平成17年7月16〜18日 薬師沢
7/16 | 8:00 | 折立 発 |
8:45-50 | アラレちゃん | |
10:25 | 五光岩ベンチ | |
11:15-13:00 | 太郎平小屋 | |
15:00 | 薬師沢小屋 着 | |
7/18 | 10:30 | 薬師沢小屋 発 |
12:30-14:00 | 太郎平小屋 | |
15:50 | 折立 着 | |
2.5万図 「薬師岳」 |
今回も去年と同じく、「山小屋の手伝い」に行っただけなので、あまりとりたてて書くことはない。
まあ梅雨明け前の海の日連休なので、それほど忙しくないかなとは思ったのだが、とりあえず様子見がてら行ってみようかと。
また、今年はあまり山に登ってないのでトレーニングがてら、というつもりもあった。
朝、折立を出発するとすぐに雨が降り出した。カッパを着ると汗で濡れそうだったので傘をさす。以後、この日はずっと雨が降ったりやんだりだったので、ザックのサイドに傘を差しておいて頻繁にさしたり畳んだりを繰り返した。結局カッパは着ずじまい。
やはり連休なので登山者は多い。折立の駐車場は5分入りという程度でたいしたことはないと思っていたのだが、バスで来た人が多いのか、やたら人が歩いている。抜くのがちょっと大変でペースを乱すほどだった。
ま、シーズン最初というせいもあってか、雨がちでそれほど暑くない天候なのに太郎まで3時間を超えてしまった。軽くヤバい。
数年前から小屋のバイトが少ないという話は聞いていたが、太郎はなんと総勢7人しかいなかった。今日は宿泊者が100人を越えるかもしれないというのに?しかも7人のうち3人は帳場に張り付けなので、厨房はなんと4人。これはきつい。
それも7人全員が従業員や長期バイト。つまり7月末から8月末までの短期バイトがいないのである。最近はどこの小屋も大学生の短期バイトが来なくて困っているという話だが・・・
太郎がこんな状況なので他の小屋にバイトが回せるはずもなく、薬師沢は3人でやっているという。やっぱり1人は帳場に張り付けなので、厨房は2人である。
大学生のみなさん、山小屋でアルバイトしましょう!
いや、実際、良いバイトだと思うんだけどな。日給は確かに数字にするとそれほど良いとは感じないかもしれないけれど(8000円くらいか?)、3食寝床付きなので決して悪いバイトではないのだが。
ま、朝4時から夜9時までの17時間労働、というのはいかにも辛そうだけど、やってみるとたいしたことはないんだけどなぁ。朝4時起床、夜9時就寝というのはもう生活のペースなので、その中で仕事するだけだし、1日中忙しいのは1ヶ月のうちほんの数日なのである。
ま、避暑に行ってちょっと仕事を手伝い、小遣いをもらって帰ってくると考えれば、実に美味しいバイトなのだが。
ま、ともあれ薬師沢小屋に応援である。
薬師沢への途中も雨が降ったりやんだりの相変わらずの天候だった。
ちょうど花のシーズンを迎えていたのだが、このあたりってこんなにコバイケイソウだらけだっけ?
