平成24年8月15〜19日 高天原

8/15
   9:30 折立 発
  10:15 あられちゃん 通過
  10:50 三角点 通過
  13:10-13:45 太郎平小屋
  14:35 第一徒渉点
  15:10-30 第三徒渉点ベンチ
  16:15 薬師沢小屋 着
   
8/16  
   9:20 薬師沢小屋 発
  10:30 B沢出合
  13:00 高天原峠
  13:50 高天原山荘 着
   
8/17 高天原停滞 (岩苔小谷&温泉沢)
   
8/18  
   8:20 高天原山荘 発
   9:15 高天原峠
  10:55 B沢出合
  12:20 薬師沢小屋 着
   
8/19  
   9:45 薬師沢小屋 発
  10:25 第三徒渉点
  10:45 第一徒渉点
  11:30-12:55 太郎平小屋
  14:05 三角点
  14:55 折立 着
   

 

 なんとなんと高天原に行くのは6年ぶりである。前回が06年に景子ちゃんと行ったときだからなぁ。
 しかもその時は風邪を引いていて、高天原に着くなり小屋で寝ていて風呂にも行ってないので、高天原の風呂に入ったのは実に7年も前のことになってしまう。
 で、今回は久しぶりに5日間の日程を確保して高天原を目指したわけである。

 なんだか年々仕事が忙しくなってきていて長期の休みを取ることが難しくなっているわけだが、とりわけ去年と一昨年はたまたまだが8/26に大きな仕事を控えていたため、2年続けて8月にまったく休みを取れなくなってしまっていた。
 もういい加減フラストレーションが溜まっていたのだが、今年はその大仕事が7/26になったおかげで8月に休みを取れる状況が復活したわけである。

 ちなみにその大仕事とは伝染病の防疫演習なのだが、今年なんて35℃を超える猛暑日に防護服&マスク&ゴーグル&二重ゴム手袋という完全装備で屋外作業という生命の危機すら感じる夏向きではない仕事なのよ。

 それはともかく。

 8月に山に行けることになって、山ちゃんと休みの日程も合わせて、さてどこに行こう、とか打ち合わせをしていたわけである。山ちゃんが岩苔小谷大滝の写真を撮りたいと言うので、じゃあ薬師沢→立石→岩苔小谷→高天原、と動く?と言ったら、いやいや薬師沢→高天原→立石→岩苔小谷大滝→立石→薬師沢、という動きでどうだろう、と言うので、なんでそんな複雑な動き方をするんだか、素直に小谷に入って大滝を越えればいいじゃん、と言った。
 そしたら、「危ないことはしたくないし」なんて言うので、小谷を下降するより大滝を高巻きする方が危なくないような気がするんだが、と思ったのだった。

 第一山ちゃん、7月に雨の赤木沢を遡行しようとして増水に行く手を阻まれ、赤木平までヤブ漕ぎして逃げたばかりである。増水した赤木沢F1の写真は大迫力だったけど、危ないことはしたくないなんていったいどの口がそんなこと言うのさ

 ま、細かい日程は薬師沢小屋で相談して決めようや、ということにしていたのだが(下山予定日が違うので現地集合の予定だったの)・・・

 なんと山ちゃん、前の週に熱を出してしまい、その熱が下がらなくて山に行けなくなってしまったのだった。ガッデム。

 というわけでいつもの単独行になってしまった。
 ん〜、単独で小谷に入るのはやめとくか、ということで、荷物から登攀具関係をごっそり落とした。一応ウエアは沢用のものを持って行くことにして、さらに靴は沢靴で全部通すことにしたので赤木沢程度なら行ける状態で、後は何も決めずに得意の行き当たりばったりである。とにかく薬師沢に入ってから考えようと。

 

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食パン4斤のパッキング ぐっじょぶかと思ったが・・・

 

 小屋への差し入れを何にしようか毎回悩むのだが、今回は食パンにした。安い割には大喜びされる土産だから。バイト時代も食パンの差し入れが一番嬉しかったし。
 で、今回は4斤も用意したのだ。この時点では高天に行くと決めていたわけではなかったのだが、一応薬師沢と高天に2斤ずつ、という設定で。高天に行かなかったら薬師沢に4斤とも落とせばいいや、って。行き当たりばったりだもん。
 他にはいつものように多すぎる行動食を持って行って適当に小屋で開放する、という手で。

