モンベル
ダイナアクションパーカ(旧)
ジェットストリームジャケットのページで、この旧型ダイナアクションパーカと比較したのだが、こちらの方をきちんと書いていなかったことに気づいた。
実はレインウエアのページで書いているのだが、それほど詳しく書いていたわけではなく、使用感などのインプレッションも書いていなかったので、ここで改めて書くことにする。
旧ダイナアクションパーカ(モンベル) |
右の写真が私が持っているダイナアクションパーカである。
ちなみにこの型は、2001年の秋に新型として登場した初期型で、2003年の秋に現行の2代目にモデルチェンジしている。
ツートンカラーになっているが、この色が違う腕周りがストレッチャブルゴアテックスを使用している部分である。
ちなみにこの型は表記上はXCRではなく、単なるゴアテックスということになっていたのだが、同時発売されたダイナアクションパンツの方が未だにモデルチェンジされずに継続販売されているのだが、表記は「ストレッチャブルゴアテックス」のままにも拘わらずタグはXCRタグに変わっている。
なのでこのモデルも表記するかしないかだけの問題で、実際はXCRと同じゴアテックスを使用しているのだろう。
ちなみに前立てのファスナーが緩くカーブしているように見えるのは、単なる写りの問題である。ファスナーはあくまでストレートである。
さて、このストレッチャブルゴアテックスであるが、今でこそゴアのアウターといえども伸びるのが当たり前となってはいるが、当時としては画期的だった。
で、実際よく伸びる。最近は、こういう「腕全体」にストレッチャブル、という使い方はせず、肩と肘周りなど、本当に伸縮性が必要な必要最小限な部位だけにストレッチャブルな生地を使うのが主流になっている。
しかし生地の伸縮性というのは伸び率は同じでも、その伸縮性生地の面積が大きければ必然的に伸び幅が大きくなるので、このウエアの印象としては「むちゃくちゃ伸びる」ということになる。
この腕全体に伸縮性生地、というおおらかな造り方のもうひとつの利点は、縫い目が少なくなる、ということだ。
この腕はさすがに丸編みではないので(ナイロン生地の丸編みなんてできたら凄いだろうけど)、腕の下に縫い目が1本走っているのだが、それ以外に縫い目はない。伸縮性生地のおかげで立体裁断をしなくて済むので、とにかく腕はほとんど1本の単なる筒である。
私はこれが好きなんである。
昔のウエアでとにかく縫い目からの浸水には悩まされたし痛い目にも遭っているので、縫い目ヲタクと自分でも思うほど縫い目の多少には拘る。パタゴニアのCSSにクラッときたのも、やはり理由はそれである。
ともかく、伸縮性生地を使うことによって立体裁断をやめることができれば、防水上も有利だし軽量化にもなるし、良いことづくめではないか。
ポケットの仕様 この写真はポケットを閉めた状態で、左が「上」になる。 止水ジッパー上端には雨が侵入しないための「カバー」が装着されている。 またジッパー下端には、ジッパーの内側を伝って侵入した水を外に抜くための「ドレンホール」が装着されている。 |
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フードの口元部分 フードの顔周りを調整するドローコードの取り回しが凝っている。 また、このカバーは呼気を排出するメッシュのカバーも兼ねている。 |
全体の造りは非常にシンプルに見えるこのウエアだが、よく見ると細かいところでむちゃくちゃ凝っている。
下写真の呼気排出のためのベンチレーションは、今はそれほど珍しい装備ではないが(これでもサングラスは曇るが・・・)、顔周りの調整のためのドローコードの取り回しがやたら凝っている。
1.ドローコードが風で煽られないよう、終端をフリーにしない
2.ドローコードロックの凍結を防止するため、コードロックは内側に設置
3.操作性を考慮して、ウエア外側のコードを引いて操作できるように
という条件を考慮してこのような形になったのだろう。
この部分は、現行モデルでは素直に外側にコードロックが付き、終端をフリーにする仕様になってしまった。確かに操作性はこの方が良いのだが。