雨の中のコバイケイソウ |
しかもでかい。
まるで高天原のオバケ水芭蕉のようである。
昔はこのあたりはニッコウキスゲが多かったように記憶しているのだが、この日はほとんど見かけなかった。植生が変化しているのか、単に時期の問題なのか。
薬師沢小屋に着いてからいろいろ聞いていたら、小屋開け以来、今までずっとせいぜい10人くらいの宿泊者しかいなかったのが、この日は予約だけで30人以上入っているらしい。
この「最初に30人越える日」というのが辛いんである。前の年の盆に修羅場を経験していても、シーズン最初の30人は辛い。
ちなみに最初に60人越える日も辛かったし100人越える日も地獄であった。私が働いていた時代は、7月中に100人越えまでは経験して8月に入ると中休みで60−80人ペースで進み、盆に最後にして最大の山場がやってきていた。一度100人越えを経験していると、その後の60人とか80人は楽勝だったのだが、盆はさすがにきつかった。昭和63年に経験した夕食数173人は未だに破られていないらしいが、途中から自分でも何やっていたか判っていなかったほどの修羅場も、7月の100人越えを経験していたからなんとかなったわけで、いきなり170人来られたら、たぶん全員討ち死にしている。
ま、そんなわけで毎年のこととはいえ、シーズンインの最初の山場に立ち会ったわけである。その山場をたった3人、しかも厨房は2人で迎えているわけだから、これはいきなり正念場である。
こういう忙しい日にふらりとやってくる居候は、私が働いている時も神様に見えたものだったが、今日は私が神様である。
そういうことなのでまあきっちり手伝わせていただいたのであった。
しかもこんな日に限って遭難騒ぎもあったりして小屋番の坂本氏が出動していたりしたので、さらに大変であった。
遭難騒ぎについては、まあ結果的に無事だったことだしこれ以上触れないが、要するにパーティー全員が地図とヘッドランプを持つこととパーティーを分断してはいけない、というのはやはり鉄則なのであった。
そんなこんなで仕事がようやく全て終わったのは、夜10時を回っていた。だいたい食事にありつけたのが9時過ぎだったし。
さて、薬師沢の小屋であるが、今年はトイレが新しくなった。バイオトイレである。
薬師沢小屋のトイレは従来、小屋のちょうど中央にあり老朽化が著しかったため、2階の客室に臭気が侵入して非常に不評だった。また単純な貯め込み式だったため環境にも良いわけはない。
数年前からバイオトイレ新設の計画はあったのだが、太郎小屋に続いてようやく実現した。
トイレ入り口 |
トイレ内部 |
小便器は2つ |
トイレ個室 |
ちなみに小便器は1つが先日の増水で流されてしまったため、とりあえず昔のトイレのものを1つ間に合わせで設置している。
臭いもなく、非常に快適になった。
薬師沢小屋 |
薬師沢小屋の外観もトイレの新設によってかなり変わった。トイレの上、2階にテラスもできて、ここからの見晴らしもなかなか良く、宴会にはもってこいである。
翌17日は手伝い続行の日なので昼間ぽくぽくと散歩に出かけた。
イワナの会の人達が入ってきていて、今日は下流方面に釣りに行くというので、まあ彼らをからかいがてらB沢あたりまで行ってこようかと。
薬師沢小屋の吊り橋から下流を望む |
なんだか薬師沢に来ればこの位置からこの写真を撮るのが恒例になってしまった。
まだ7月だし増水の後でもあるので、水量は多い。
今年は6月と7月に特大の増水があったらしい。黒部の大増水2003で紹介したのとは比べものにならないくらいの大増水だったそうだ。
そのせいで流れが大幅に変わっている。
写真の右端の部分にあった河原がほとんどなくなってしまった。単に水量が多いだけでなく、掘れてしまっているので8月になって水量が減ってもこの部分の河原は復活しそうにない。
吊り橋を降りて壁際を巻くところは、従来狭い河原だったのだが、ここも掘れて膝くらいの水深になってしまった。つまり雲の平へも高天原へも、靴を濡らさずに行くことができなくなってしまった。
現在、小屋従業員や登山者がせっせと石を埋めてなんとか足首くらいまでの水深で通れるようにはしている。また数日もすれば水量が減って靴を濡らさずに通れるようになるかもしれない。・・・が、この程度の石など、増水一発で流れて振り出しに戻るのは必至である。