 というわけで、上の写真のようなザックになったわけである。
 食パン4斤はトートバッグに入れて、それをザックの後ろに装着してみた。これはなかなかぐっじょぶ、と自分では思ったのだが・・・

 

 あまりぐっじょぶじゃなかった・・・
 担ぐとちょっと後ろに引かれる感じがしたのだが、まあこれくらいならいいや、って思ったのが甘かった。
 歩く度にくいっくいっと後ろに引かれるのが、時間が経つにつれて辛くなってくるのだ。パンが潰れるのが嫌なので、あまりギチギチに締めてなかったのが裏目に出て、トートバッグの中でパンが揺れるのが増幅されて肩に伝わる、という感じである。
 この後ろに引っ張られる感覚、水子に祟られるとこんな感じなのかなぁ・・・と思いながら歩く羽目に。

 タイムを見ると折立からあられちゃん(あられちゃんの看板が消失していたが)までは45分なので別にいつものタイムなのだが、その後いきなり失速している。あられちゃんから三角点まで35分もかかっていて既に失速の気配が見られるのだが、三角点から後でさらに失速し、結果として太郎まで3時間40分という、ちょっと自信をなくしてしまうほど時間がかかっている。太郎では既に水子2人くらいに肩を引っ張られているような感じだったもんな。

 太郎から先は雨が降ってきて傘を差していたこともあって、なおさらペースが落ちた。

 第三徒渉点の先に崩壊地があって、毎年整備に苦労している箇所がある。
 今年はついに1カ所が完全に崩落してしまって、下の写真のように橋が渡されていた。
 20年ほど前、数年間この崩壊地を丸ごと高巻きするように道が付けられていた時期があったのだが、もうじきその大高巻き道が復活してしまいそうな感じである。やだねぇ。

 というわけで、雨の中、ふらふらになってようやく薬師沢に着いたのだった。2時間半もかかってしまった・・・しかもヘロヘロになっての到着。

 

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第三徒渉点付近の崩壊地 だんだん崩壊が進んでいるなぁ

 

 薬師沢はこの数日雨が続いたこともあって、かなり水量が多かった。水も濁ってはいないが、ちょっと茶色が入ってて増水色。
 さて、予報はあまり良くないのだけど、明日からの行動はどうしようか・・・
 何よりこの食パンのパッキングで高天に行くことを考える元気はこのときの俺にはなかった・・・

 薬師沢小屋は、景子ちゃんが事情があって一時下山していたので、男5人というむさ苦しい小屋になっていた。
 みんな大柄なだけでなく仕事も恐ろしく手際が良いスタッフだったので、これは手伝おうと厨房に入っても却って邪魔しちゃうな、と昼寝を決め込む。そういやこ5人体制の小屋に居候で来るのって久しぶりの経験である。

 

さて翌16日。
 昨日の疲れは取れているが、さてどうするか。このまま薬師沢にステイして天気の良い日を狙って赤木沢に行く、という案もあるなぁ、とか考えながら朝飯を食って休憩時間を過ごし、部屋掃除をしていた。

 そういえば現役時代を含めてつい最近まで、朝食から部屋掃除まではシームレスに流れていたのが、今年は朝食が終わってから8時まで休憩し、それから部屋掃除、という段取りになっているんだね。居候が部屋掃除に参加しにくいシステムだな・・・部屋掃除までしていると出発時間がけっこう遅くなっちゃうからね。まあどんな段取りでも、現スタッフがそれでリズムを作っているならそれが良いんだけど、スタッフも遊びに行きにくいシステムだと思うぞ。

 それはともかく、意外に天気も良いのでやっぱり高天に行くか、と決めたのが部屋掃除も終わりかけの頃だった。
 それからバタバタとパッキングして出発したのが9時20分。

 

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吊り橋の上からお約束の写真

 

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イワナがいた

 

