので邪魔である。ヘッドのジッパーを開け閉めするのに邪魔ではないか。
 スペック的には十分でも、細かい仕様がいまいちアレなのは、やっぱジャンスポーツだからだろうか・・・


 決定的に気に入らないのは、2気室構造だという点である。
 まあ10歩譲って2気室そのものは良いとしても、内部ジッパーか何かで1気室としても使えるようにしてくれないと・・・
 2気室だと容量目一杯使うのはちょっと難しい。ザックなんぞ積めてなんぼと思ってる私には許せない仕様だったりする。ビバークの時に足を突っ込んでも、これでは腰くらいまでしか入らないし。

 しかし、このザックを使ってみてその重量バランスの良さには驚いた。20年前のカリマーと比べると雲泥の差だ。同じ重量を担いでも、こちらの方が10kg分くらいは楽に感じそうである。
 というわけで、このジャンスポーツのザックを使ってみて、新しいザックが欲しくなってしまった。ミレーはやはり高いので、ゼロポイントのエクスペディションパックの65か、アルパインパックの60といったあたりがすごく欲しい。
 物欲が・・・


 結局物欲に負けた。
アルパインパック60 

ZEROPOINT アルパインパック60 (旧モデル)


 買ったのはゼロポイントの旧アルパインパック60のオレンジである。
 型落ちなので少し安く、かつ好日山荘の夏山フェアの10%引き、さらにポイントが貯まって2000円分の割引という条件の時を狙って買った。
 欲を言えば現行型のエクスペディションパック60が欲しかった。今年の型からシンプルな1気室型になったし、前面がジッパーでガバッと開くのは魅力である。でも、大幅に予算オーバー。
 好日山荘には旧エクスペディションパック65も置いてあって、これがまた値段がほとんど同じなら見た目もほとんど同じで見分けが付かない。ひっくり返して調べてもトップリッドの形状が少し違う以外は判らなかった。なら、どちらも在庫限りだし、色が好みの方に決まりである。

 今年の型はエクスペディションはジッパーで前面開き、アルパインはシンプルなアタックザック、とコンセプトが明確になっている。


 実はこの数日前、富山県庁近くの某スポーツ店にフラリと入った。
 冷やかしだったのだが、そこにも旧エクスペディションパックが置いてあって、しげしげと見ていたら店員が「どうぞ担いでみてください」と言う。
 「いやぁ、冷やかしだから」と言ったのだけど、「まあまあ、とにかく担いでみてくださいよ」と言うので、担いでみた。担いでから各ストラップをくいくい引いて調節する私をじっと見ていた店員が一言、「ははぁ、『肩で担ぐ』タイプの方なんですね〜」としみじみ(?)言ったのだった。いや、だって昔のザックしか知らないし。
 「今時のザックはこうやって『腰で』担ぐんですよ〜」と調節の仕方を教えてもらったのだが、こんなに肩を緩めていいの??って感じだった。でもまあ確かに荷重がかなり腰の方にきた感じはする。20kgくらい積めて担いでみればもっとよく判るだろうな。
 で、その店員が「ゼロポイントのザックは今の1つ前の型から凄く良くなりましたよ〜」と言うので、「ははぁ、そうなのか」と好日山荘で買ったわけなんである。某スポーツ店の親切な店員さん、ごめんなさい。

 ちなみにこれでジャンスポーツのザックが不要になったのでヤフオクで売ったら、とんでもない値段が付いた。嬉しいけどなんでだろ〜?


オスプレー エクリプス42 

オスプレー エクリプス42

 

 オスプレーのザックを買った。
 エクリプス42というザックである。サイズはLなので容量は45Lあるらしい。
 このザック、非常に面白い。

 まずこのザック、この容量がありながら基本的な構造はデイパックなのである。すなわち、背面の外周にほぼフルオープンするジッパーがあり、それでザックをパカッと開けて荷物の出し入れをするのだ。
 その際は写真で私の肩のあたりに見える、ショルダーハーネスを引きつけておくストラップをバックルで外さねばならず(ジッパーの開閉はできるがストラップを付けたままだとカパッと開けない)、その点は少々面倒である。
 ただ、上にもジッパーはあり、そこから上部に入れた荷物にはアクセスできるようになっている。

 


 