まだ水量が多いことや流れの変化により、この日は「靴を濡らさずに大東新道を歩くのは難しい」状況だった。
ま、私が履いているのは沢靴なので、最初からむしろ水の中を好んで歩いていたのだが。
B沢あたりまで行く、と言うと小屋番の坂本氏にA沢〜B沢間の登山道の補修を頼まれてしまった。例によって流れが変わり、また少し難しくなっているそうである。
A沢出合いより下流を望む |
行ってみると確かに流れが変わっている。
壁沿いの水流が河床を掘ってしまい、流れが深くなっている。
去年の9月はこのルートの上半分は膝まで水に入って流れの中を通過してしまったのだが、その場所は既に2mほどの淵になってしまっていた。
そのせいで、下降点の位置が少しずれている。去年まで一番下流側のチェーン梯子で降りていたところは、着地点が淵になってしまったのでさらに下に移された。結局そこまでは面倒で今回は行かなかったのだが、完全にオーバーハングした壁をチェーン梯子で下るそうで、荷物が重かったり腕力が弱い人は振られてしまって面倒なんだそうだ。(大東新道A〜B沢間ルート詳細の写真5)
ちなみに同ページの写真2の下降点も移動した。やっぱり着地点が淵になってしまったためである。新しい下降点にはロープは設置されていないのでクライムダウンになる。
また写真4の取り付きも下流側に移動した。ここはけっこう激しい流れの水際をへつるところで、へつりに馴れていない人は少し緊張するかも。
どちらかというと、以前のように壁の上に登ってトラバース、ではなくなるべく水際をへつって壁の上を歩くのは最小限になるようにルートが変更されている。技術的には少し難度が上がったような気はする。
ルートはペンキで指示されているが、ロープ等の人工ホールドは今のところルート中、3カ所のみである。水際で岩は常に濡れているので、登山靴だと少し神経を使うかもしれない。
頼まれた登山道の補修とは、写真2の下降補助のトラナワの撤去だった。
下が淵になっていて下降できないにも拘わらず、ロープがあれば下ってしまう人がいる恐れがあることと、トラバース中にこのロープに頼ってしまうと振られて却って危険なための撤去である。
ま、剱岳ほどではないけれど、一般ルートとしてはだんだん非常識な部類になっていっているような気がする・・・
補修作業中に単独行の登山者が通過していったが、見ていてかなりハラハラした。
イワナ釣り |
イワナの会の人達もA沢出合いでしばらく集中的に釣っていたが、私が補修作業を終えて帰る頃には再び上流に向かって遡行し始めた。
とはいうものの、釣りをしながらなのでとてもつきあえるようなペースではない。
先行してさっさと登っていったのだが、やはり帰りもがんがん水に入りながらである。
うようよしているイワナどもに「釣り師が来るから気をつけろよ」と警告しながら帰ったのであった。
・・・あとで「おかげでさっぱり釣れなかった」と言われてしまった。対岸に渡った人は入れ食いだったそうだ。
それにしても7月の沢は綺麗である。水が真っ青なんだもの。8月も半ばになると水垢が付いてきてなんとなく茶色がかってくるのだが、今の季節はまだ透明なブルーで気持ちがいいなぁ。
山小屋仕事風景 |
まだ連休中だというのにお客さんはガタ減りである。おかげで写真を撮る余裕もできるというものである。
この写真は夕食を出す15分前、トンカツを揚げているところである。
この日はそれほどしゃかりきになって手伝わなくても十分余裕があったので、途中から2階のテラスで繰り広げられていたイワナの会の宴会に合流していたりしたのであった。
翌日、連休の最終日は朝から快晴だった。
カベッケヶ原からの黒部五郎岳 |
例によって朝の部屋掃除を手伝い、ティータイムまでこなしてから出発したので、快晴なのは良いのだが暑かった・・・
おまけに太郎小屋でまたうだうだしていたので、下りでまた雷に捕まりそうになった。薬師岳の方角でゴロゴロと音がして、去年の恐怖体験を思い出して「またかよ〜」とげんなりしたのだが、幸い雷雲はそれほど発達せず、行動停止を強いられることなく下山できたのであった。
(去年の教訓を生かすなら、さっさと早い時間帯に下山すればいいのだが)
ちなみに次週は再び薬師沢に入るのである。
それが薬師沢だけでなく・・・ちょっと大計画なのである。
なんなのかは山行後の更新に乞うご期待、である。