 食パンも2斤に減っているからずっとマシか、と思ったのだけど、やはり後ろに引かれる感覚はあまり変わらず、今日も水子を連れて行くのか、といささかげんなりしながらの行動である。

 

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A〜B沢間の難所

 

 それにしてもこのA沢〜B沢間は毎年崩れていく・・・
 いつまでここにルートを通せるだろう、と思うほど状態が悪くなっているのだが、今年は苦労してルートを通したようで、一時よりは格段と通過しやすくなっていた。
 A沢〜B沢間のルート詳細なんてページを昔作ったけど、これ、毎年やると面白いかも。

 

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無惨にひん曲がった鉄バシゴ

 

 B沢の手前では鉄ハシゴが数本、くにゃくにゃにひん曲がっていた。おおお。
 このハシゴ、俺が高校生の頃に初めてこの山に入った頃からあったんだよ。7年前に来たときもあったぞ。実に少なくとも20年以上の間、無数の登山者の通過を助けてきたハシゴが・・・
 このあたりの地形も変わってしまっているし、いったいどんな物凄い増水が来たんだろうね。
 それにしてもこのハシゴ、回収するのはなかなか大変そうだけど、何とかせめて薬師沢小屋まで回収できないだろうか。
 景観上の問題というより、なんか供養してやりたくって。

 

 B沢から先はしこしこ耐えて歩くだけである。
 昔はこの道、大っ嫌いだった。やたらアップダウンが多いしジメジメして陰気くさいし。
 なので昔は高天原に行くのに大東新道ではなく、奥の廊下〜立石経由で行くことが多かったなぁ。

 でも最近はなんだかこの道、好きになってきた。
 この歩きにくさもワイルドで面白い道と思えてきたし、アップダウンを繰り返しながらどんどん山奥に分け入っていく感覚が好きなんだな。

 しかしそれも・・・このアップダウンを余裕でこなす体力があってのこと。

 バテたという感覚があったわけではないのだが、気がつけば4時間半もかかってしまった。

 4時間半〜!?ちょっとあり得ない遅さだぞ。別にタイムアタックモードで歩いていたわけではないのだけど、感覚的には3時間半くらいで着くペースに感じていたのに、1時間も体感とズレている。いくら水子を連れているとはいえ、これはどういうこった。

 B〜C沢の激登りが遅かったわけではない。まああそこを飛ばすことができれば2時間ほどで高天に来れるのだが、ああいう激登りはゆっくり登っても3時間〜3時間半で余裕で来れるはずだし今まで来ていたのだが・・・
 多分、平坦なところや下りでペースを上げることができていないのである。
 これ、脚力の問題ではなく、心肺機能の問題だな。もっとはっきり言えば体重が増えたせいだよ!

 4時間半とは何事だよ・・・とちょっとがっくりしながら高天に到着。ふぅ。

 

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高天原山荘 おお!まっすぐになったよ〜!!

 

 もちろん高天の小屋が建て替えしてから来るのは初めてである。見事に直線になったもんだなぁ。30年若返ったよ。
 しかし、一度基礎まで出して建て替えた割には間取りがまったく変わっていないのが可笑しい。建ったまま、営業したままで建て替えるという凝ったことをしたおかげで、間取りの変更はできなかったのか。個人的にはこの小屋の間取りは好きなんだけど、変更できたら食堂はもう少し広くしたかったろうな。

 小屋に到着したら高橋さんが「へぇ〜、来たの?」なんて意外そうな顔をしてた。確かに6年ぶりだもんな〜。

 ま、とにかく風呂だ風呂だ。風呂は7年ぶりだもんな。
 高橋さんが、このサイトを読んで高天原に来たという人が風呂に行ってると言ってた。高橋さんはその人には「昨日薬師沢までは来てるみたいだけど、こっちには来ないんじゃないかな?」って言ってたそうな。まあ確かにそれがこの数年の俺の行動パターンといえばそのとおり。