ポケットの仕様はまさに凝りまくりである。
止水ジッパーといえども、完全に閉めることは物理的に難しく、ジッパー上端からの浸水を防止するためにはこのようにカバーを付けるしかないのである。
この上端カバーは単に装着されているだけなのだが、下端のドレンホールはさらに凝った構造である。
雨の中を行動していると、このジッパー表面は常に水に晒されているわけで、開閉の時にその水はジッパーの内側に回り込む。
その水はジッパー内側を伝って下りてゆき、下端に達するとそのままポケット内に流れ込むわけで、長時間雨の中を行動するとポケット内が水浸しになってしまう。
それを防止するため、ジッパー内側を伝って下りてきた水が、下端からそのままウエア外に流れ出すようにドレンホールを付けているのである。
このドレンホール、ちょっと見ただけではどうなっているのか判らないほど、構造が凝っている。
このあたりの凝り具合はモンベルの面目躍如といったところである。他メーカーの止水ジッパーのポケットで、こんな凝った構造のものはひとつもない。
このダイナアクションパーカはレインウエアではなく冬山用のアウターというモデルなので、ポケットはメッシュではなくゴアテックス生地である。またピットジッパーもないシンプルな造りである。
このウエア、どこぞのメーカーが「冬山用アウターをレインウエアとして携行することを提案」する数年前から、そういう意図でレインウエアとして使っているのだが、まともな仕様のアウターとしては非常に軽く、500gを切っている。レインウエアならその気になれば200gを切るものすらあるのだが、生地を極端に薄くしたり2.5レイヤーにすると、耐摩耗性能などに不安が出てくるので、フル仕様の冬山用アウターとしてはこのあたりが限界だろう。
そんなわけで非常に気に入って使っている。レインウエアとして使っているが、元々冬山用アウターなので、もしそういう機会があっても使えるし。オールラウンドといえばこれほどツボにはまったモデルも少なく、ほとんど唯一無二の存在である。
ただ、このモデルはもう造ってないんだよな。
現行のダイナアクションパーカは、似て非なるウエアである。
まず、伸縮性生地の仕様が肩や肘周りに限定されたので、裁断が複雑になった。立体裁断ももちろん施されている。なので私の好きな「腕周りすっきり」ではなくなってしまった。裁断が複雑だと着心地もごわごわしてちょっと好きでないのである。
それとピットジッパーが装備され、胸ポケットも2カ所付いた。
なのでそもそもまた縫い目が増えたということも嫌なのだが、重くなってしまった。しかも旧型の30デニールに対し、15デニールという極薄生地を使っているのにも拘わらず、である。
で、軽量化対策として腰ポケットはピットジッパーの中に併設という形になっている。これは現行のモンベルの多くのモデルがそうである。やはりあまり使いやすいとは言えないので、早くやめて欲しい。
このモデル、出た当時の価格が27,000円ほどと、この内容にしては破格といえる値段だった。
翌年に出たノースフェイスのウインターダンスジャケットがだいたい同じような仕様でありながら58,000円と倍以上していたのである。
モデルチェンジした新ダイナアクションは、元々冬山用アウターとしては素っ気ないほどシンプルな造りが特徴だった旧型と比較すると、やたらごちゃごちゃといろいろなものが付いたおかげか、約36,000円と大幅に価格が上がっている。
そういうこともあって現行ダイナアクションはまったく好みではない。
この旧ダイナアクションはアウトレットでまだ売られているが、サイズは探さないと揃っていない。ただ見つけることができれば2万円を切っているので非常にお買い得だと思う。
このモデル、シンプルな造りの割に、ウエストと裾の両方を絞れるようになっているのだが、ウエストのドローコードは要らない。
これを廃止すればさらに数十グラムの軽量化が可能だろうし、そうすればポケットをもっと大きくしても同重量で収まるだろう。このウエア、ポケットが小さく収容能力に乏しいのが数少ない欠点である。胸ポケットは要らないので、この腰ポケットを大型化してくれれば・・・
そんなモデル、造ってくれないかなぁ?