 面白いのはザックのサイドに見える黄色いパネルで、これはウレタンが仕込んであるけっこう剛性感があるパネルである。このパネルは左右がストラップで繋がっており、こいつを締め上げることにより、ザックの厚みを絞ることができる。
 だいたいある程度以上のザックにはサイドコンプレッションストラップというものが付いており、ザックの厚みをそれで絞れるようになっているが、このザックはウレタンパネルで締め上げることになるので、その効果はストラップの比ではない。つまり、ごく少量の荷物であっても、ザックの上から下までバランス良く入れることができ、また荷物がザックの中で暴れないようになっている。

 パッキングはザックを立てた状態ではちょっと難しい。背面がほぼフルオープンしているので、荷物が手前にこぼれてきてしまう。従ってこのザックの正しいパッキングのやり方は、ザックをゴロンと転がし、背面からものを適当に放り込む、である。入れたらジッパーを閉じ、ザックをひっくり返してウレタンパネル(オスプレーではストレートジャケットと呼んでいる)のストラップをグイっと締め上げて一丁上がり、である。基本的に荷物のバランスなどはほぼ考えなくて良い、というか入れた時と締め上げた時では荷物の配置自体が変わるので、バランスを考えながら荷物を入れていくのは無意味ですらある。
 つまり、20年かけて修得してきたパッキング技術というのは、このザックにはほぼ無意味である。

 買ってすぐ、高天原に3泊4日の行程で行ってきたが、始めはどうにも使いにくい、と思った。が、毎日荷物を出し入れしているうちにこのザックの使い方が判ってきた。とにかく適当に入れれば良いのである。何も考えずにほいほい荷物を放り込んで、入れたらジッパーを閉めてザックをひっくり返し、適当に揺すって中の荷物をザック内に均等に入るようにしたら、あとはストレートジャケットのストラップを締め上げてOK、である。これは面白い。

 メイン気室の他に、いわゆるヘッドもちゃんと2気室ある。
 またこのザック、元々スキーやスノーボード用に作られているだけあって、ツール類の装着はやたら充実している。スキーはサイドと背面の両方に付けられるし、ボードは背面に装着することができる。ピッケルホルダーも2個ある。また背面に特大の開放ポケットがあり、どうやらかなり大きなスコップがそこに収まるようだ。私は防水バッグに入れた地図をそこに放り込んでいた。ザイルなんかも1本すっぽりと入りそうなので、クライミング用途としてもぜんぜんOKという感じである。
 また、サイドにメッシュポケットがあって今回ここに水筒(500mlのペットボトル)を入れていたが、この角度が絶妙だった。取り出しも挿入もザックを担いだままで何の苦労もなくできるのに、行動中にここに腕が干渉することは一度もなかった。
 あとはウエストベルトにギアラックでも付いていたら完璧なのに・・・

 担いだ感じはマジで感動ものである。ウエストベルトの締め心地がやたら良いこともあるが、とにかく重量バランスは良い。ウエストベルトを腰骨の上で締め上げれば、感覚的にはほとんど80%以上の荷重が腰に行っている気がする。身体にもぴったりフィットするし、さすがスキー用に開発されたザックである。

 欠点としては、荷物はあまり入らないかも。こういう出し入れの仕方なので、容量は45Lあるが実際にはそんなに入らない、という印象である。まあもしかしたら夏だったら1〜2泊ののテント山行くらいだったら使えるかもしれないが。その場合はかなり装備と食糧を削ることが前提だけど。
 また、背面フルオープンなので雨の日に荷物を出し入れするのは少々辛い。雨でなくても下の方の荷物はちょっと面倒に感じる。上の方によく出し入れする物を入れておけば、それは上部ジッパーからアクセスできるので問題ないのだが。
 ま、それより荷物を全て出さなくても一番下に入れた荷物を出せる、という利点の方が大きいか。

 そんなわけで非常に気に入った。今年になってベトナム生産になって大幅に安くなったのだが、それでもこのエクリプス42で18,000円程度と、少し割高感がする価格であるが(去年までは倍近くした)、それだけのことはある。
 このエクリプスシリーズ、42の他に36、32というラインアップである。この42と32は背面ジッパーのデイパック方式なのだが、なぜか36はトップリッドを備えた普通のザックである。これが一番使い勝手は普通で良いかもしれない。面白いのは42と32だが。
 オスプレーはエクリプスの他にも超大型ザックからデイパックまでフルラインアップなのだが、全てこのストレートジャケットシステムを装備している。普通のトップローディングのザックにこのストレートジャケットは素晴らしく良いかも、という気もするのだが、なんせやはり大容量ザックはとっても高くて高嶺の花である。

 

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