 高天原の温泉は、右岸の台地上に小屋掛けの風呂とその上流側に露天風呂(からまつの湯)、そして左岸の河原にもう1つ露天風呂(野湯)がある。
 昔は右岸の小屋掛け風呂と左岸の露天風呂があるだけだったり、左岸の風呂が増水で流失して右岸にからまつの湯が新設されたり、その上に女性用の露天風呂が作られたが沢の流れが変わってアプローチが崖になってしまって廃止されたり、久しぶりに左岸に露天風呂が復活して「野湯」と名付けられたはいいが増水の度に流失するような代物だったり、そのうちかなりしっかりした風呂に増強されたり、となかなか変遷が激しいのだ。

 でもさ。入るなら野湯だよね。なんたって露天風呂としての開放感がまるきり違うもん。それに増水一発でいつなくなっちゃってもおかしくない風呂だから、あるうちに入っておかなくちゃ。

 で、野湯に直行したらそこに先客がいた。その先客が俺を見て普通に知人に会ったように会釈して・・・
 ま、その方が例の人だったというわけで。小松さんという。帰ってからさっそくfacebook友達にもなっちゃった。
 その小松さんと延々と1時間以上、風呂に出たり入ったりしながら話し込んでて、先に小松さんが小屋に引き上げてしばらく俺も風呂に入った後でさあ帰ろうかと思ったら・・・

 あれ、気持ちわりぃ。ふらふらする。湯あたりした。
 なんとか気分が悪いのも治まって、靴を履こうかな・・・あぁ、靴履くの嫌だ。いやだ。イヤだ。
 なんせ大東新道の河原をじゃぶじゃぶと徒渉しながら歩いてきたので、渓流シューズもネオプレンソックスも濡れ濡れなんである。うぇぇ、履きたくねぇ。

 まあいつまでも嫌がっていても仕方ないので思い切ってソックスと靴を履いたのだが、履いた瞬間にまた気持ち悪くなったわ。

 何とか小屋まで帰ってきたら、小松さんがテラスでまったりしていてお呼ばれしてしまった。せっかく湯あたりから回復してきたのに飲んじゃったらまた調子悪くなるかも?と思ったのだが誘われたら断らないのがモットー。ちびちび飲みながらまた話し込んでいたのだった。蚊の大群を追い払いながら。

 高天って昔からこんなに蚊が多かったっけ??高校生の頃に蚊で悩まされた記憶なんてないのだが。7年前に来たときは蚊にボコボコにされたな。

 実はこれを書いている今でも痒い。背中とか尻とかあまり露出した覚えがないところもガッツリやられている。まあ風呂かトイレか。
 小屋の唯一の女性スタッフが、「ここの蚊って、痒みがすぐ切れると思いません?」なんて言ってたのだけど、5日経ってもまだ痒いよ!!
 彼女と夜話していて、「なんだか血液が綺麗そうな人」って思ったけど、血液が汚いと痒みも長く持続するのか??

 そういや彼女、蒸し暑いのが好きという変わった人であった。「池上さんは蒸し暑いの嫌いなんですか?」って不思議そうな顔をされても不思議なのはこっちの方だよ。今蒸し暑い下界でこれを書いてるんだけど、代わってあげたいよ。

 

 ちなみにこの日と翌日は、昼間は一雨降ったりもしていたのだが夜は快晴だった。薬師沢と違って高天原は空が広いので星空も全開。天の川もばっちり。

 

 さて翌17日。朝から快晴。まあこの数日はずっと朝は快晴だったが。

 朝食後、小屋の横の湿原に出かけてみた。

 

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高天原湿原の朝

 

 この朝靄が日が当たった瞬間にしゅわ〜っと昇華していく光景が好きなんである。

 さて、今日はどうしようか。例によって行き当たりばったりである。
 薬師沢に帰って赤木沢あたりに行こうかとも思ったのだけど、せっかく6年ぶりに高天に来て1泊で帰るのももったいないな。
 じゃあ、前からちょっと気になっている岩苔小谷の上部ゴルジュでも覗きに行くか。せっかく沢ウエアも持ってきてることだし。

 近いので部屋掃除、朝のティータイムものんびり過ごして、行動開始は11時過ぎである。

 温泉沢を下って岩苔小谷の出合に着くと、そのすぐ上が問題のゴルジュ。
 ここのゴルジュは8年前にも来ている。これがその写真

 

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岩苔小谷 上部ゴルジュF1

 

 おお、右壁に立ってる倒木って8年前からあるんだ。へえ。
 ちなみにこの沢のルート図も昔描いている
 この岩苔小谷のルート図で温泉沢を分けた直後、上の*印のすぐ上にある"狭いゴルジュ"がこれである。

 さて、今日は突破できるかどうか行ってみるか。

 

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ゴルジュの奥に入ってみた

 

 ゴルジュの奥には右岸左岸どちらからでもへつって行ける。真ん中は深いが壁際は股くらいの水深。
 で、上の写真から奥へは深くなっていてそのままでは行けない、と。

 

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右壁から突破できそうな・・・

 

 左壁(右岸)の壁はツルツルでちょっと手が出そうにないのだけど、右壁の壁は弱点がありそうな感じ。ちょっと試登してみるか。
 というわけでゴルジュ入り口まで戻ってザックを置き、空身で右壁に取り付いてみた。壁は結構脆くてホールドがボロボロ取れたりもするのだが、けっこう欲しいところにホールドがあったりするので、なんか行けそうだぞ。

 ・・・とやっていたら、つい上がっちまった。ん〜、ちょっとこれはクライムダウンで戻るのは辛い。水流に飛び込めば戻れるけどけっこう激しい流れなのでできれば避けたい。
 う〜、抜けてしまうしかないのか。空身で。
 バンド状のへつりで滝上にへつっていったのだが、ちょっとしょっぱい箇所もあり。全体としてIV+くらい?

 というわけで空身で抜けてしまった。そのまま戻るのは無理っぽいので仕方なく高巻きして戻る。戻る前に本格的なゴルジュが始まるF2を見に行くが、もちろんカメラはザックの中なので写真も撮れず。ちっ。
 高巻き自体はたいしたことなくコンパクトに巻けるので、それほど苦労せずにゴルジュ入り口まで戻ってきた。
 せっかくだからもう1回高巻きしてF2を撮りに行こうかとも思ったが、面倒くさいのでやめた。

 戻って温泉に入ろっと。

 温泉沢を登り返している時、イワナが走るのを見たので水中写真に挑戦。
 温泉沢はほとんどの人はイワナがいるわきゃないと認識しているのだろうけど、実はたくさんいるのだ。
 元々は岩苔小谷もその支流の温泉沢もイワナはいなかったのだが(すぐ下流に60mの大滝があるからなぁ)、イワナの会が小谷に本流のイワナを移植放流した結果、小谷にも温泉沢にもイワナが定着した。

 温泉の橋の下や野湯のすぐ横の流れの中にもちゃんといるんだけどね。釣らないでくださいね。

 今回のイワナ水中写真のベストショット2連発。

 

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イワナの水中写真2連発

 

 上の写真なんて2匹ともカメラを見てるのがなんともラブリー

 下りは20分ほどしかかからなかった温泉沢を、登りは1時間半もかけて水中写真を撮りまくりながら登り返してきた。

 で、再び温泉。ついでにゴルジュ遊びで濡れたウエアも乾かす。

 

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ただ風呂だけ写しても寂しいので足を入れてみた

 

 今回も1時間以上風呂に入っていたのだが、多少学習しているので湯あたりはせずに済んだ。

 この晩は小屋のスタッフと午前様まで飲み会。午前様は久しぶりだな。
 みんなで自分の屈折自慢などをしつつ(いや、実際重い話もあるんだけどさ)夜は更けていったのであった・・・
 他にはどんな話をしたっけ。キノコの話とか・・・

 あ、「高天原の秘境ポイント(登山道から外れたところにある名所)をいくつ知っているか?」という話もしてたか。
 俺は高校時代に大山さんにほとんどの場所に連れて行ってもらったので、高天原のほぼ全域を知ってる。
 ただねぇ、大山さんて「幻の池」なんてベタな名前を付けたり、発見したときに池塘にオタマジャクシが溢れんばかりにいたから「オタマジャクシが原」という名前を付けたりとか、何というかネーミングセンスが残念な人だったんだな。(オタマジャクシが原は一緒に発見したので、何とか阻止しようとしたのだが・・・)

 で、自分もオリジナルの秘境を発見して名前を付けてみたくて、散歩の時にあちこち探検していた。
 ある時、水苔が分厚くびっしり生えた素敵な湿原を見つけた。喜び勇んで小屋に帰ってきて大山さんに場所を告げると、「なんや、ぬかるみが原に行ったんか」って・・・
 なんですか?ぬかるみが原ですか???かくして「自分が発見した場所に素敵な名前を付ける」という俺の野望は身も蓋もないネーミングセンスに木っ端みじんに打ち砕かれたのだった・・・

 という話をゲラゲラ笑いながらしていたような。深夜なので必死に声を殺して。

 あ、この夜も抜群の星空だったが、酔ってフラフラでしかも寒くて、長くは見れず。

 何日も山に入っていると曜日の感覚とかが失われていくのだが、今日はもう18日の土曜日らしい。19日には下山しないと20日から仕事だし、どうやら帰らねばならない日のようである。とりあえず薬師沢までね。薬師沢には景子ちゃんも18日に戻るらしいし、今日は薬師沢で宴会か。

 出発前にスタッフ一同と記念写真。

 

高天原山荘のスタッフと

高天原山荘のスタッフと記念撮影っと

 

 さてさて、今日は何時間かかる?
 荷物はようやく水子を振り切ったのでずいぶん軽くバランス良くなったはずなのだが、替わりにお客さんの忘れ物と小屋の日報を太郎小屋まで持って行くことを頼まれてしまった。カッパにダウンジャケットにヘッドランプに・・・けっこう嵩も重量もあるじゃないか。
 行動食も大量に開放したのに、なんだかちっとも荷物が軽くならん。それでもバランスは良くなったけどさ。

 

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今朝も快晴の高天原

 

 快晴なので雲の平まわりで薬師沢に行くことも考えたのだが、昨夜飲みながらキノコの話をしていたので、頭の中はツガタケで一杯なのである。
 ツガタケとはコメツガの木の下に生えるキノコで、要するに松茸のコメツガバージョンである。ただし香りはあり得ないくらいに強い。
 なんせ何回かお客さんが登山道横に生えているのを持ってきて、1階の帳場で「こんなの拾ったんですけど、これ食べられるんですか?」とザックから出したとたん、2階で昼寝していても臭いで気づく、というほどである。
 ツガタケを1本でも見つければ、今夜俺は薬師沢小屋でヒーローになれる

 ツガタケは少なくとも雲の平にはない。何カ所かポイントを知っているのだが、そのうちの1つが大東新道から少し外れたところにある。
 なので今回は大東新道を選択、である。迷わず。

 

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高天原峠付近から高天原(小屋も見えるよ)

 

 毎回この写真撮ってる気がするが、個人的にこの写真が好きなんである。でっか〜い山の隅っこに可愛い小屋がぽつんと建ってる、って感じが良くない?ゴミを燃やしているため、今回は煙も出ていてなおよし。

 さて、ツガタケ探しであるが、ここで大失敗というか大誤算が。
 ツガタケは匂いが強いのでポイントではひたすら匂いを探って探したいのだが、首にかけたタオルから漂う硫黄の臭気がそれをとことん邪魔するのだ〜。
 硫黄の臭気はそれ単独だととことん幸せなんだけど、ツガタケ探しの時は邪魔じゃ〜。

 というわけで薬師沢小屋のヒーローにはなれず。ま、そんなに簡単に見つかるもんじゃないんだけどさ。

 B沢出合からは目標をイワナ水中写真に切り替えてさあこれから、という時になって上空にたれ込める黒い雲。そして雷鳴。
 それでも粘ってカメラを水中に突っ込んでいたのだが、雨がだんだん強くなってくる気配なので仕方なく薬師沢小屋まで飛ばして歩く。

 小屋に着いた直後に激しく降り出した。ぎりセーフ。

 

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薬師沢小屋

 

 今夜は景子ちゃんも再入山してきたし、もちろん宴会である。

 

薬師沢小屋のスタッフと

薬師沢小屋のスタッフと記念撮影

 

 いよいよ下山する19日である。暑い下界に戻らねばならん。

 ところが小屋に不穏な動きが。

 まず小屋番がメールチェックのために太郎に行くという。薬師沢はもちろん問答無用の圏外なので、太郎に行かなければメールも見れないのだ。まあ薬師沢はまだマシで、高天に行ったらまったくの音信不通だからな。
 ともあれ、小屋番は薬師沢を遡行しながら太郎に向かうと。
 もう1人のバイトもメールチェックのため、登山道から太郎に行くと。

 なんだなんだ、2人も太郎に行くの?
 それは俺にタイムアタックをせよ、ということか???いや、彼らに勝てるわけはないのだが、ぶっちぎられるわけにはいかんだろうが。

 ん〜、覚悟を決めてやるか、タイムアタック。

 まずは彼らが準備している間に出発じゃ。先行逃げ切り、できればいいな。フライングとも言うが。

 ちなみに高天から太郎に運搬する荷物に薬師沢の日報とお客さんの忘れ物も加わった。俺にハンデ付けてどうすんのさ。逆でしょ逆。

 とにかく先行(フライング)出発。

 

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笑顔で俺にプレッシャーを与え続ける景子ちゃん

 

 出発すると景子ちゃんがず〜っと笑顔で手を振っている・・・
 いや、そこで手を振られるとさ、どうしてもペース上げてサクサクと登ろうとしてしまうじゃないか。ここはできるだけ抑えて登らないと全体のペースが・・・
 まだ手を振ってるよ、こんなペースで登ると息が上がるってのに。

・・・そこで俺にプレッシャーをかけるな〜!

 ・・・カベッケに上がった時点で既に息ぜぃぜぃである。飛ばしすぎだっての。

 でも足を止めるわけにはいかん。息を整える努力をしながらなんとか歩いていると、後ろからバイト君がさくっと追い抜いていった。

 「ゆっくり歩こうよ〜」と牽制したのだが、「いや〜、どうせ登りで追いつかれますよ」って嘘つけ

 ところがである。第一徒渉点から太郎への登りの途中で彼に追いついちゃった。
 「はぁ?そんなところで何してんの」って思わず叫んでしまった。まさか本当に追いつくとは。

 ええぃ、小屋の従業員は薬師沢〜太郎程度の区間で休憩なんてしてはならんのじゃ。そんなことでボッカの時はどうすんだ、と言ったらボッカなんてしたことないんだって。

 なんだって?
 薬師沢の小屋で野菜が不足して「キャベツを5玉、太郎から奪ってこい」と小屋番に厳命されて太郎まで駆け上がり、太郎の厨房でキャベツをもらおうにも「太郎も足りないからダメ〜」と断られてこのままじゃ薬師沢に帰れない・・・と途方に暮れていたら厨房主任のお姉さんが俺をそっと厨房裏の暗がりに呼んで、俺に半分傷んだキャベツを「これ、持ってっていいよ」って色っぽく微笑んで持たせてくれる、なんてことは今はもうないのか??(ちょっと脚色してます)

 ま、いいや。さっさと行きなよ。バイト君はまたスタスタと俺をぶっちぎっていった。でもここからだったらせいぜい10分くらいしかタイム差は付かないもんね。

 いいんだ、最初から勝てるなんて思ってないんだから、俺は自分で納得できるタイムを出すだけさ、と今年のオリンピックでの北島康介の気持ちが少し判った。

 で、太郎小屋に到着。タイムは1時間40分ジャスト。
 おお〜、やればできるじゃん〜、俺。まあ1時間半が目標だったけど、これだけのタイムなら褒めてもらっても良いでしょ、この歳で、この荷物で、この腹でこのタイムなら。

 太郎〜折立の下りもジャスト2時間。まあまあか。

 最後にはまともなペースで歩けたが、今回はちょっと焦った。あまりに遅いので。
 ちょっとまともにトレーニングするか、とチャリ通勤復活&毎日10km以上寄り道して帰っていたりする。もうちょっとサクサク歩けないと自由に山を楽しめないもんな。

 

 

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